初級翻訳・ぶくぶく長々火の目小僧 第3話

ぶくぶく長々火の目小僧

長々とぶくぶくと火の目小僧の三人も、やっぱり昨夜と同じように居眠りをはじめました。
王女さまはそれを見すまして、今夜もまたハトに変身して、お部屋からぴょんと飛び出しました。
するとやはり同じように、長々の頭にぶつかり、火の目小僧に羽根を焼かれて、またしても長々につかまってしまいました。
王さまはあくる朝になると、またしてもたまげてびっくりなさました。
そんなわけで、三日目の今夜、また王女さまがしくじったりしたら、たった一人のたいせつな王女さまを、どこのだれともわからないあの若者に奪われてしまうのですから、王さまも、今度こそ絶対に油断してはならないとお思いになりました。
そこで王女さまをこっそりとお部屋におよびになって、
「今夜は、お前のもつ魔法のとっておきの手をすっかり出しつくして、必ずかならず逃げ出しておくれ。
もしこれでもしくじったら、お前のこともただではすまさないぞからな!」
と、きびしくお言いつけになりました。
王女さまは、
「かしこまりました。
今晩こそは、きっとあの男たちをギャフンと言わせてやりますわ。
」と答えました。
そのあいだに、王子さまはまた、ぶくぶくと長々と火の目小僧の三人をあつめて、今夜の役割分担をきめました。
「では今夜もしっかり頼むよ。
下手をすると、ぼくばかりではなく、お前たち三人の首も飛ぶことになるんだからね」
と、王子さまは冗談まじりに笑いながらこう言いました。
長々たちの三人は、
「なに、大丈夫でございますよ」
と、すました顔で言っていました。
そうしているうちに、あたりはすっかり日が暮れました。王子はそれといっしょに、王女さまのお部屋へ行って、昨夜と同じように、王女さまと向かい合ってイスに腰掛けました。
王子はもう今晩こそは、どんなことがあっても絶対に眠らないぞと心に決め、息をのんで番をしていました。
すると王女さまは、しばらく時間がたつと、またいつものように、
「ああ、なんだかとても眠たいです。
まあ、どうしてこんなに眠くなるのでしょう。
なんだか、まっ赤なものが、もうっと両方の目の上にかぶさるような気がします。
ちょっと休みますからごめんくださいませ。
」と言いながら、ふらふらと立ち上がって、長イスの上に横になるなり、もうすうすうと気持ちよさように寝入ってしまいました。
王子は、今晩はその手にのるものかと思いながら、テーブルに両ひじをついて、タカのように目を光らせ、一生けんめいに王女さまの顔を見つめていました。
するとそのうちに、王子はまたひとりでにまぶたが重くなってきて、とうとう今晩もまた眠りこんでしまいました。
すると、ちょうどおなじときに、あんなにいばっていた長々と、ぶくぶくと、火の目小僧の三人も、みんな一斉にこくりこくりと居眠りをはじめました。
王女さまはさっきから、上手に寝たふりをして、王子たちが寝入るのを待っていたのでした。
王子はぐうぐうといびきをかいて、まるで石のようにぐっすりと眠りこんでいます。
王女さまはそれを見ると、にこにこ笑いながら、そっと起き上がりました。
そしてこんどこそは、だれにも気づかれないように、ひょいと小さなハエにばけて、すうっと窓から飛び出しました。
ところが、運悪く、今晩もそのはずみに、ひょいと火の目小僧の鼻の先にぶつかってしまいました。
火の目小僧はびっくりして、
「しまった! 逃げたぞ!」
と言いながら、いきなりしゅうしゅうと両方の目から炎をふき出しました。
するとハエはたちまち小さな魚にばけて、向こうの泉の中へとびこみました。
火の目小僧はそれを見届けると、長々とぶくぶくと王子を起こしました。
みんなはびっくりして飛び起き、火の目小僧といっしょに、その泉のそばへかけつけました。

六

 いって見ると、その泉というのは、底さえ見えないほどの深い深い泉でした。
ところが長々は、
「なあに、おれがつかまえてみせるさ」
と言いながら、水の中へ頭をつっこんで、するすると体を底のほうまでのばしました。
そして両手でもって、水の底をすみからすみまで残らずかきさがしました。
しかし魚はどこへかくれているのか、いくらかきまわしても、さっぱり見つかりません。
ぶくぶくはそれを見て、
「おい、そこをどきな。いいものを見せてやるよ」
と言いながら、長々をもとの大きさにちぢめさせて、どぶんと言って泉の中へ入りました。
そして、いきなりぷうぷうと体をふくらませて、とうとう泉いっぱいになるまでふくらんでしまいました。
そのため、水はどんどんあふれ出して、まるで大水のようにあたり一面に広がりました。
王子とほかの二人は、その水の中をさがしまわりました。
しかし魚はどこへ行ったのか、いくらさがしても姿かたちは見えません。
火の目小僧はじれったくなって、
「おいおい、だめじゃないか、ぶくぶく。こんどはおれの番だ!」
と言いました。
ぶくぶくはしかたなしにいそいで体を縮めました。
それといっしょに、水は一気にきれいにもとの泉へと戻りました。
火の目小僧は、水がすっかりもとの場所におさまると、
「よし、来たぞ!」
と言いながら、大きく目をむいて、じいっと水の上をにらみつけました。
すると二つの目からは、いつものように長い炎がしゅうしゅうと飛び出しました。
火の目小僧は、息をつく暇もないほどいつまでもじいっと、にらみつづけににらみつづけました。
そのためついには、泉いっぱいの水がその炎でぐらぐらと沸騰して、まるで大きなお釜のお湯がふきこぼれるように、土の上へとふき上がってきたのです。
そのうちに、小さな一匹の魚が、半煮えになって、ひょこりと地面へはね上がりました。
魚はもう熱くて熱くてたまらないので、土にふれると、すぐにもとの王女さまの姿にもどりました。
王子は大よろこびでそばへかけつけ、
「どうです、とうとう三晩ともちゃんとつかまえましたでしょう! ではお約束のとおり、あなたは私のものですよ」
と言いました。
王女さまはまっ赤な顔をして、
「どうぞお連れになってくださいませ。お父さまもあきらめて、あなたの言い分どおりになさるでしょう」
と言いました。
王子はそのときはじめて、
「じつは私は、これこれこういう王子なのです」
と言って自分の正体を話しました。
王女さまはそれを聞く前から、だれともわからないその王子の立派な人柄に、心の中で感心していました。
それが立派な王子さまと分かったので、むこさんとして何一つ文句のつけようがありません。
王女さまは大よろこびで、夜が明けるとすぐに王さまのところへ行って、昨夜からのことを残らずお話ししました。すると王さまは、たった一人の大切な王女さまを知らない人になんてあげたくなくて、しかたがありませんでした。だから王子に会うと、王さまらしくもない嘘をついて、
「あの娘はだれにもやることはできない!」
と、ものすごく怒っておっしゃいました。
しかし王子は、そんな嘘つきの王さまの相手をしている暇はないので、三人の家来にうまく言いふくめさせ、王さまのすきをねらって王女さまをひっかかえさせると、大急ぎで御殿(ごてん)を飛び出してしまいました。

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