「そのタマネギをどうするんだい? それに、いつも昼過ぎになると一人でどこへ出かけているんだい、みずかきジェマイマ?」
ジェマイマは、どちらかといえばそのコリー犬が苦手だったので、緊張のあまり、これまでの出来事をすべて話してしまいました。
コリー犬は、賢い頭をかしげながら、ジェマイマの話をじっと聞いていました。
この犬がニヤリと不敵な笑みを浮かべたのは、お行儀の良い「砂色のおひげの紳士」の話が出てきたときでした。
ケップは、森のことや、その小屋とあばら家が一体どこにあるのかなど、いくつか質問を重ねました。
そのあと、コリー犬は外へ飛び出していきました。
村を駆け足で回って、2匹のきつね狩りの子犬(猟犬)を探し出すと、ちょうどお肉屋さんの入り口の前で見つかりました。
一方、みずかきジェマイマは、お日様の光がさんさんと降り注ぐ昼下がり、最後の田舎道を進んでいきました。
ハーブの束とタマネギが2つ入った袋は、ジェマイマにとってちょっとした大荷物でした。
紳士は丸太に腰をかけ、鼻をくんくんさせながら、うわの空で森の周りを眺めていました。
ジェマイマが地面に降り立つと、紳士はさっと立ち上がりました。
「卵が無事か確かめたら、すぐに小屋の中に入りなさい。オムレツに使うハーブは、こちらへ渡すんだ。ほら、早く早く!」
紳士の態度は、どういうわけかとてもぶっきらぼうでした。
みずかきジェマイマにとって、こんなにトゲのある冷たい話し方をされたのは、いつもと違って初めてのことでした。
ジェマイマはびっくりすると同時に、なんだか胸がざわざわと騒ぎ始めました。
ジェマイマが小屋の中にいると、あばら家の裏の方から、突然ドタバタと激しい足音が聞こえてきました。黒いお鼻の誰かが、ドアの下からくんくんとにおいを嗅いでいました。そうしているうちに、ドアにカチャリと鍵がかけられてしまいました。
これには、さすがのジェマイマも大慌て。
それからまもなく、外からものすごい物音が聞こえてきました。――「ワンワン!」「ワオーン!」「ガルルルル!」「オオーン!」「キーッ!」「ウギャッ!」
この日を境に、あのおひげを生やしたキツネの紳士は、すっかり姿を見せなくなりました。
急いでケップが小屋のドアを開けて、みずかきジェマイマを外へ出してあげました。
ところが、なんとも運の悪いことに、子犬たちが止めるのも聞かずに小屋へ飛び込んでしまい、ジェマイマの大事な卵を全部きれいに食べつくしてしまったのです。
コリー犬のケップは耳を噛まれてケガをしていましたし、2匹の子犬たちもどちらもヘトヘトでへろへろになっていました。
みずかきジェマイマは、失ってしまった卵たちのために涙をぽろぽろと流しながら、お家へと連れ帰られたのでした。
そのあと、6月になるとジェマイマはまた新しく卵をいくつか産みました。今度は自分の手元に置いて温めてもいいことになったのですが、そのうち無事にかえったのは、たったの4つだけでした。
みずかきジェマイマが言うには「あのときは気が張っていたせいだわ」ということですが、実はそもそも、このジェマイマさんは卵を温めるのがあんまり上手ではないのでした。
(おしまい)
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