そして、
「お姫さまと御殿をすぐにとり戻してくれ、それから私の命を助けてくれ」
と、お願いしました。
ところが、指輪の家来は、
「それはあいにく、私にはできないことでございます。ランプの家来だけが、御殿をとり戻す力を持っているのです」
と、答えたのでした。
「それでは、御殿があるところまで私を連れて行ってくれ。そして、お姫さまの部屋の窓の下へ立たせてくれ」
アラジンは他にどうしようもなかったので、こう頼みました。
この言葉を言い終わるか終わらないかのうちに、アラジンはもうアフリカに到着していて、御殿の窓の下に立っていました。
アラジンは大変くたびれていたものですから、そこでぐっすり眠り込んでしまいました。
しかし、ほどなくして夜が明け、小鳥の鳴き声で目を覚ましたのでした。
その時にはもうすっかり、もとのような元気になっていました。
そして、こんな悲しい目にあうのは、きっと魔法のランプがなくなったせいにちがいない、いったい誰が盗んだのかを突き止めなければならないと、固く決心したのです。
さて、お姫さまはこの朝、アフリカへ連れて来られてからはじめて、晴れやかな機嫌でお目覚めになりました。
太陽はうららかに輝き、小鳥たちは楽しそうにさえずっていました。
お姫さまは外の景色でも眺めようと思って、窓の方へ歩いておいでになりました。
そして、窓の下に誰か立っている人物がいるのにお気づきになったのです。
よくよく見ると、それはなんとアラジンでありました。
お姫さまは声を立てて大そうお喜びになり、いそいで窓をお開きになりました。
この音を聞いてアラジンは、ふっと上を見上げたのであります。
それからアラジンは、いくつもの戸を上手にすり抜けて、お姫さまの部屋へと入って行きました。
そしてうれしさのあまり、しばらくお姫さまをしっかりと抱きしめていましたが、やがて顔を上げて、
「お姫さま、あの大広間の隅の壁にかけてあった古いランプがどうなったか、ご存じではございませんか?」
と、尋ねました。
するとお姫さまは、
「ああ、あなたさま、私どうしましょう。私がうっかりしていたばかりに、こんな悲しいことになってしまったんです」
と言って、あのおじいさんの魔法使いが商人の格好をしてやって来て、新しいランプと古いランプを取り替えてあげると言ったことから、こんな事態を招いてしまったいきさつをお話しになりました。
そして、
「あのランプなら、今も持っていますよ。いつでも上着の中に隠して持ち歩いているんです」
と、おっしゃいました。
「お姫さま、私はそのランプを取り返さなくてはなりません。ですから、あなたもどうか私に力を貸してください。今晩、魔法使いがあなたと一緒に食事をする時、あなたは一番いいお召し物を着て、いかにも親しげな様子でおだててやってください。それから、アフリカのお酒が少し飲みたいとおっしゃるのです。そうすればあの男がそれを取りに行きますからね。その時が来たら、私がまたあなたのおそばへ行って、こうこうするようにと申し上げますから」
と、アラジンは言いました。
さてその晩、お姫さまは一番いい着物にお召し替えになりました。
そして、魔法使いが入って来た時、にこにこと微笑み、いかにも親しげな態度をとられたのです。
魔法使いは、これが夢ではないかと思ったほどでした。
なぜならお姫さまは、ここに連れて来られてからというものは、いつも悲しそうな顔をしているか、そうでなければ怒ったような顔をなさっていたからです。
「私、おそらくアラジンは死んでしまったのだと思いますの。だから、私あなたのお嫁さんになりたいと思っていますわ。まあ、それはともかく、さあご飯にしましょう。おや、今日もやっぱりシナのお酒なのですね。私、シナのお酒にはもう飽きてしまいましたから、代わりにアフリカのお酒を持ってきてくださいな」
とお姫さまがおっしゃいました。
アラジンはその間に、ある粉を用意してやって来て、お姫さまに、ご自分のお酒の杯の中へそれを入れてくださいと頼んでいたのです。
そして、魔法使いがアフリカのお酒を持ち帰ってきた時、お姫さまはその粉を入れた杯に、そのお酒をなみなみとお注ぎになったのでした。そして、これから仲よくなるしるしですから飲んでください、と言って、まほう使におさしになりました。
まほう使はよろこんで、それに口をつけました。
しかし、それをみんな飲みほさないうちに、床の上にたおれて死んでしまいました。
アラジンは、かくれていた次のへやからとんで出て来て、まほう使の上着の中をさがしまわしました。
そして、まほうのランプをとり出して、大よろこびでそれをこすりました。
おばけが出て来ますと、すぐに御殿をしなへ持って帰って、もとの場所に立てるようにと言いつけました。
次の朝、王さまは大そう早く目をおさましになりました。
王さまは悲しくておねむりになることができなかったのです。
そして、まどのところへ行ってごらんになると、アラジンの御殿が、もとのところに立っているではありませんか。
王さまは、うそではないかとお思いになりました。
それで何べんも何べんも目をこすっては、じっと御殿の方をごらんになりました。
「ゆめではないのかしら。
朝の光を受けて前よりももっと美しく見える。
」とおっしゃいました。
それからまもなく、馬に乗って、アラジンの御殿をさして、走っていらっしゃいました。
そして、アラジンとお姫さまとを両手にだきしめて、およろこびになりました。
二人はアフリカのまほう使の話をしてお聞かせしました。
アラジンはまた、まほう使の死がいもお目にかけました。
それからまた、昔のような楽しい日がつづきました。
しかし、まだもう一つアラジンに心配が残っていました。
それは、アフリカのまほう使の弟も、やっぱりまほうを使っていたからです。
そして、その弟は、兄さんよりももっと悪者だったからであります。
はたして、その弟がかたきうちのために、しなへやって来ました。
アラジンをひどい目にあわせて、まほうのランプをぶんどって来ようと決心して来たのであります。
そして、しなへつくとすぐに、こっそり、まずファティマという尼さんをたずねて行きました。
そして、上着とベールとを、むりやりにかしてもらいました。
それから、このことがほかの人に知られてはいけないと思って、尼さんを殺してしまいました。
さて、この悪者のまほう使は、尼さんの上着とベールとをつけて、アラジンの御殿の近くの町を通りました。
町の人々は、ほんとうの尼さんだと思って、ひざまずいてその上着にキッスしました。
まもなく、お姫さまは、ファティマが町を通っているということをお聞きになりました。
それで、すぐ御殿へ来てくれるようにと、使をおやりになりました。
お姫さまは、ファティマをしじゅう見たい見たいと思っていらっしたものですから、尼さんが来た時、大へんていねいにおもてなしなさいました。
そして大広間へつれておいでになって、同じ長いすに腰かけながら、
「このへやがお気に召しまして。
」と、お聞きになりました。
まほう使はベールを深くかぶったままで、
「ほんとうに、目がさめるほどおきれいでございますこと。
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