初級翻訳・アラビヤンナイト 第5話

アラビヤンナイト

アラジンはまた、王さまのために何度も何度も戦争に行って、すばらしい手柄を立てました。
それで、王さまの一番お気に入りの頼もしい家来になりました。
けれども、遠いアフリカでは、アラジンをねたみ、いじめるための悪だくみが、ずっと考えつづけられていました。
あの伯父さんだといってアラジンをだました、あの年寄りのおそろしいまほう使いは、自分の持っていたまほうの力によって、自分が地の下へとじこめてしまった男の子(アラジン)が、あれから見事に助かって、大へんな金持ちになったということを知ったからであります。
そして、くやしがって自分のかみの毛を引きむしりながら、
「あいつめ、きっとあのランプの正しい使い方をすっかりさとったのにちがいない。おれは、あのランプをどうにかしてとり返す方法を思いつくまでは、くやしくてくやしくて、夜もおちおちねむることができない。」
と、ものすごい声でどなっていたのでありました。
それから、やがてまた、なつかしい中国へとやって来ました。
そしてアラジンの住んでいる町へ来て、目の前にあるすばらしい御殿を見ました。
御殿があんまり美しいのと、あの憎いアラジンがお金持ちらしい立派な暮らしをしているのを見て、まほう使いはあまりのくやしさに息がとまってしまうほどでした。
そこで、このずるいまほう使いは、頭のいい商人に化けました。
そして、たくさんピカピカの銅で作ったランプを手にして、町の中を歩きながら、
「さあ、いらないものは新しいランプととりかえてあげるよ! 古いランプを、新しいランプととりかえてあげますよ!」町から町へ、魔法使いはこの声を張り上げながら歩きました。
この呼び声を聞いて、町の人たちは「ばかげたことだ」と笑いながらも、物珍しそうに魔法使いのそばへと群がってきました。こんなことを言う男は、きっと頭がおかしくなってしまったに違いないと思ったからです。
ちょうどこの時、アラジンは狩りに出かけていて留守でした。
お姫さまはただ一人、大広間の窓にもたれかかって、外の景色を眺めていらっしゃいました。
町から聞こえてくる呼び声が耳に入ったものですから、さっそくお付きの召使いをお呼びになりました。
そして、
「あれはなんと言っているのか、聞いておいで」
と、おっしゃいました。
召使いはすぐに外へ聞きに行って戻ってきました。
そして、おかしくてたまらないといった様子でクスクスと笑いながら、
「ずいぶん風変わりなおじいさんでございますよ。新しいランプを、古いランプと取り替えてあげる、と申しているのでございます。そんなばかげた商売があるものでございましょうかねえ。ほほほ……」と、申し上げたのでした。
お姫さまもこれをお聞きになると、大そう面白そうにお笑いになりました。
そして、お部屋の隅の壁にかかっていたランプを指さしながら、
「そこにずいぶん古ぼけたランプがあるじゃないか。あれを持って行って、そのおじいさんが本当に取り替えてくれるかどうか、試してごらん」
と、おっしゃいました。
召使いはランプを持ちおろすと、町へ向かって走っていきました。
魔法使いは、その魔法のランプを両手でしっかりと受け取ると、
「どれでも、お好きなのをお持ちください!」
と言って、新しくピカピカ光る銅のランプをたくさん並べ立てました。
そして古いランプを大切そうに胸に抱きしめ、ほかのことには一切気がつかない様子でした。この召使いが新しいランプをごっそり全部持っていったとしても、きっと気づきもしなかったことでしょう。
それから魔法使いは少し歩いて、町の外れへと出ました。
そして、あたりに通っている人が誰もいないのを確認すると、手に入れた魔法のランプを取り出し、静かにこすりました。
するとたちまち、あのお馴染みのお化け(ランプの精)が目の前に現れ、「何のご用ですか?」と聞きました。
「お姫さまを乗せたまま、アラジンの御殿をアフリカの寂しい場所へ持って行って建ててくれ!」
と、魔法使いが言いました。
すると、またたくまにアラジンの御殿は、中にお姫さまや家来たちを乗せたまま、跡形もなく消え去ってしまいました。
まもなく、お城の窓から外を眺めた王さまは、アラジンの御殿がすっかりなくなっていることに気づきました。
「しまった……! アラジンはやはり危険な魔法使いだったのだな!」
王さまはこうおっしゃると、すぐに家来たちを呼びつけ、アラジンを鎖で縛り上げて連れてこいとお命じになりました。
家来たちが狩りから帰ってくるアラジンに行き会いますと、さっそく取り押さえて王さまの前へと引っ立てました。
町の人々は日頃からアラジンにとてもなついていましたので、アラジンが連れて行かれるそばへと駆け寄り、どうかひどい目にあいませんようにと、心から無事を祈ってくれました。
王さまはアラジンのお姿を見ると、激しくお怒りになりました。そして家来たちに、今すぐアラジンの首をはねてしまえとおっしゃいました。
けれども、町の人々がお城へ大勢押し寄せてきて、「そんなことをしたら承知しないぞ」と王さまを強くおどかしました。
そのため王さまも仕方なく、アラジンにかかっていた鎖を解いおやりになりました。
アラジンは、いったい自分はどうしてこんなひどい目にあわされなければならないのかと、王さまにお尋ねしました。
王さまは、
「かわいそうに、お前は何も知らないというのか。まあ、ここへ来てごらん」
とおっしゃいました。
そしてアラジンを窓のところへと連れて行き、かつてアラジンの御殿が立っていた場所がただの広大な原っぱになっているのを、指さして教えておやりになりました。
「お前の御殿はともかくとして、姫は一体どこへ行ってしまったのだろうか……! わしの大いなる自慢の娘はどこへ消えてしまったのだ……!」と言って、王さまはわんわんとお泣きになりました。
アラジンはあまりの驚きに、しばらくは言葉も出ませんでした。
御殿は一体どこへ行ってしまったのだろうかと、その原っぱを見つめたまま、ただだまってぼんやりと立ち尽くしていました。
しかし、しばらくして、ようやく声をしぼり出しました。
「陛下、どうか私に一月の猶予をくださいませ。そして、もしもその間に私がお姫さまを連れ戻すことができませんでしたなら、その時こそ、私をお殺しになってくださいませ!」
と、力強く申し上げました。
王さまはその願いをお聞き届けになり、許してくださいました。
アラジンはそれから三日の間、まるで気がおかしくなったかのように、「御殿はどこへ行ったのでしょうか!」と出会う人ごとに尋ね歩きました。
けれども、誰もその行方を知る人はいませんでした。それどころか、すっかりやつれ果てて悲しみに暮れるアラジンを見て、人々は陰で笑ったりするのでした。それでアラジンは、いっそ川に飛び込んで命を絶とうと思い、川のほとりへとやって来ました。
そして土手にひざまずき、死ぬ前のお祈りをしようとして、両手をしっかりと固く握り合わせました。
その時、うっかりあの魔法の指輪をこすってしまったのです。
するとたちまち、指輪のお化けが目の前に現れました。
「どんなご用でございますか」
と、そう尋ねるのです。
アラジンは大そう喜びました。

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