初級翻訳・アラビヤンナイト 第4話

アラビヤンナイト

それで、やっとお姫さまは、おとといの晩からの出来事を、すっかりお話しになりました。
大臣の息子はふるえながら、どうぞおむこさんになるのをやめさせてくださいまし、とお願いしました。
もうもう一晩だって、あんな目にあうのは、いやだと思ったものですから。
そういうわけで、ご婚礼はおとりやめになりました。
そしていろんなお祝いもないことになりました。
さて、いよいよ約束の三月の月日がたってから、アラジンのお母さんは、王さまの前へ出ました。
それで、やっと王さまは、お姫さまをこの女の息子にやると、お約束なすったことを、お思い出しになりました。
「それでは、わしが言った通りにすることにしよう。
だが、わしの娘をおよめさんにする者は、四十枚の皿に宝石を山もりにして、それを四十人の黒んぼのどれいに持たせてよこさなければいけない。
そして王さまの召使らしい、りっぱな着物を着た西洋人のどれ이가、その黒んぼのどれいの手を引いて来るのだぞ。」
と、おっしゃいました。
アラジンのお母さんは、こまったことになったと思いながら家へ帰って来て、アラジンに王さまのお言葉をつたえました。
「アラジンや、そんなことは、とてもできないことじゃないかね。」
そう言ってため息をつきました。
するとアラジンは、
「いいえ、お母さん、だめじゃありませんよ。王さまにはすぐおおせの通りにしてごらんに入れますよ。」と、いさぎよく言いました。
それから、まほうのランプをこすりました。
そしておばけが出て来た時、宝石を山もりにした四十枚のお皿と、王さまが言われただけのどれいをつれて来いと言いつけました。
さて、それから、このりっぱな行列が町を通ってお城へ向いました。
町じゅうの人々はぞろぞろと見物に出て来ました。
そしてみんな、黒んぼのどれいが頭の上にのせている、宝石を山もりにした金のお皿を見て、びっくりしました。
お城へついて、どれいたちは王さまに宝石をさし上げました。
王さまはずいぶんおおどろきになりましたけれど、また大そうおよろこびになって、アラジンとお姫さまとがすぐに婚礼するようにとおっしゃいました。
お母さんが帰って、このことをアラジンにつげますと、アラジンは、すぐにはお城へ行かれないと言いました。
そして、まずランプのおばけを呼んで、香水ぶろと、王さまがお召しになるような金のぬいとりのある着物と、自分のお供をする四十人のどれいと、お母さんのお供をする六人のどれいと、王さまのお馬よりもっと美しい馬と、そして、一万枚の金貨を十箇のさいふに分けて入れて持って来いと命じました。
さて、これらのものがみんなととのってから、アラジンは着物を着かえてお城へ向いました。
そして、りっぱな馬に乗って四十人のどれいを召しつれて行くみちみち、両がわに見物しているたくさんの人たちに、十箇のさいふから金貨をつかみ出しては、ばらばらとまいてやりました。
見物人たちは、きゃっきゃっと言って大よろこびで、それを拾いました。
しかし、その中のだれにだって、昔、町でのらくらと遊んでばかりいたなまけ者が、こんなになったとは気がつきませんでした。人々はみな、「これはきっと、どこかの国の王子さまだろう」と思っていました。
こんなものものしいありさまでアラジンがお城へつきますと、王さまはさっそくお出迎えになって、アラジンをやさしくおだきになりました。
それから家来たちに、すぐお祝いの宴会と、婚礼の用意をするようにとおっしゃいました。
するとアラジンは、
「陛下、しばらくお待ちくださいまし。私はお姫さまがお住みになる立派な御殿を立てますまでは、婚礼はできません。」と、おだやかに申し上げたのでありました。
そうしてアラジンは家へ帰って、もう一度ランプのおばけを呼びよせました。
そして、
「世界一りっぱな御殿を作れ。その御殿は、大理石と、緑色の石と、まばゆい宝石とで作らなければいけない。そしてまん中に、金と銀とのかべと、まどが二十四ついている大広間を作るのだ。それからそのまどは、ダイヤモンドだの、ルビーだの、そのほかの美しい宝石でかざらなければいけない。けれども、たった一つだけは何にもかざりをしないで、そのままの状態で残しておけ。それから、立派な馬ややまのような宝物も作らなければいけない。そして、御殿の中には、たくさんのお手伝いのみんなもいなければいけない。さあ、これだけのことを早くやってくれ。」
と、力強く言いつけました。
あくる朝、目を覚ましたアラジンは、世界一かと思われるほどの豪華な御殿が、いつの間にか立っているのに気がつきました。
御殿の大理石のかべは、朝日の光をうけて、うすもも色に美しくそまっていました。
まどにはさまざまな宝石がきらめいていました。
アラジンはさっそく、お母さんと一しょにお城へまいりました。
そして、きょうこそ婚礼をさせていただきたいと申し入れました。
お姫さまはアラジンのお姿をごらんになって、これならきっと仲よくしていけると心からお思いになりました。
町じゅうはお祝いのムードで大にぎわいでした。
そのあくる日は、王さまの方からアラジンの新御殿をおたずねになりました。
そしてまず大広間へお通りになって、金と銀とのかべと、宝石をかざりつけたまどとをしげしげとごらんになって、大へんご感服なさったのでした。
そして、
「これは世界で一ばん美しい御殿にちがいない。わしには、この御殿の中にあるたった一つのものでさえ、世界第一の宝物のように思われる。だが、ここにたった一つ、かざりつけをしてないまどがあるのは、どういうわけかね。」
と、ふしぎそうにおたずねになりました。
するとアラジンは、
「陛下、それは、陛下のとうといお手で、かざりつけをしていただきたいと存じまして、わざわざ残しておいたのでございます。」
と、りっぱにお答えしました。
王さまは、それを聞いて大へんおよろこびになりました。
そしてすぐにお城の装飾がかりの人たちに、このまどをほかのまどと同じようにすばらしくかざりつけるように、お言いつけになりました。
装飾がかりの人たちは、何日も何日も一生懸命に働きました。
そして、まだ、まどのかざりつけが半分もできないうちに、自分たちが持っていた宝石をすっかり使い果たしてしまいました。
王さまにこのことを申し上げますと、それでは自分の宝物蔵から宝石をみんなやるから使うように、とおっしゃいました。
それを使いはたしても、なおまどは出来上りませんでした。
それで、アラジンは、かかりの人たちにいったん仕事をやめさせて、王さまの宝石を全部ていねいに返してしまいました。
そして、その晩もう一度ランプのおばけを呼びました。
それで、まどは夜が明ける前にすっかり出来上ってしまいました。
王さまと、装飾がかりの人たちは、あまりのすごさにすっかりおどろいてしまいました。
けれども、アラジンはけっして自分のお金持ちであることをじまんしたりはしませんでした。
だれにでもやさしく、いつも礼儀ただしくつきあっていました。
そして貧しい人たちにも心からしんせつにしてやりました。
それでだれもかれもがアラジンヌを大好きになり、心から慕いました。

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