初級翻訳・キキリツツリ 第2話

キキリツツリ

どうかあなたがこの学校を出ても……たとえここで習ったことをみんな忘れてしまったとしても……その今の心だけは、いつまでも忘れずにいてください」

校長先生はすぐに露子さんを連れて家へ行き、このことをご両親に話すと、さすがの意地の悪かったお母さんも泣きながら露子さんを抱きしめて、「今まで私が悪うございました」とお父様や校長先生にお詫びをしました。

それから露子さんは間もなく、優秀な成績で小学校を卒業し、同じく優秀な成績で女学校に入学しました。女学校に入ってからも露子さんは、あの虫がどうしてあんな不思議なことができたのか、不思議でなりませんでした。おそらく、あの赤い帽子をかぶった虫が、あの夜に校長先生のところへ行って、自分のことを話してくれたに違いないと思いましたが、それを校長先生に聞くのはなんだか不思議な気がして、結局聞かずじまいになりました。

それから毎晩毎晩、あの赤い帽子をかぶった虫に一度会ってお礼を言おうと思いましたが、その後あの虫は一度も音を立てることも、姿を見せることもありませんでした。ただ、小さな虫穴だけが、露子さんの家の雨戸の桟(さん)に、いつまでもいつまでも残っていました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました