初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第18話

ニールスのふしぎな旅

もちろん、やろうとしたって、こんな小さな体じゃ大したことはできないでしょうけど。
それにしても、小鳥の巣を壊したり、卵を潰したりすることくらいはできるでしょう。
しかし、今のニールスは、すっかり良い子になっていたのです。
ガチョウの羽を抜いたりもしないし、乱暴な返事も一度もしたことがありません。
朝、アッカに「おはよう」の挨拶をするときには、ちゃんと帽子を取って、丁寧にお辞儀をするのでした。
ニールスは、「ガンたちが自分をラプランドへ一緒に連れて行ってくれそうにないのは、きっと今まで自分が悪いことばかりしてきたせいなんだろう」と、木曜日は一日中考え込んでいました。
それで、その日の夕方に、リスのハヤキチのお母さんが人間にさらわれて、生まれたばかりの赤ちゃんがお腹を空かせて、今にも死にそうになっていることを聞きますと、「よし、助けてあげよう」と心に決めました。
そして、その作戦を見事成功させたことは、さっきお話しした通りでした。
ニールスは金曜日にもまた公園へ入っていきました。
すると、どの茂みからも、ウソ鳥たちが、楽しそうに歌っているのが聞こえてきました。リスのハヤキチのおくさんが、あかちゃんだけをのこして人間にさらわれちゃったんだけど、ガチョウ番のニールスがゆうかんに、あかちゃんをおかあさんのところにつれていってあげたんだって、ウソたちはみんなで歌っていたよ。
「いまこのエーヴェードスクローステル公園で、オヤユビさんほどみんなにリスペクトされているひとはいないよ!」って、ウソたちは歌ったんだ。
「ガチョウ番のニールスだったころは、あんなにこわがられていたのにね! いまじゃ、リスのハヤキチはオヤユビさんにクルミをあげるし、びんぼうなウサギだって、きっとピョンピョンはねていっしょにあそぶよ。
キツネのズルスケがちかづいてきたら、シカはオヤユビさんをせなかにのせてにげてくれるだろうし、ヤマガラは、タカがくるのをきっとおしらせしてくれるよ。
それに、アトリやヒバリは、オヤユビさんのゆうかんなおこないを歌にうたってくれるだろうよ!」
アッカやほかのガンたちも、この歌をきいたのはたしかだよ。
それなのに、金曜日がおわっても、あいかわらず、ニールスがいつまでもいっしょにいていいとは言ってくれなかったんだ。
土曜日までずっと、ガンたちはエーヴェードのまわりのハタケでごはんをたべていたけど、いちどもズルスケにおそわれることはなかったんだ。
ところが、土曜日のあさはやくに、ガンたちがハタケにでていくと、ズルスケがまちぶせしていたんだ。
そして、ハタケからハタケへとおいかけてきたんだ。
これじゃあ、おちついてたべることもできないね。
そこでアッカは、すぐにけっしんをして、そらたかくまいあがったんだ。
そして、ほかのガンたちといっしょに、フェールスのたいらやリンデレードのやまのせをこえて、なんマイルもとんでいったんだ。
こうして、ヴィットシェーヴレちほうについたんだ。
ところが、そのヴィットシェーヴレでは、ガチョウがさらわれちゃったんだ。
そして、それからどうなったかは、まえにおはなししたね。
もしもあのとき、ニールスがちからのかぎり、ひっしになってたすけようとしなかったら、ガチョウのすがたはもうにどとみられなかったことだろう。
土曜日のゆうがた、ニールスがガチョウといっしょに、ヴォンブこへもどってきたときには、きょうはすばらしいことをやってのけたとおもったんだ。
そして、アッカやほかのガンたちがなんていうだろうかと、たのしみにしていたんだ。
ガンたちは、ずいぶんほめてはくれたけれど、でもニールスがききたいとおもっていることは、ひとことも言ってはくれなかったんだ。
日曜日になった。
ニールスがまほうでこびとさんにされてから、ちょうどいっしゅうかんになる。
しかし、あいもかわらず、ニールスはちっぽけなすがたのままなんだ。
ところが、そのニールスは、こんなすがたになったことをそれほどかなしんではいないようすだった。
ここのほとりの大きなヤナギのしげみにすわりこんで、ニールスはアシぶえをふいていたんだ。
まわりにいるヤマガラやウソやムクドリたちのうたを、いっしょうけんめいふこうとしていたんだ。
でも、ニールスはふえをふくのにあまりなれていないので、ちっともうまくふけないんだ。
そうすると、ちいさな音楽のせんせいたちは、はね毛をさかだて、このせいのふきょうさかげんにがっかりして、おおごえをたてたりはねたりしているんだ。
ニールスはみんながあんまりむちゅうになっているので、おかしくてたまらず、わらったひょうしにふえをおとしてしまったんだ。
ニールスはまたふきはじめようとした。
やっぱり、うまくいかないんだ。
すると、ことりたちは、くちをそろえてかなしそうに言った。
「きょうは、いつもよりへたじゃないか、オヤユビくん! ちょうしがちっともあってないよ。
きみのこころはどこへいっちゃったの?」
「どこかほかにね。」と、ニールスはこたえた。
まったくそのとおりだ。
ふえをふいているあいだも、あとどのくらいガンたちといっしょにいられるだろうか、もう、きょうにもかえされるのではないだろうか、というしんぱいが、しょっちゅうこころにうかんでくるんだ。
けれども、ニールスはきゅうにふえをすてて、しげみからとびおりた。
みれば、アッカやほかのガンたちが、むこうからながく一れつにならんでやってくる。
しかも、みんなはいつもとちがって、しずしずと、おごそかなかおつきをしてあるいてくるではないか。
ニールスは、いよいよじぶんのうんめいがどうきまるのかきかされるにちがいない、とおもったんだ。
とうとう、ガンたちはニールスのまえにたちどまった。
そこで、アッカがくちをひらいて言った。
「オヤユビさん、わたしはあなたのおかげで、キツネのズルスケからたすけていただいたのに、いままでおれいも言わないでいて、さぞへんなやつだとおもいでしょう。
むりもありません。
しかしわたしは、ことばでおれいをしたいほうなのです。
それで、オヤユビさん、いまそのごえんがえしができるとおもう。というのはね、わたしが、ニールス君に魔法をかけた小人さんのところに、使いのものを送ったのよ。
最初は小人さん、ニールス君を元の人間の姿に戻すのを、なかなかOKしてくれなかったんだ。
でもね、わたしは何回も何回も使いのものを送って、「ニールス君は私たちの間で、とってもりっぱなことをしてるんだよ!」って教えてあげたの。
そしたら、小人さんもやっと分かってくれて、「ニールス君が家に帰ったら、すぐに元の人間にしてあげるよ」って伝えてほしいって言ってたわ。
」
ところが、どうしたことでしょう!アッカが話し始めたとき、ニールスはあんなに嬉しそうだったのに、話が終わった今は、なんだかとっても悲しそうに見えました。
そして何も言わずに、ぷいと横を向くと、わーっと泣き出してしまったのです。
「え、えーっと、一体どうしたっていうの?」と、アッカはびっくりして聞きました。
「私が今話したことだけじゃ、満足できないみたいね。

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