初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第17話

ニールスのふしぎな旅

そんなことを考えながら探していると、突然、年老いた灰色の隊長のガンがやってきました。そして、「何か食べるもの、見つかったかい?」と尋ねました。ニールスが「いいえ、何も見つかりません」と答えると、隊長はニールスと一緒に探してくれました。でも、やっぱりハシバミの実は見つかりません。けれど、野バラの茂みに残っていた実を二つだけ見つけてくれました。ニールスはそれを美味しそうに食べました。でも、心の中では、「もしお母さんが、僕が生の魚や凍った野バラの実を食べて生きているって知ったら、なんて言うだろう?」って考えていました。

やがて、ガンたちがお腹いっぱい食べ終わると、また湖へ飛んでいって、お昼ごろまで、色々なことをして遊びました。ガンたちは、白ガチョウにも勝負を挑んで、泳ぎっこや、かけっこや、飛びっこなどをしました。大きなガチョウは一生懸命頑張りました。でも、すばしっこいガンたちには、いつも負けてしまいました。その間ずっと、ニールスはガチョウの背中に乗って、応援していました。そして、みんなと同じように、嬉しそうにしていました。ガアガア鳴いたり、笑ったり、いや、もう、それはそれはすごい騒ぎで、屋敷の人たちが気づかなかったのが不思議なくらいです。ガンたちは遊び疲れると、氷の上に飛んでいって、2時間くらい休みました。

その日の午後も、午前中とほとんど同じように過ごしました。最初に2時間くらいご飯を食べて、それからお日様が沈むまで、水浴びをしたり、氷の端っこで遊んだりしました。お日様が沈むと、みんなはすぐに氷の上に並んで、眠りにつきました。「こんな暮らしなら、僕、好きなんだけどなあ」夕方、ガチョウの羽の下に潜り込みながら、ニールスはこう思いました。「だけど、明日は家に帰されちゃうんだろうな。」

眠る前に、ニールスは「もしガンたちと一緒に旅に出たら、どんな良いことがあるだろう?」と、もう一度考えてみました。そうなれば、怠け者だって叱られることもないだろうし、何より、好きなようにぶらぶら暮らせるだろう。ただ一つ心配なのは、食べるものをどうやって手に入れるか、ってことだ。でも、今ではそれもほんの少しで足りるんだから、きっと何とかなるだろう。そしてまた、「これからどんなものを見るんだろう? どんなにたくさんの冒険をするんだろう?」なんて、色々なことを想像してみたのです。確かに、家にいて大変な思いをして働くのとは、全然違うだろうな。「ああ、もしガンたちと一緒に旅に行けさえしたら、こんな姿になっちゃったことも、残念に思わないんだけどなあ!」と、ニールスは思うのでした。こうなると、気にかかるのは「家に帰されちゃうこと」だけです。

ところが水曜日になっても、ガンたちは「帰れ」なんて一言も言いません。この日も、前の日と同じように過ぎていきました。そしてニールスは、のびのびとした野生での暮らしが、ますます好きになってきました。ニールスは、森みたいに大きな、この静かな公園を、まるで自分だけのものにしたような気持ちになりました。そして、自分の家の狭い部屋や、小さな畑に帰りたいなんて気持ちは、ちっとも湧いてきませんでした。水曜日には、ガンたちは自分を一緒に連れて行ってくれるつもりなんだろうと、ニールスはそう思っていました。ところが木曜日になると、この希望は消えてしまいました。

木曜日も、前の日と同じように始まったのです。ガンたちは広い畑でご飯を食べて、ニールスは食べ物を探しに公園へ行きました。しばらくすると、アッカがそばへやってきて、「何か食べるもの、見つかったかい?」と尋ねました。けれども、「いいえ、見つかりません」というニールスの答えに、アッカは枯れたイブキゼリ草を見つけてくれました。それには、まだ、小さなタネがいっぱい残っていました。
ニールスが食べ終わると、アッカは尋ねました。「お前さんは、ずいぶん無鉄砲に公園の中を走り回るようだけど、お前さんみたいな小さな体が気をつけなくちゃいけない敵が、たくさんいるってことを知っているのかい?」
「いいえ、ちっとも知りません」と、ニールスは答えました。
そこで、アッカはその敵について、一つ一つ説明し始めました。
「森へ行くときにはね」とアッカは言いました。
「キツネとテンに気をつけなくちゃいけないよ。
湖の岸辺にいるときには、カワウソがいることを忘れちゃダメだ。
石垣の上に座るときには、どんな小さな穴にも入り込めるイタチがいることを、いつも気をつけていないとダメだ。
それから、落ち葉の上に寝転んで眠ろうとするときには、まずその前に、落ち葉の下にマムシが冬眠していないか、よーく調べるんだよ。
広い野原に出たら、空を飛んでいるタカやハヤブサやワシなんかに気をつけるんだ。
イバラの茂みでは、ハイタカにつかまらないように注意しなさい。
カササギやカラスはどこにでもいるから、絶対に油断しちゃダメだ。
暗くなってきたら、耳をすまして、大きなフクロウに気をつけなくちゃいけないよ。
だって、フクロウって、全然音を立てずに飛んでくるんだからね。
すぐ近くまで来ないと、気づかないくらいなんだから。」
ニールスは、自分の命を狙っている敵がそんなにもたくさんいることを聞かされて、「これじゃあ、とても生きてはいられないだろう」と思いました。
「死ぬのはそんなに怖くないけど、食べられちゃうのはイヤだ!」
それでアッカに、「そういう動物から身を守るには、どうしたらいいんですか?」と尋ねました。
すると、アッカはすぐに答えました。
「リスやウサギやウソ鳥やヤマガラやキツツキやヒバリみたいな、森や野にいる小さな動物たちと仲良しになるようにしなさい。
こういう動物たちと友達になっていれば、危険のときには知らせてくれるだろうし、隠れる場所も教えてくれるだろう。
それに、本当に困ったときは、みんなで力を合わせて守ってくれるはずさ。」
そのあとで、ニールスは教えてもらった通りにやってみようと、さっそくリスのハヤキチに助けてくれるように頼んでみました。
けれども、ハヤキチは、どう見ても、助けてくれそうにはありませんでした。
「僕たちみたいな小さな動物に助けてもらおうなんて、無理だよ」と、リスのハヤキチは言うのでした。
「君がガチョウ番のニールスっていうやんちゃ坊主で、去年、ツバメの巣を壊したり、ムクドリの卵を潰したり、カラスの赤ちゃんを溝に投げ込んだり、ツグミを罠で捕まえたり、リスをカゴに閉じ込めたりしたことを、僕たちが知らないとでも思ってるの? まあ、せいぜい、自分のことは自分でやるんだね。
それより、僕たちがみんなで、君を人間たちのところに追い返さないことだけでも、感謝してほしいくらいさ。」
こんな返事をされれば、いつものニールスだったら、黙ってはいられないところでした。
けれどもこのとき、ニールスは、「自分の悪いことが、ガンたちに知られたら大変だぞ」と思っていました。
そんなことになったら、「一緒に旅をするのはダメだ」って言われちゃうかもしれない。
それだけが、ただただ心配でした。
ガンたちと一緒に旅をするようになってからというもの、ニールスは、ちょっとしたイタズラさえ、したことがありません。

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