「僕の気持ちを全部話さないとダメだ!」って、ニールスは思ったんだ。そうこうしているうちに、どんどん時間が過ぎていったんだけど、結局、思い切って言い出すことができなかったんだ。ちょっと変に思われるかもしれないけど、実はね、ニールスはこの年老いたアッカに対して、尊敬する気持ちがあったんだ。だから、アッカの考えに反対するのは、とっても難しいことだったんだ。それは、ニールス自身もよくわかっていたんだ。
ガンたちがご飯を食べている、このじめじめした草地の片側には、大きな石垣があったんだ。夕方になって、ニールスがアッカと話そうと思って顔を上げたとき、ふと、その石垣に目が止まったんだ。すると、その瞬間、ニールスはびっくりして、思わず小さく「きゃっ!」と叫んじゃった。その声に、他のガンたちもみんな一斉に顔を上げて、驚いた顔で石垣の方を見つめたんだ。最初、みんなはね、石垣の丸い灰色の石に足が生えて、それが走り出したのかと思ったんだ。でも、よーく見てみると、石垣の上をたくさんのネズミが走っているじゃないか!ネズミの群れはぎゅっと固まって、ものすごい速さで進んでいたんだ。しかも、その数がものすごくたくさんだから、しばらくの間は石垣をすっかり覆い隠してしまうほどだったんだ。
ニールスは、元の、大きくて力持ちの人間だった時でさえ、ネズミが怖くてたまらなかったんだ。それが今ではこんなにちっぽけな姿で、二、三匹のネズミにも負けちゃいそうなんだ。この時のニールスの気持ち、どんなだったと思う?! ネズミの進軍をずっと見ている間、ニールスはブルブル震えっぱなしだったんだ。ところが、不思議なことに、ガンたちもニールスと同じように、ネズミが大嫌いみたいなんだ。誰一人、一言も話さなかったよ。そして、ネズミたちがいなくなると、羽についた泥水を払い落とすみたいに、体をブルブル震わせたんだ。
「灰色ネズミがあんなにたくさん進軍してるのは、」と、ガンのユクシが言ったんだ。「何か良くないことの始まりだぞ。」
今度こそ、ニールスは「これはまたとないチャンスだ!」と思って、クッラベルイに一緒に連れて行ってくれないと困る、とアッカに言おうとしたんだ。ところが、また邪魔が入っちゃったんだ。今度は、大きな一羽の鳥が、みんなの間にサッと舞い降りてきたんだ。見た感じ、この鳥は体と首と頭を、小さな白いガチョウから借りてきたみたいだった。だけど、それ以外に、大きな黒い羽と、長い赤い足と、太くて長いくちばしを持っているんだ。そのくちばしは頭の割には大きすぎて、その重さのせいで頭が下がっているから、まるで悲しんでいるみたいで、心配そうな顔に見えるんだ。
アッカは急いで羽を整えて、コウノトリの方に近づきながら、何度も頭を下げたよ。まだ春になったばかりなのに、このスコーネでコウノトリに会ったことを、アッカはそれほど驚かなかったんだ。それはね、こういうわけなんだ。つまり、コウノトリのオスは、メスがはるばるバルト海を越えてくる前に、一人で先に飛んできて、冬の間に自分たちの巣が壊れていないかどうかを調べる習慣があるってことを、アッカはちゃんと知っていたからなんだ。それにしても、コウノトリが自分たちを訪ねてきたのは、一体どうしたわけなんだろう?って、不思議に思わずにはいられなかったんだ。だって、コウノトリっていうのは、同じ種類の仲間とだけ付き合うのが好きなんだからね。
「エルメンさん、お宅が何かあったわけじゃないんでしょう?」と、アッカが言ったんだ。
コウノトリは口を開けば、たいてい不平を言う、ってよく言われているよね。確かに、これは本当のことなんだ。このコウノトリも、話すのが面倒くさそうで、おまけに、ひどく悲しそうにしゃべるんだ。はじめのうちしばらくは、くちばしをカチカチ鳴らしていたんだけど、それから、しわがれた弱々しい声で話し始めたよ。すると、たちまち不平ばっかり並べ立てるんだ。グリムミンゲ城の屋根のてっぺんにあった巣が、冬の嵐でグチャグチャになっちゃったこと、もうこのあたりでは食べ物が見つからないこと、スコーネの人間たちが、どんどん自分たちのものを奪っていくこと、沼地を掘り起こしたり、耕したりしてしまうこと、だから、自分はスコーネから出ていって、もう二度と帰ってこようとは思わないこと、などなど、文句ばっかり言っているんだ。コウノトリがぶつぶつ文句を言っている間、お家もなくて、守ってくれる人もいないガンのアッカは、心の中でこう思ったんだ。
「エルメンさん、もしあたしがあなたみたいに恵まれた立場だったら、文句なんて言いませんよ。あなたは自由に飛び回れる野鳥なのに、人間たちには人気があって、鉄砲で撃たれたり、巣から卵を盗まれたりする心配なんて全然ないんですからね。」
アッカはそう思ったけれど、口には出さなかったんだ。
そしてコウノトリには、「あの家が建ってからずっと、コウノトリが住んでいたお家を捨てるつもりだなんて、信じられないわね。」とだけ言ったんだ。
コウノトリは今度は急にガンたちの方を向いて、「灰色ネズミの群れがグリムミンゲ城へ向かって進んでいるのを見ませんでしたか?」って聞いたんだ。
アッカが「ええ、あのゾッとするようなネズミの大行進は確かに見ましたよ」って答えると、コウノトリは、長い間グリムミンゲ城を守ってきた、勇敢な黒ネズミたちのことを全部話して聞かせたんだ。
「でも今夜、グリムミンゲ城は灰色ネズミたちのものになってしまうでしょう」と、コウノトリはため息をつきながら言ったんだ。
「どうしてまた今夜なの?コウノトリさん」って、アッカが聞いたよ。
「だって、黒ネズミたちはほとんどみんな、昨日の夜のうちにクッラベルイへ出かけちゃったんですからね。ほかの動物たちも、みんな急いでそこへ行くだろうって思ったんですよ」と、コウノトリが答えたんだ。
「だけど、見ての通り、灰色ネズミは家にいたんです。そして、今全員集まって、今夜グリムミンゲ城に攻め込もうとしているんです。つまり、今夜だと、お城を守っているのは、クッラベルイに行けないような、年老いて弱いネズミたちだけですからね。だから、きっと灰色ネズミたちは、目的を達成するでしょうね。だけど私は、長い間黒ネズミたちと仲良く暮らしてきたから、黒ネズミたちの敵が占領しているような場所には住みたくないんです」
これでアッカには、コウノトリが何のためにやってきたのかが、やっとわかったんだ。
つまり、怒って、そのことを言いに来たんだね。
確かに、コウノトリのやり方では、この大変なことを止めるのはとても無理だろう。
「エルメンさん、あなたはこのことを黒ネズミたちに教えてあげましたか?」って、アッカが尋ねたんだ。
「いいえ」と、コウノトリは答えたよ。
「知らせたって、どうせムダですよ。みんなが帰ってくるまでに、お城は取られてしまいますからね」
「そうとは限らないわよ、エルメンさん」と、アッカは言ったんだ。
「あたしはある年寄りのガンを知っているけれど、その人なら、きっと、こんなひどい悪事を喜んで止めてくれるでしょうね」
アッカがこう言うと、コウノトリは頭を上げて、じーっとアッカを見つめたんだ。
それも無理はないよね。
初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第21話
ニールスのふしぎな旅
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