初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第23話

ニールスのふしぎな旅

しかし、この用事は非常に秘密を守らなければならないことだったので、アッカはフクロウの奥さんの耳元に、その内容をそっとささやきました。

【ネズミ使い】

真夜中ごろのことでした。
灰色ネズミたちは、あちこち探し回った末に、とうとう地下室に通じている穴を見つけました。
それは壁のかなり高い位置についていました。
けれども、ネズミたちは一匹ずつ上に上に重なり合って、そこまでよじ登りました。
やがて、中でも一番勇敢なネズミが一匹、その穴の中に飛び込み、いよいよグリンミンゲ城の中へ突入しようとしました。
ここでは、昔から灰色ネズミの先祖たちが、ずいぶん命を落としてきたものです。
灰色ネズミ軍の勇士は、しばらく穴の中にじっとして、中からの攻撃を待ち構えました。
防衛軍の主力がいなくなっているのは確かですが、かといって、留守部隊が戦いもせずに降参するとは考えられません。
高鳴る心臓を抑えながら、勇士はほんのかすかな音も聞き逃すまいと、耳を澄ませました。
しかし、あたりはシーンとしています。
そこで、先頭を切る灰色ネズミは勇気を奮い起こし、ひえびえとした真っ暗な地下室へと飛び込みました。
この勇士に続いて、灰色ネズミ軍はあとからあとから突進しました。
みんなはじっと息を殺して、黒ネズミ軍の伏兵が現れるのを待ち受けていました。
でも、そのうちに、身動きすることもできないほど地下室はネズミでいっぱいになってしまいました。
そこで、思い切って、またまた前進することにしました。
灰色ネズミたちは、これまでこのお城の中に入ったことはありませんでしたが、迷うことなく進路を見つけ出しました。
黒ネズミたちが一階に行くのに使っていた、壁の中の通路をすぐに見つけたのです。
しかし、この狭くて急な階段をよじ登る前に、またもやあたりに気を配りました。
灰色ネズミたちにとっては、外で戦うときよりも、こうして黒ネズミたちがどこに隠れているかわからない今のほうが、ずっと気味悪く思われました。
ですから、無事に一階までたどり着けたときには、自分たちの幸運がまるで信じられないほどでした。
一階に足を踏み入れると同時に、床の上に高く積んであった穀物のにおいが、プーンと漂ってきました。
けれども、今はまだこの戦利品を楽しんでいるときではありません。
それよりもまず、用心をしながら、薄暗い空っぽの部屋を次から次へと調べて回りました。
古い台所の床の真ん中にあったかまどの上にも飛び上がってみました。
次の部屋では、もう少しで井戸の中に転げ落ちそうになりました。
小さな割れ目も、一つ一つ調べてみました。
しかし、どこへ行っても黒ネズミたちの姿は見えません。
こうして一階を全部占領してしまうと、今度は二階の番です。
灰色ネズミ軍はまたもや壁の中に、骨を折って危険な進軍を続けました。
その間も、敵がいつ現れるかとビクビクしながら、絶えず息を殺して待っていました。
そして、穀物の素晴らしいにおいに誘われそうになっても、我慢に我慢を重ねて、規則正しく進軍しました。
昔の兵士たちの部屋や、石造りのテーブル、炉や、窓の深くくぼんだところ、床の穴などを調べて回りました。
この床の穴は、昔攻め入ってきた敵兵の頭に、煮立ったタールをかけるのに使ったものでした。
けれども、黒ネズミの姿はどこにも見えません。
そこで、灰色ネズミ軍は、ご城主の大きな宴会場があった三階へと押し進みました。
そこは、寒々としてがらんとしていました。
古い家にはこうした部屋がよくあるものです。
灰色ネズミ軍は、今度は一番上の四階に突き進みました。
四階は大きな、だだっ広い広間になっていました。こうして、残すところなく探し回りましたが、灰色ネズミたちが思いもつかず、うっかり探し忘れた場所が一つだけありました。
それは、屋根の上にある大きなコウノトリの巣です。
そこでは、ちょうどこのころ、フクロウの奥さんが戻ってきて、アッカをゆり起こしていました。
そして、フクロウのフランメアがアッカの頼みを聞き入れてくれて、アッカのほしいものを渡してくれた、と報告しました。

さて、灰色ネズミたちは、お城の中を気が済むまで探しましたので、すっかり安心しきっていました。
黒ネズミたちは手向かいするつもりはなく、みんなどこかへ逃げてしまったものと思い込んだのです。
そこで、気分も晴れ晴れとして、いよいよ穀物の山へと飛びつきました。
ところが、灰色ネズミたちが小麦を一つぶ飲み込んだか飲み込まないうちに、中庭のほうから、鋭い笛の音が、かすかに響いてきました。
すると、ネズミたちは頭を上げて、気になる様子で耳を澄ませました。
そして、まるで穀物のところを離れようとでもするように、二歩三歩とチョロチョロ走り出しました。
けれど、すぐまた駆け戻ってきて、小麦の粒を食べ始めました。
すると、またもや笛の音が、鋭くしみ入るような調子で響いてきました。
すると、どうでしょう。
不思議、不思議。一匹、二匹、いいえ、すべてのネズミが穀物の山から飛び降りると、一番の近道を通って、お城の外へ出ようと、一生懸命に地下室めがけて駆け下りていくではありませんか。
それでも、中には思いとどまるネズミもずいぶんいました。
このネズミたちは、あれほど苦労してグリンミンゲ城を占領したことを思うと、そうやすやすとお城を捨ててしまうことができなかったのです。
けれど、もう一度笛の音を耳にしますと、たまらなくなって、みんなのあとを追いかけました。
大急ぎで穀物の山から飛び降りて、壁の中の狭い穴を、夢中になって転がるように駆け抜けていきました。

見れば、中庭の真ん中に、ちっぽけな小人が立っていて、笛を吹いています。
その周りをたくさんのネズミが取り囲んで、笛の音にうっとりと聞き惚れています。
チビさんがほんの少し笛を吹くのをやめますと、たちまちネズミたちは、チビさんに踊りかかって、今にも噛み殺しそうになります。
でも、すぐまた吹き始めますと、ネズミたちはまたもや、うっとりとなってしまいます。
こうしてチビさんは、笛の音で灰色ネズミたちをグリンミンゲ城の中からすっかり誘い出して、今度はゆっくりと中庭から道路のほうへ歩いていきました。
すると、灰色ネズミたちは一匹残らず、そのあとをゾロゾロついていきます。
笛の音がネズミたちの耳に、あまりに気持ちよく美しく響くので、思わず知らずついていくのでした。

チビさんはネズミたちの先頭に立って、ヴァルビューへ行く道のほうへ誘い出しました。
曲がりくねった道を進み、生垣を抜け、溝を通って歩いていきます。
すると、そのあとから、ネズミたちがゾロゾロついていくのです。
チビさんは、一時も休まず笛を吹き続けています。
その笛は、それはそれは小さな動物の角で作ってあるようでした。
でも、今ではこんな小さい角を生やしている動物はどこにも見当たりません。
それから、この笛は誰が作ったものなのか、知っている者もいません。
この笛は、フクロウのフランメアが、ルンド寺院の壁のくぼんだところで見つけたものでした。
フランメアは、それを大ガラスのバタキーに見せました。

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