ペンとインキ
夢野久作
あるとき、ペン先がインキに向かって、ぷんぷん怒りながらこう言いました。
「お前ほど、イヤなやつはいないよ!
ぼくがどんなにピカピカの金の服を着ておしゃれをしていても、お前はすぐにぼくの体をサビつかせて、ボロボロにして使えなくしてしまうんだから。
ぼくはお前みたいなやつ、大っ嫌いだ!」
すると、インキは落ち着いてこう言い返しました。
「ペンはね、サビつくのが仕事じゃないよ。
インキだって、ただ消えてなくなるのが役目じゃない。
ふたりで力を合わせて、いっしょに文字を書くことこそが、ぼくたちの本当の役目なんだよ。
サビるのがそんなにイヤなら、はじめから鉄になんて生まれてこなければよかったじゃないか。
それに、インキがそんなに嫌いなら、どうしてペンに生まれてきたんだい?」
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