それにしても、にいさんはマーキュリをクイックシルヴァ(水銀)にしてしまったり、また彼の姉妹の話を混ぜたりなんかして! あんまりおかしいじゃないの!」
「じゃあ、あれは姉妹じゃなかったのかい?」とユースタス・ブライトは訊ねました。
「ぼくがそれに早く気がついていたら、彼女をフクロウなんか可愛がって飼っているような、お嬢さんに仕立てるんだったなあ!」
「あら、それでも、あなたのお話のおかげで霧が晴れちゃったみたいね」とプリムロウズは言いました。
実際、その話が続いているうちに、野山から霧はすっかり消え去っていました。
彼らの前に広がった景色は、さっき見た時と方角一つ違っていないはずなのに、まるで新しく作り出されたもののような気がするほどでした。
半マイルほど先の谷間のくぼみに、美しい湖が姿を見せて、その岸辺の林と、向こうの山々の頂をくっきりと映し出していました。
その水面は鏡のように静かに光っていて、どこにも微風が吹いた跡さえ見当たりませんでした。
その向こう岸には、まるで谷間を横に仕切るように、長く寝そべったような格好のモニュメント山がありました。
ユースタス・ブライトはその山を、ペルシャ風のショールにくるまった、首のないスフィンクスに例えました。
そして実際、その山の木々の秋の葉は、とても見事で色彩の変化に富んでいたので、ペルシャショールの例えも、決して現実を大げさに言ったものではありませんでした。
タングルウッドと湖との間の低地にある、こんもりとした木立や林の縁などは、山腹の木々の枝葉よりもひどく霜を受けたようで、そのほとんどが金色や焦げ茶色に紅葉していました。
こうした眺めいっぱいに気持ちの良い日の光が差して、それにまつわるかすかな靄(もや)のために、何とも言えない柔らかな優しさを帯びていました。
ああ、今日こそどんなに気持ちの良い小春日和になることでしょう! 子供たちは元気よくバスケットを手に取ると、飛んだり跳ねたり、思いきりはしゃいだりふざけたりしながら出発しました。
一方、従兄のユースタスは子供たちの思い思いのはしゃぎ方よりもさらに上を行って、いろいろ変わったふざけ方を見せたので、子供たちも「とてもその真似はできない」と諦めてしまったくらいで、立派にこの一行のリーダーとしての資格を証明したわけでした。
そのあとからは、ベンという立派な老犬がついて行きました。
ベンは動物としては珍しいくらい賢く、親切な犬でしたが、どうやらこのおっちょこちょいのユースタス・ブライト以上の監督なしで、これらの子供たちを親たちの元から離して歩かせては、自分の責任になるとでも感じているようでした。
シャドウ・ブルック
――「何でも金になる話」の前に――
お昼に、子供たちの一行は、ある谷間に集まりました。
その底の方を小さな谷川が流れていました。
谷は狭く、その両側は川の縁から急な斜面になっていて、樫(かし)や楓(かえで)が混じり、主に胡桃(くるみ)と栗の木とが深く茂っていました。
夏の頃には、小川の両岸から突き出して互いに入り混じったたくさんの枝が、ぎっしりと昼間でも暗いほどに深く茂っていました。「蔭谷川(シャドウ・ブルック)」の名は、そこから来ているのです。しかし、この奥まった場所へも秋がしのび込んできた今では、小暗い青葉もすべて金色に変わって、谷間に影を落とすどころか、本当にそこをぱっと明るくしていました。
曇った日でさえ、その明るい黄葉の場所は、まるで日の光が照り残っているように見えたことでしょう。
そしてまた、川の底にも縁にも、たくさんの黄葉が落ちていて、日の光をばらまいたようでした。
こうして、夏の間は涼を求めてやってくる人々を癒やしていた小暗い谷陰も、今では他では見られないほど明るい場所になっていたのです。
そうして金色になった水路を流れる谷川は、この辺りで少し淀んで溜まりのようになっており、その中では魚たちがすいすいと泳ぎ回っていました。
流れはそれからまた速さを増して、湖へ行き着くのを急いでいるかのようでした。
そのうちに、川幅いっぱいに根を張った木があり、その根にぶつかった水は、もんどり打って、ちょっと行きどころを忘れたように戸惑っていました。
そうして不意を突かれた谷川が、大げさに立てている水の音を聞いていると、おかしくなるほどでした。
それからは、どんどん流れていきながらも、まるで迷路に入り込んで独り言でも言っているかのように、川のささやきは止むことがありませんでした。
思うに、暗いはずの谷がこんなに明るくなっているうえ、たくさんの子供たちがやってきておしゃべりをしたり、騒ぎ回ったりしているので、川もびっくりしたのでしょう。
とにかく、そんなふうにして、川はどんどん谷間をくぐって、湖水の中へと注いでいたのです。
ユースタス・ブライトと小さな仲間たちは、このシャドウ川の谷間で昼食をとりました。
彼らはタングルウッドからおいしい物をどっさりバスケットに詰めて持ってきて、それを木の切り株や、苔むした木の幹の上に広げて、愉快に騒ぎながら、とてもおいしくいただきました。
それが済むと、みんながっかりしてしまいました。
「ここで休んで、ユースタスにいさんに、また何かいいお話をしてほしいなあ」と子供たちの何人かが言いました。
従兄のユースタスだって、当然、子供たちと同じくらいくたびれていました。
というのも、この楽しかった午前中に、彼はいろいろな離れ業を演じて見せたのですから。
ダンデライアンやクロウヴァやカウスリップやバタカップなどは、パーシウスがニンフたちから貰ったような、翼の生えたスリッパをユースタスが履いているのだと、もう少しで本当に思い込むところでした。
実際この学生は、今しがたまで地上にいたかと思うと、たちまちにして胡桃(くるみ)の木の天辺に上っているようなことが度々あったのです。
すると今度は、胡桃の大雨をばらばらと子供たちの頭の上に降らせて、彼らは大急ぎでそれをバスケットの中へ拾い集めるのでした。
つまり彼はリスか猿のように飛び回ったあとだったので、今度は黄色い落ち葉の上に身を投げ出して、少し休みたい様子でした。
しかし子供というものは、他人がくたくたに疲れていようが、情も容赦もないものです。
もしも一息でも吐く息が残っていれば、それでお話をしてくれとせがむのです。
「ユースタスにいさん」とカウスリップが言いました。「ゴーゴンの首のお話はとても面白かったわ。あれに負けないくらいのお話を、もう一つおできになりそう?」
「できるよ、君」とユースタスは言って、これから仮眠でも始めようかとでもいったように、帽子のつばを目の上までぐっと下げました。
「あれくらいなのは、いや、やろうと思えばもっと面白いのを、一ダースくらいはできるよ」
「ねえ、プリムロウズとペリウィンクル、にいさんのおっしゃったこと聞いた?」と叫んで、カウスリップは喜びのあまり踊り出しました。
「ユースタスにいさんは、ゴーゴンの首の話より、もっと面白いのを一ダースもしてくださるんですって!」
「一つだってするとは言ってやしないよ、この小さなカウスリップのお馬鹿さん!」とユースタスは半分怒ったように言いました。
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