初級翻訳・小公女 第17話

小公女

セーラは落ち着いて階段を登っていきましたが、息は切れるばかりでした。
彼女はエミリーをしっかりと脇に抱きしめていました。
「この子に口がきけたら――物がいえさえしたら、どんなにいいだろう」
セーラは自分の部屋へ行き、虎の敷物の上に寝ころんで、暖炉の火を見つめながら、考えられる限りのことを考えようとしました。
しかし、彼女が二階へ登りきる前に、アメリア嬢がセーラの部屋から出てきました。
嬢はぴたりとドアを閉め、その前に立ちふさがると、困ったような顔をしました。
姉に言いつけられたことをするのが、後ろめたくてたまらなかったのです。
「もう、ここへ入ってはいけないのですよ」
「入ってはいけないのですか?」
セーラは一歩あとずさりしました。
アメリア嬢は少し顔を赤らめて、「ここは、もうあなたのお部屋じゃないのですよ」と言いました。
「では、私のお部屋はどこなのですか?」
「今晩からあなたは、屋根裏の、ベッキーの隣の部屋で寝るんですよ」
セーラは、以前ベッキーから聞いていたので、その部屋がどこにあるのかよく知っていました。
セーラはくるりと後ろを向き、二つ続いた階段を登っていきました。
二つ目の階段は狭く、ちぎれた古い絨毯が敷いてあるだけでした。
セーラはそこを登りながら、今までの――今は自分とも思えない昨日までの、あの幸福な少女が住んでいた場所から、ずっと遠くへ離れていくような気がしました。
小さすぎる古い服を着て階段を登っていく今の少女は、事実、昨日までのセーラとは別人になっていたのです。
屋根裏のドアを開けたとき、さすがに侘しい気持ちになりました。
それでもセーラは中に入ると、ドアに寄りかかって部屋を見回しました。
まったく、ここは別世界です。
天井は屋根の傾斜で片方が低くなっており、壁は粗末な白塗りのままでした。その白塗りの壁も、もうすっかり薄汚れていて、あちこちがはげ落ちていました。
錆びついた暖炉に、カチカチに堅い寝床。
下の階の部屋には置けないような、使い古された椅子とテーブル。
明かり取りの天窓からは、物憂げな灰色の空がのぞいているだけでした。
その下に、壊れた赤い足台を見つけたセーラは、そこに腰を下ろしました。
セーラは膝の上にエミリーを寝かせ、両手で抱きしめながら、その人形の上に顔を伏せて、しばらくの間じっと座っていました。

ひかえめにドアを叩く音がして、隙間から泣きはらしたベッキーの顔が現れました。
ベッキーはさっきから泣き続けていたので、エプロンで何度も目をこすったせいで、顔がすっかり変わってしまっていました。
「お、お、お嬢様、ちょっと、あの……中に入ってもよろしいでしょうか」
セーラはベッキーに笑いかけてあげようとしましたが、どうしても笑うことができませんでした。
しかし、ベッキーが心から悲しんでいるのを見て、セーラは急に子供らしい表情になり、手を差し伸べて声を上げて泣き出しました。
「ベッキーちゃん、いつか私、あなたに『私たち同じような女の子同士ね』って言ったことがあるでしょう。ねえ、嘘じゃなかったでしょ? 二人の間にはもう、身分の違いなんてないのよ。私はもう、お姫様でもなんでもなくなってしまったの」

ベッキーは駆け寄ってセーラの手を取り、自分の胸に押し当てました。
ベッキーはしゃくり上げながら、セーラのそばにひざまずいて言いました。
「お嬢様は、どんなことが起きたって、やっぱりお姫様です。何があったって、どうしたって、お姫様以外のものになんてなれるはずがありません」

八 屋根裏にて

セーラはいつまでも、初めてこの屋根裏部屋で眠った夜のことを忘れることができませんでした。
一晩中、セーラは子供にしては深すぎる、狂おしいほどの悲しみに浸っていました。
けれど、セーラはそのことを誰にも話しませんでした。たとえ話したとしても、誰にも理解できるような悲しみではなかったでしょう。
セーラは眠れぬ夜の闇の中で、慣れない堅い寝床や、見慣れない部屋の様子に心を煩わされました。
しかし、それはかえって彼女の気を紛らわせてくれたようなものでした。そんな紛らわしさがなければ、セーラは悲しみのあまりどうなっていたかわかりません。
「パパは、亡くなってしまったんだわ。パパは、亡くなってしまったんだわ」
寝床に入ってしばらくの間は、そのことばかり考えていました。
寝床が堅いことに気づいたのは、寝てからずいぶんたった後のことでした。
寝返りを打っているうちに、周囲がひどく暗いことに気づきました。
それから、風が屋根の上で、何か大声で泣き叫んでいるように聞こえることにも気づきました。
さらに気味の悪いことに、壁の中や戸棚の裏から、きいきい、がりがりという音が聞こえてきました。
セーラは以前ベッキーから話を聞いていたので、すぐにネズミのいたずらだと気づきました。
セーラは一度か二度、鋭い爪で床をひっかく音を聞いて、思わず飛び起きました。
それから、頭から布団をかぶって横になりました。

セーラの生活は、その日からがらりと変わりました。
マリエットは翌朝、暇を出されました。
昨日までセーラがいた部屋はすっかり片付けられ、新入生のための普通の寝室にされてしまいました。
朝食の食堂へ出てみると、ラヴィニアが、昨日までセーラが座っていた場所に座っていました。
ミンチン先生は冷ややかにセーラに言いました。
「セーラ、お前は自分の仕事をすぐに始めるんだよ。小さい子たちと一緒にテーブルについて、皆がお行儀よく食べられるように見てあげるんだ。これからもっと早く出てこなくちゃいけないよ。ほら、ロッティがもうお茶をこぼしているじゃないか」

セーラの仕事は、こうして始まりました。
日が経つごとに用事は増えるばかりでした。
フランス語の勉強を見てあげるのは一番楽な仕事でしたが、そのほかにも天気の悪い時でもお構いなしにお使いにやらされたり、皆がやりたがらない用事を押し付けられたりしました。
料理番や女中までがミンチン先生の真似をして、これまで長い間ちやほやされていたこの女の子を、いい気になってこき使うのでした。
セーラは最初のひと月か二月の間は、素直に働いていれば、こき使う人たちの心もそのうち和らぐだろうと思っていました。
自分はお慈悲を受けているのではなく、食べるために働いているのだということも、そのうちわかってくれるだろうと考えていたのです。
しかし、やがて彼女も、皆が心を和らげてくれるどころか、素直にすればするほどつけあがるだけだということを、悟らなければなりませんでした。セーラがもう少し大人っぽくなっていたら、ミンチン先生も彼女を上級生のフランス語の先生にしていたことでしょう。しかし、セーラはまだ子供らしさが残っていたため、大人になるまでは女中の代わりに働かせたほうが得だと先生は考えたのでした。

セーラになら、難しい用事や込み入った伝言も安心して任せることができました。お金の支払いに行かせても間違いはなく、ちょっとした掃除も器用にこなしたからです。

セーラは、もう勉強どころではありませんでした。楽しいことは何も教えてもらえません。

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