初級翻訳・旅の仲間 第3話

アンデルセン ハンス・クリスチャン

お前がこいつの借金を代わりに払うってんなら、俺たちもこれ以上何も手出しはしねえ。約束してやるよ」と、ひどい男たちは言い、ヨハンネスが出したお金を受け取ると、「なんておめでたい、お人好しの小僧だぜ!」とゲラゲラ笑いながら去っていきました。

ヨハンネスは、亡くなった人をもう一度お棺の中に優しく寝かせてあげて、胸の上で静かに手を組み合わせてあげました。それから「さようなら」とお別れを言うと、とても晴れやかで楽しい気持ちになって、大きな森の中をずんずん歩いていきました。

あたりを見渡すと、木の枝の間からこぼれ落ちるお月様の光の中で、可愛らしい小さな妖精たちが、とっても楽しそうに遊んでいました。妖精たちは、ヨハンネスがとっても優しくて良い子だということを知っていたので、驚いて大騒ぎしたり逃げ出したりもしないで、そのまま楽しそうに遊び続けていました。だって、妖精たちの姿を見ることができないのは、心が意地悪で悪い人たちだけなのですから。妖精たちの中には、人間の指くらいの大きさしかない、とっても小さな子もいました。

みんな、長い金色の髪の毛を、金でできたクシで優しくとかしていました。

よく見ると、妖精の小人たちは二人ずつ組になって、木の葉っぱや、背の高い草の上にたまっている大きな水滴(露のしずく)の上に乗って、玉乗り遊びをして楽しんでいたのです。

時々、水滴がコロコロと転がり落ちると、その上に乗っていた小人たちも一緒に、長い草の茎の間へコロコロッと転がり落ちてしまいます。

すると、周りのほかの小人たちは「きゃっきゃっ!」と声をあげて笑い合い、大はしゃぎをしました。

なんて面白くて、おかしいのでしょう! 妖精たちは、楽しそうに歌まで歌いはじめました。

それは、ヨハンネスがまだ小さかった頃に覚えた、とっても美しい歌でした。

頭に銀の冠をかぶった綺麗で大きなクモが、生け垣から生け垣へと渡り歩いて、長い吊り橋をかけたり、立派なお城を作ったりしていました。

そのクモの巣の上にきれいな露が降りて、明るいお月様の光を浴びると、まるでキラキラと光り輝く水晶のようにも見えました。

こうして、東の空からお日様が昇ってくるまで、みんなは楽しく遊び続けました。

けれども、お日様が昇ると同時に、小さな妖精たちは、みんなお花のかわいいつぼみの中へと入っていってしまいました。

クモが作った吊り橋やお城も、朝の風に吹き飛ばされて、普通の大きなクモの巣のように、空へと飛んで消えてしまいました。

ヨハンネスが、ちょうど森の外へと抜け出たときのことです。

後ろの方から、「おーい、旅の人! どこへ行くんだい?」と叫ぶ、大きな男の人の声が聞こえてきました。

「広い世界へと向かっているんです!」と、ヨハンネスは答えました。

「僕にはお父さんもお母さんもいない、かわいそうなひとりぼっちです。でも、神様がきっと、助けてくださると思っています」

「実は私も、広い世界へ旅立ちたいと思っていたんだ」と、その知らない男の人は言いました。

「どうだい、二人で一緒にお互い旅の仲間になって、行ってみないか?」

「はい、ぜひ一緒に行きましょう!」と、ヨハンネスは言いました。

それから二人は、仲良く一緒に歩き出しました。

二人ともとても心が優しい人たちだったので、あっという間に仲良くなりました。

けれどもヨハンネスは、この新しい旅の仲間が、自分よりもずっと物知り賢いことに、すぐに気がつきました。

なぜならこの人は、これまでに世界中をほとんど旅して回っていて、どんなことでもよく知っていたからです。

お日様は、もう空高くへと昇っていました。

そこで二人は、ある大きな木の下に腰を下ろして、朝ご飯を食べようとしました。

するとそこへ、ひとりのおばあさんがやって来ました。

見ると、まあ、なんてお年寄りなのでしょう! 本当にヨボヨボで、腰もすっかり曲がっていたのです。

それでもおばあさんは、杖にすがりつきながら、背中には森で拾い集めてきた薪(まき)の束を一つ、背負っていました。

お腹に結んだエプロンの間からは、シダとヤナギの枝で作った大きなムチが三本、ひょっこりと顔を出していました。

おばあさんが二人のすぐ近くまでやって来たとき、足をつるりと滑らせて、派手に転んでしまいました。

「痛いっ!」と、おばあさんは大きな声をあげて叫びました。

それも無理はありません。転んだ拍子に、片方の足を挫(くじ)いてしまったのです。本当に、かわいそうなおばあさんでした。

「僕たち二人で、このおばあさんをお家まで連れて行ってあげましょうよ!」と、すぐにヨハンネスが言い出しました。

ところが、旅の仲間はリュックサックを開けると、小さな箱を取り出しました。

そして、こう言いました。
「この中に塗り薬が入っているんだよ。これをおばあさんの足に塗ってあげれば、すぐに治るんだ。そうすれば、おばあさんは前みたいに元気になって、一人で歩いて家に帰れるようになるよ」

それから、おばあさんに向かって言いました。
「おばあさん、足を治してあげる代わりに、そのエプロンの中にある三本のムチを僕にくださいな」

「そりゃあ、お礼にしては高すぎますよ」と、おばあさんは言って、妙な格好で首を振りました。

そのムチを、どうしても渡したくなかったのです。

そうかと言って、足を挫いたまま、こうして倒れているのも嫌でした。

そこで、おばあさんは仕方なく、そのムチを男の人に渡すことにしました。

おばあさんは、挫いた足に塗り薬を塗ってもらうと、すぐに立ち上がって、転ぶ前よりも元気よく歩いていきました。

もちろん、こんなにすぐ良くなったのも、あの素晴らしい塗り薬のおかげです。

といっても、この塗り薬は、街の普通の薬屋さんに行けばどこでも買える、というようなものではなかったのでした。

「そんなムチをもらって、どうするんですか?」と、ヨハンネスは旅の仲間に尋ねました。

「これで、きれいな花束が三つできるのさ」と、旅の仲間は言いました。

「私はこういうものが好きでね。ちょっと変人だからさ」

それから二人は、また長い距離をどんどん歩いていきました。

「あっ、お天気が悪くなってきましたよ」と、ヨハンネスは向こうの空を指さしながら言いました。「あんなに恐ろしい真っ黒な雲が、むくむくと湧き出てきましたよ!」

「いやいや、あれは雲なんかじゃないよ。山さ! それも、ただの山じゃない。大きくて、とっても立派な山なんだ。てっぺんまで登れば、雲の上に出て、清々しい空気を思いきり吸うことができるんだよ。本当に素晴らしい景色だろうね。明日には、きっとあの山を越えて、もっと先の広い世界へ進んでいるはずさ!」と、旅の仲間は言いました。

でも、その山は見た目ほど近くはありませんでした。二人が山のふもとにたどり着くまでに、まる一日もかかってしまったほどです。

山には、黒々とした深い森が、空に向かってまっすぐに伸びていました。それに、ひとつの町と同じくらいもありそうな、ものすごく大きな岩もありました。こんな大変な山を登るのは、絶対にひと苦労しそうです。

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