初級翻訳・智恵の一太郎 第22話

智恵の一太郎

わかったかい。
お湯から出たら、いくらいそいでいる時でも、体をよくふいて、皮膚の水分をできるだけ少くすること。
よくおぼえておきたまえ。
そうすればすぐ表へ出ても、めったに風を引くようなことはないんだからね。
もっとも、体が弱いと風をひきやすいから、まず体を丈夫にすることだ」
 それからしばらくして、高橋さんは帰って行きましたが、一太郎君は、「やっぱり高橋さんはえらいや、だから、僕、高橋さんが大好きさ」と、つぶやきながら、にこにこして、ひとり笑いをするのでした。

ゴムマリとミシン針

 春のはじめの、ある日曜日のおひるすぎのことでした。
一太郎君のお母さんは、八畳のお部屋の縁側に近い明るい所へ、モーターつきの、ミシン台を持ち出して、一太郎君のシャツをぬっておられました。
足ぶみのミシンではありませんから、坐っていてお仕事が出来るのです。
一太郎君は日当りのよい縁側に足をなげ出して、お母さんとお話をしていました。
縁側の前は広いお庭で、沢山の立木の向こうに板塀が見えています。
その塀のむこうの空地で、近所の子供たちが、マリ投げをして遊んでいる声がきこえていました。
みんな一太郎君のお友達です。
突然、子供たちの「アッ」という声がきこえたかと思うと、お庭の木の葉が、ガサガサと鳴って、どうやらゴムマリがお庭の中へおちたらしい様子です。
一太郎君はマリを拾って、塀の外へなげ返してやろうと思って、縁側から庭下駄をはいておりて行きました。

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