「これからは、時々ここに顔を出すといい」
「それでは、私どもが営む舟仙(ふなせん)へも、いつかお越し下さるときがまいりましょうか」
悠二郎もまた次の木へと移りながら尋ねる。どうやらお互いに、今の感動で涙に濡れた顔を見られたくないらしい。繁りあう葉の暗がりの中から、正篤が明るく元気な調子でこう答えた。
「うん、行くとも! いつの日かもっと先になって、本当に身に自由な時間ができたら――おれは長生きするぞ、悠二郎」
「それこそは、私が以前に申し上げたはずでございます」
「いや、それよりももっとだ! あの頑固な勘右衛門よりも長く生き抜いてやる――。聞こえているのか悠二郎、おれは八十歳まで生きるつもりだぞ、ちゃんと聞いているのか!」
桑の葉がサワサワと大きく揺れ、悠二郎が何かをもごもごと返事をする声が聞こえてきた。
正篤は、手に摘み溜めた実をまとめて口に放り込み、すばやく指先で自分の目をそっと拭った。
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