初級翻訳・河童小僧 第2話

岡本 綺堂

「これはおそらく、水の中に何かが沈んでいるのではないか」

一同で相談した末、その翌朝、さらに小舟を漕ぎ出して、夜な夜な影が迷っていたあたりを、あちらこちらと竿で探ってみました。すると、青々と伸びた芦(あし)の根元に、何かがコツンと当たります。「さては!」と一同が騒ぎ立て、ただちにそれを引き上げてみると、なんと驚いたことに、それは年頃が二十三、四歳ほどに見える町人風の男でした。荒縄で手足をきつく縛られたまま投げ込まれたらしく、顔色は青ざめ、髪は乱れ、二度と見られないほど無残な姿でした。水に沈んでからすでに何日経ったのか、全身は腐乱し、その臭気はひどいものでした。一同は「あっ」と顔を見合わせましたが、とにかくその死体を引き上げ、役所へその次第を届け出て、それぞれ調査に手を尽くしました。

しかし、この男が誰なのかは分からず、したがって死んだ理由も分からず、ましてや犯人が誰なのかも分からずじまいでした。結局、調べもそれきりになってしまったというのは、なんとも哀れな物語です。

で、あの怪しい人影は、きっとこの水死者の幽霊が、夜な夜な姿を現して、自分を助けてほしいと未来の救済を求めていたのだろうという噂が立ちました。これを思えば、死者に魂がないとは言えないでしょう。現在、その死体を引き上げたうちの一人が語る、昔話でございます。

世の中には、こうした不可思議なこともあるものですね。

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