初級翻訳・老いたるえびのうた 第1話

室生 犀星

きょうは、えびのように悲しい。
体には、角やひげや、とげがいっぱい生えているけれど、その中のどれが悲しんでいるのか、さっぱりわからない。

ひげにたずねてみても、「おれじゃないよ」と言う。
とがったとげに聞いてみても、「わしでもない」と言う。

それじゃあ、いったい誰が悲しんでいるんだろう。
誰に聞いても、ちっともわからない。

生きながら、畳の上を這っている一匹のえせえび。
からだじゅうが、悲しんでいるんだ。

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