初級翻訳・若草物語 第11話

オルコット ルイーザ・メイ

お茶が終わると、ジョウは帰ると言い出しましたが、ローリイは引き止めました。ジョウを温室へ連れて行き、両手では抱えきれないほどの美しい花を切って持たせてくれました。

「これ、お母様にあげて。それから、届けてくれたお薬、とっても気に入ったと伝えておいてね。」

客間へ戻ると、老人が暖炉の前に立っていました。ジョウの目は、そこに置かれた大きなグランド・ピアノに吸い寄せられました。

「あなた、ピアノを弾くの?」
「時々ね」と、ローリイは控えめに答えました。
「今、弾いてちょうだい。帰ったらベスに話してあげたいから、聴いていきたいの。」
「君が先に弾いてくれないかい?」
「あたしはダメよ。音楽は大好きだけれど。」

ローリイがピアノを弾き始めました。ジョウは花束に鼻を押し当てながら、うっとりと耳を澄ませました。ローリイが、じょうずなのにちっとも気取らないので、ますます尊敬の念を抱きました。演奏が終わってからジョウがあまりに褒めるものだから、ローリイは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしました。

「いや、褒めるのはもうたくさんだ。この子の音楽も悪くはないが、もっとほかにも大事なことに身を入れてもらいたいものじゃ。ああ、もうお帰りか。ありがとう、またおいで。お母様によろしく。では、さようなら、お医者さんのジョウさん。」

老人の握手は硬かったのですが、どこか少し不満そうな様子でした。あとでローリイに尋ねると、それは僕がピアノを弾いたからだと言いました。なぜなのかは、いつか話すと言って教えてくれませんでした。ローリイは「また来てね」と、名残惜しそうに言いました。

「あなたが元気になったら、うちへ遊びに来るって約束してね。」
「ええ、必ず行くよ。」

ジョウが家に帰ってきて、ことの顛末をすべて報告すると、姉妹たちもみんな、ローリイの家へ押し掛けたくてたまらなくなりました。マーチ夫人は、亡き夫の古い友人である老人とゆっくり話をしてみたかったし、メグはあの素敵な温室を歩いてみたかった。ベスは大きなグランド・ピアノに心ひかれ、エミイは屋敷に飾られた立派な絵画や彫刻を心ゆくまで眺めたがっていました。

「おかあさん、どうしてローレンスさんは、ローリイさんがピアノを弾くのを嫌うのかしら?」
ジョウが興味津々で尋ねました。

「さあ、詳しいことは分からないけれど、きっとローリイさんのお父さまが、イタリア人の音楽家と結婚なさったことを、おじいさまが快く思っていなかったからでしょうね。ローリイさんが小さいときに両親を亡くして、おじいさまが引き取ったのだけれど、もし孫が亡き両親の道を選んで音楽家になりたいと言い出したら困る、と心配しているのかもしれませんわ。」

「まあ、まるで小説みたい!」とメグが言いました。
するとジョウが、すかさず口をはさみました。
「そんなのひどい! もし音楽家になりたいなら、そうさせてあげればいいのに。嫌いな大学に無理やり行かせて苦しめるなんて、間違ってるわ。」

それから、ローリイについての話でしばらく盛り上がりました。やがてメグがこんなことを言いました。
「夜会でお会いしたけれど、あなたの言う通り、ローリイはとても礼儀正しいわね。あのお母さまがくださったお薬というのは、ちょっと気の利いた言い回しだったわね。」

「え、白ジェリイのこと?」
「まあ、なんておばかさんなの! お薬の話じゃなくて、あなたのことを言ったのよ。」

「そうなの?」ジョウは、思いがけないといった様子で目を丸くしました。
「あなたって人は本当に……。そんなに褒められても気づかないなんて、どうなっているのかしら。」

「そんなバカなこと言わないでよ。お世辞なんて気にせず、家族のいないあの子を、みんなで親切にしてあげましょうよ。ねえ、おかあさん、ローリイが遊びに来てもいいでしょう?」
「ええ、もちろん。喜んで。」

「あたし、自分を子供だなんて言わないわ。もうすぐ十三歳だもの」と、エミイがつぶやきました。
「ベス、あなたはどう思う?」

「あたしはね、あの『巡礼ごっこの旅』のことを考えていたの。おとなしくなろうとして、失望の沼を通り、試練の門を抜けて、険しい山を登っていくこと。それから、あの素晴らしい宝物がいっぱいのローレンスさんの家が、あたしたちにとっての美しい宮殿になるかもしれないってこと。」

「そうね、あたしたちはやっと、ライオンがいるところまで来ることができたわね」と、ジョウはベスの言葉に賛成するように答えました。

第六章 美しい宮殿

大きな屋敷は、ついに彼女たちにとっての「美しい宮殿」となりました。
けれど、みんながそこへ通い詰めるまでにはかなりの時間がかかりました。特にベスにとって、入り口にいる「ライオン(老人)」のそばを通り抜けるのは、とても勇気のいることでした。

ローレンス老人は一番大きなライオンでしたが、一度マーチ家を訪ねて、娘たち一人ひとりに冗談や優しい言葉をかけ、お母さんと昔話をしてからは、もう誰も彼を怖がることはなくなりました。

もう一匹の「ライオン」は、経済的な格差でした。こちらが貧しく、向こうがお金持ちであること。でもそれも、ローリイが貧しいながらも愛にあふれたマーチ家を訪ね、そこから受ける慰めを心から喜んでいると知るうちに、娘たちは過剰に恐縮しなくてもいいのだと思えるようになりました。

そうして、春の草の芽のように、新しい友情が燃え上がりました。ローリイはこれまで家族の本当の温かさを知らなかったので、マーチ家に満ちる豊かで温かい空気に惹かれ、暇さえあれば遊びに来るようになったのです。

それを少し心配したブルック先生が、老人に詳しく報告しました。
「いや、かまわん。遊ばせておくさ。足りない勉強はあとで取り返せばいい。マーチ夫人の言う通り、あまり勉強させすぎたのがいけなかったのだ。マーチ夫人がうまくやってくれているよ。」

老人はすべてを理解していました。
それからのマーチ家とローリイは、本当に楽しく過ごしました。お芝居ごっこ、そり遊び、氷すべり、にぎやかな夜会、そして楽しいおしゃべり。マーチ家の三人の姉妹も屋敷へ押し掛け、メグは温室で花束を作り、ジョウは書斎で本をむさぼり読み、エミイは絵を模写しました。

ただベスだけは、グランド・ピアノに憧れながらも、どうしても老人が怖くて、いつも逃げ帰っていました。
そのことを知った老人は、わざわざマーチ家を訪ねて、お母さんにこう言いました。

「ローリイはピアノを怠けておる。やりすぎたから丁度いい塩梅なのだが、やはりピアノは使わんといかん。どなたか来て弾いてはくれんかな。いつ入ってきてもいいし、挨拶もいらん。黙って来て、黙って弾いて帰ればいいんだが。」

それを聞いていたベスは、もう我慢できなくなって言いました。
「あたし、ベスです。音楽が大好きです。お邪魔でなければ、ぜひ弾かせていただきたいのですが。」

「どうぞ、どうぞ。」「半日の間、誰もいないのだから、遠慮なくピアノを使ってもらえれば、逆にこちらからお礼を言わねばならんのですよ。」

ああ、ベスは顔をほてらせ、ローレンスさんの手を握りました。

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