初級翻訳・若草物語 第10話

オルコット ルイーザ・メイ

それはそうと、なんて素敵な部屋なんでしょう!」
「女中さんがね、あまり掃除が得意じゃなくて、散らかっているんだ」
「じゃあ、あたしが二分間で片付けてあげるわ!」

ジョウはてきぱきと動き回りました。部屋の雰囲気が一変したので、ローリイは満足して感謝の言葉を述べました。
「さあ、今度は僕がお客さんを楽しませる番だね」
「いいえ、あたしはあなたを慰めに来たのよ。何か本を読んであげましょうか?」
「ありがとう。でも、そこにある本は全部読んでしまったんだ。もしよかったら、お話をしてくれるほうが嬉しいな」
「いいわよ、一日中だって話してあげる! ベスなんて、あたしがおしゃべりを始めると、いつ終わるのかわからないなんて言うのよ」
「ベスさんというのは、ときどき小さなバスケットを持って出かける、頬の赤い女の子かな?」
「ええ、とってもいい子なのよ」
「それじゃあ、あの美しい方がメグさんで、巻き毛の方がエミイさんだね?」
「どうしてそんなに詳しいの?」

ローリイは、さっと顔を赤らめました。
「だって、ここにいると楽しいみんなの姿がよく見えるんだもの。夜、カーテンを閉め忘れた窓越しに、お母様を囲んで過ごしているところも見えるよ。お母様の顔は優しくて、まるで花のようだ。ああ、でも僕にはお母さんがいないんだ」

母の愛に飢えた少年の言葉に、ジョウの胸は温かく揺さぶられました。素直なジョウは、自分がどれほど豊かな家庭の愛に恵まれているかを感じ、その温もりを病気で寂しい思いをしている彼にも分けてあげたいと思いました。
「それなら、カーテンを開けておいてあげるから、好きなだけ見てちょうだい。いいえ、それよりうちに遊びにいらっしゃいよ。お母様はとってもいい人だし、おいしいものもたくさん出してくれるわ。ベスは歌を歌うし、エミイはダンスをする。メグとあたしでおかしなお芝居を見せて笑わせてあげるわ。みんなで楽しく遊ぶのよ。でも、おじい様は行かせてくださるかしら?」
「君のお母様が頼んでくださればね。おじいさんは親切で、僕の好きなことは何でもさせてくれるんだ」

ローリイはマーチ家の人たちのことに強い興味を持ち、ジョウから姉妹たちの話を聞いてとても嬉しそうでした。特に、ジョウが気難しくてせっかちなおばさんの世話をしに行く話や、そのおばさんのところに気取った老紳士がプロポーズに来たとき、飼っていたむく犬が紳士のかつらをひっぱって、ピカピカのハゲ頭が露わになってしまったという話には、ベッドの上で転げ回って涙が出るほど笑い、女中さんが驚いて様子を見に来たほどでした。

ジョウは話が盛り上がったので得意になり、家の芝居のことや、いろんな計画、お父様のこと、その希望や心配事、そして家の中の一番面白いことなど、残らず話しました。それから本の話になり、ジョウはローリイが自分と同じくらい本が好きで、しかも自分よりたくさん読んでいることを知って嬉しくなりました。
「そんなに本が好きなら、おじい様の書斎へ行きましょう!」

書斎はジョウを驚かせ、喜ばせました。ずらりと並んだ本だけでなく、絵画や彫刻、珍しい品物が入った棚があり、ゆったりとした椅子まで備え付けられていたからです。ジョウはそのビロード張りの椅子に腰をかけて、「まあ、なんて立派なの! あなたは世界で一番幸せな男の子よ!」と言いました。そのとき、ベルが鳴りました。おじい様が帰ってきたのかとハッとしましたが、すぐに女中がやってきてお医者様がいらしたと告げ、ローリイは診察を受けるために出ていきました。

ジョウはホッとして書斎の中を見物し、老紳士の立派な肖像画の前に立ち止まって見つめました。ちょうどその時、扉が開きましたが、ジョウは振り返りもせずに言いました。
「この方、とても親切そうな目をしていらっしゃるから、あたしもう怖くないわ」でも、口もとはきつそうだし、なんだか意地っぱりみたい。うちのおじいさんほど優しそうな顔じゃないけれど、あたし、この人のことは好きだわ。」

すると、うしろから声がしました。
「どうも、ありがとうございます。」

あわててふりかえると、そこにはローレンス老人が立っていました。ジョウはあまりの驚きに、思わず背中をちぢこまらせました。顔は真っ赤になり、心臓がドキドキと高鳴ります。

逃げ出すのは卑怯だと思い、その場にとどまることにしました。すると、目の前にいる本物の老人の目は、肖像画の目よりもずっと穏やかで優しかったので、さっきまでの恐怖心はすうっと消えていきました。

「そうすると、あなたはわたしを怖がらないのかね?」
「ええ、それほどは。」
「わしは、あなたのおじいさんほど綺麗(ハンサム)ではないというのだね?」
「ええ、お世辞にも綺麗とは言えませんわ。」
「わしは意地っぱりかね?」
「そう思います。」
「それだのに、わしが好きだというのか?」
「ええ、好きですわ。」

この正直な答えが、老人をとても喜ばせました。老人はジョウの手を握り、その顔をじっとのぞきこんで言いました。

「顔つきは似ていなくても、あなたは立派なおじいさんの性質をしっかりと受け継いでいる。あのお方は、勇気があってとても正直な人だった。わしは、あの方と友だちであったことを、今でも誇りに思っているよ。」
「ありがとうございます。」

ジョウは、ようやく心が軽くなりました。

「ところで、あなたはうちの孫と、これまで何をしていたのかね? ええ?」
「ただ、近所づきあいをしようと思ってお邪魔しただけです。」
「あなたは、あの子を元気づける必要があるとお考えかね?」
「ええ、少し寂しそうでしたから。若いお友だちがいるといいと思ったんです。わたしたちは女ですけれど、何かのお役に立てれば嬉しいと思って。あなたが届けてくださった素敵なクリスマスのプレゼントも、みんなでとても感謝しているんですよ。」
「いや、あれはあの子自身が考えたことじゃよ。ところで、あの困っているお母様(マーチ夫人)はどうしておられる?」
「おかげさまで、穏やかに暮らしております。」
「そうか。あのお母さんのやり方は、いつも貧しい人たちを助けていたおじいさんのやり口とおなじだ。いつか天気のいい日に、お母様をお訪ねしたいと伝えておくれ。ほら、お茶のベルが鳴った。さあ、一緒に温かいお茶を飲んで、近所づきあいをしようじゃないか。」

ローレンス老人は、とても礼儀正しくジョウに腕を差し出し、二人は腕を組んで階段を降りていきました。そこへちょうどローリイが戻ってきて、その光景を見て腰を抜かすほど驚きました。まったく、想像もできないようなことが起きていたのです。

老人はお茶を四杯も飲む間、あまり言葉を発しませんでした。ただ、ローリイがジョウと楽しそうに話し、今日に限って顔を赤くして生き生きとしている様子を、じっと見守っていました。

(ふむ、この娘の言う通り、孫は寂しかったのだな。今日、あの子は別人のようになった。よし、この家の娘たちが、孫をどう変えていくか、じっくり見守ってみよう。)

老人もまた、本当は気さくでこだわりがない人だったのです。だからこそ、孫の心も理解することができたのでした。

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