うれしくなったメグは、シダの葉とバラの花を少しだけ自分のために取っておくと、残りのきれいなお花をみんなに「どうぞ」と気前よく分けてあげました。みんなは、そんなメグの優しい心づかいにすっかりうっとりしてしまいました。
メグが緑色のシダの葉を髪に飾り、ピンクのバラの花を胸元にあしらうと、少し古ぼけていたドレスが、まるで見違えるように華やかに引き立って見えました。
その日の夜、メグは心から楽しんで、何度も何度もダンスを踊りました。周りの人たちはみんなメグに親切にしてくれましたし、メグが歌を歌うと「なんて素晴らしい歌声なんだろう」と褒めてくれました。リンカーン少佐という人は「あの、お目目のパッチリとした美しいお嬢様はどなたですか?」と周りに尋ねていましたし、マフォットさんは「メグちゃんは体がバネのように軽やかだね、ぜひ私ともダンスを踊っておくれ」と言ってくれました。
こうして夢のように楽しい時間を過ごしていたメグでしたが、緑がいっぱいの温室のベンチに腰かけて、ダンスのパートナーがアイスクリームを持ってきてくれるのを待っていたときのことです。後ろの方からヒソヒソと話す声が聞こえてきて、メグは一気に嫌な気持ちになってしまいました。
「あの子、おいくつくらいかしら?」
「十七か、十八くらいじゃないかしら」
「あそこの娘たちのうちの誰かが、あの一家と結婚でもすることになったら、それこそ大出世よね。サリーが言っていたけれど、あの子たちは最近、あのお家とものすごく親しくしているんですって。それに、あのおじいさんも娘たちをまるで自分の孫のようにかわいがって、すっかり夢中になっているらしいわよ」
「それはきっと、マーチ夫人の計画なのよ。娘たちの方にはそんな下心はなさそうに見えるけれどね」
そう言ったのは、なんとマフォット奥様でした。
「あの子、お花が届いたときにお母さんからだって嘘をついて、お顔を真っ赤にしていたわ。もっといいお洋服を着せてあげたら、すごくきれいになるでしょうにね。今度の木曜日のパーティーのときに、ドレスを貸してあげようかしら。でも、貸してあげるなんて言ったら、あの子、プライドを傷つけられて嫌な気持ちになっちゃうかしら?」
「あの子はプライドが強そうだけど、持っているのはあの安っぽくてみすぼらしいモスリンのドレスだけなんだから、きっと喜んで借りるわよ。それに、今夜のダンスでドレスを破いちゃうかもしれないから、それを言い訳にして貸してあげればいいんじゃない?」
「そうね。私、ローレンス君もパーティーに招待して、あの子を喜ばせてあげましょうよ。それで、後からふたりをからかってあげるの」
そこへ、メグのダンスの相手がアイスクリームを持って戻ってきました。
メグは、今の意地悪なうわさ話を聞いて、胸の奥から怒りがメラメラとわき上がってきました。そして、「今すぐお家に帰って、お母さんの胸に飛び込んで、このつらい気持ちを全部ぶちまけたい!」と強く思いました。
けれども、プライドの高いメグには、そんなみっともない真似はとてもできませんでした。メグは平気なふりをして、できるだけ明るくニコニコと振る舞ったので、周りの人たちは誰も、メグが心の中で泣きそうになりながらがんばっていることに気づきませんでした。
パーティーが終わると、メグは心からホッとため息をつきました。ベッドの中でさっきの出来事を思い出していると、悔しさで熱くなったほっぺたを、涙がハラハラと伝い落ちていきました。
あのくだらない、意地悪なうわさ話のせいで、メグの目の前にはそれまで知らなかった大人の嫌な世界が突然現れ、これまでメグを守ってくれていた、静かで平和な世界がめちゃくちゃにかき乱されてしまったのです。
かわいそうなメグは、一晩中なかなか眠れずに苦しい夜を過ごし、翌朝はまぶたが重く腫れ上がった、とてもどんよりとした気分のままベッドから起き上がりました。
その日の朝は、パーティーの疲れもあって、みんな、なんとなくぼんやりと過ごしていました。姉妹たちがようやく「編み物でもしようかしら」と重い腰を上げたときには、もうお昼になっていました。
メグは、みんながチラチラと自分を見て、興味津々で様子をうかがっていることに気づいていました。すると、長女のベルが編み物の手を止め、わざとらしく、うっとりとした様子でこう言いました。それを聞いて、メグは「やっぱりあのうわさ話の通りなんだ」と、すべてを悟りました。
「ねえ、ひな菊ちゃん。今度の木曜日のパーティーにね、あなたのお友達のローレンスさんにも招待状を送ったのよ。私たちも彼とお友達になりたいし、何より、あなたを喜ばせてあげたいなと思ってね」
「ご親切にありがとうございます。でも、あの方はきっといらっしゃらないと思いますわ。だってもう、七十歳に近いおじいさんなんですもの」
「まあ、とぼけちゃって、ずるいわ! 私が言っているのは、あのお若い方のことよ!」と、ベルはクスクスと笑いました。
「若い方なんて、あのお家にはいませんわ。ローリーのことなら……ローリーなら、まだほんの子供ですもの。私の妹のジョーと同じくらいの年なんです。私はこの八月で十七歳になるんですよ」
「でも、あんなに立派で美しいお花を贈ってくださるなんて、本当に素敵で優しい方じゃない」と、アンニーが何か言いたげな、にやにやとした顔で言いました。
「ええ、お花はいつでもくださるんです。私のお家のみんなにね。ローリーの家には温室があって、お花がたくさん咲いていますし、私たちはお花が大好きだから。それに、私のお母さんとローレンスのおじいさんがお友達同士なんです。だから、私たち子供同士も一緒に遊んでいるだけなんですよ」
メグは、早くこの恥ずかしくて嫌な話題を終わらせてほしいと、心の中で願っていました。
「ひな菊ちゃんは、まだ世の中のことをなーんにも知らないのね」と、クララはうなずきながら、ベルに向かって言いました。
「本当に、まるでまだ赤ちゃんみたいね」と、ベルは肩をすくめて言いました。
ちょうどそのとき、ひらひらとしたレースのついた、上等な絹のドレスを着たマフォット奥様が、部屋に入ってきました。「私、これから娘たちのお買い物をしにお出かけしますけれど、みなさん、何か買ってきてほしいものはあるかしら?」と、マフォット奥様が言いました。
「いいえ、おばさま、ありがとうございます。私は木曜日のパーティーには、新しいピンクのシルクのドレスを着ますから」と、サリーが言いました。
「ねえ、あなたは何を着るの?」と、サリーがメグに尋ねました。
「ゆうべ着た、あの白いドレスを着るつもりよ。ひどく破けちゃったけれど、もしうまくお直しできたらね」と、メグは答えました。
「どうして、お家に別のお洋服を取りに行かせないの?」と、ちょっと気のきかないサリーが不思議そうに言いました。
「だって、代わりのお洋服なんて、私、持っていないもの」
メグがやっとの思いでそう言うと、サリーはいい人なのですが、すっかりびっくりした様子で、「えっ、あれだけしか持ってないの? まあ……」と言いかけました。
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