初級翻訳・若草物語 第19話

オルコット ルイーザ・メイ

するとベルが首を振ってサリーの言葉をさえぎり、優しく言いました。

「何もおかしいことなんてないわよ。まだ大人のパーティーにデビューしたばかりなんだから、たくさんのドレスを用意しておく必要なんてないもの。ねえ、ひな菊ちゃん、お着替えがお家に何枚あっても、わざわざ取りに行かせることなんてないわ。私のサイズが小さくなった、とってもかわいい青いシルクのドレスがしまってあるから、それを着てちょうだいな」

「ありがとうございます。でも、私みたいな子供には、この前の白いドレスで十分ですわ」と、メグは遠慮しました。

「そんなこと言わないで! あなたを思いきりおしゃれさせて、ピカピカに輝かせてみたいの。誰にも見つからないようにお支度をして、まるでシンデレラ姫みたいに二人で突然現れて、みんなをあっと驚かせましょうよ!」
ベルはクスクス笑いながら、でも本当に心からの優しい気持ちで勧めてくれたので、メグもそれ以上断ることができなくなってしまいました。

木曜日の夕方になると、ベルとお手伝いさんは、メグをまるで本物の美しいお姫様のように変身させました。

髪の毛をくるくるとカールさせ、いい香りのするお化粧用のパウダーをパタパタとはたき、唇にはかわいいサンゴ色の口紅を塗りました。そして、澄み切った青空のようなドレスを着せて、ブレスレットやネックレス、ブローチなどのキラキラしたアクセサリーをたくさん飾ってあげたのです。

開いたドレスの襟元からは美しい肩がのぞき、胸元には真っ赤なバラの花が飾られました。ベルとお手伝いさんも、その美しさにすっかりうっとりして、メグを眺めました。

「さあ、みんなにお披露目しましょう!」と、ベルは、お客さんたちがたくさん集まっているお部屋へ、メグを連れていきました。

メグは、かかとの高い、青いシルクのダンスシューズをはき、長いドレスの裾をひきずりながら、胸をドキドキさせて歩いていきました。

鏡をのぞき込むと、そこには息をのむほどかわいい美少女が映っていました。メグは「いつかこんな風におしゃれをしてみたい」という昔からの夢が叶って、とても幸せな気持ちになりました。そして、ちょっぴり得意げになって、みんなに自分の美しさを見せびらかしたいとさえ思うようになったのです。

ベルは、ナンとクララの方を向いて言いました。
「私がドレスを着替えてくる間に、ナン、あなたはメグちゃんに、ドレスの裾のさばき方と、上手な歩き方を教えてあげてね。ドレスを踏んづけて転んじゃったら大変だから。それからクララ、あなたの持っている銀の蝶々のピンを、メグの髪の左側のカールにとめてあげてちょうだい。私が作り上げた、この素晴らしい作品を台無しにしちゃだめよ!」
ベルは自分の大成功に大満足した様子で、そう言い残すと急いでお部屋を出ていきました。

パーティーの始まりを告げるベルが鳴り響き、マフォット奥様がお使いの者をよこして「女の子たちはすぐに来てください」と伝えてきたとき、メグは緊張して、サリーにコソコソと耳打ちしました。

「私、下の階のホールに行くのがなんだか怖いわ。なんだかすごく窮屈で落ち着かないし、それに、肩や胸が大きく開いているから、なんだか半分裸でいるみたいで恥ずかしいの……」

「そんなことないわ、とってもきれいだから大丈夫よ! 私なんて足元にも及ばないくらい素敵。ベルのセンスは本当に素晴らしいわね。ただ、ドレスの裾を踏んで転ばないようにだけ気をつけてね」と、サリーは励ましました。

メグはそのアドバイスをしっかりと心に刻み込み、転ばないように気をつけて無事に階段を降りると、静かにお客さまたちのいる広間へと入っていきました。

すると、メグの姿はあっという間にみんなの目を引きつけました。この前の夜のパーティーのときとはまるで違って、若い男の人たちが次々とメグの周りに集まり、ご機嫌をとるように楽しそうに話しかけてきたのです。

ソファに腰かけて、周りの人たちをじろじろと観察していた何人かのおばあさまたちも、メグのことが気になって仕方がありません。そのうちの一人が、マフォット奥様に「あの子はどこのお嬢さんかしら?」と尋ねました。

「あの子はデイジー・マーチですの。お父様は陸軍の大佐で、私たちと同じようにとても立派な一流の家柄なのですけれど、今は破産してしまって貧しいのですわ。でも、あのお金持ちのローレンス家とはとても親しくしていますのよ。うちの息子のネッドも、あの子にすっかり夢中なんですの」と、マフォット奥様は答えました。

「おやまあ、そうなのですか」と、そのおばあさまは、メグをもっとよく見ようとして、メガネをかけ直しました。

メグは聞こえないふりをしていましたが、マフォット奥様があまりにも大げさででたらめな嘘をつくので、すっかりあきれてしまいました。

けれども、そんなモヤモヤした嫌な気持ちを心の隅にぐっと押し込んで、顔にはにこやかな微笑みを浮かべながら、おしとやかなお嬢様らしく振る舞い続けました。

ところが、メグの顔から突然、笑顔がサーッと消えてしまいました。

まっすぐ前を見たところに、なんとローリーが立っていたからです。しかも、ローリーのその目は、メグのことを「そんな格好をして、おかしいよ」と責めているように見えたのです。

ローリーは、にこっと笑ってお辞儀をしてくれましたが、メグは「ああ、こんな無理をして飾ったお人形みたいな姿じゃなくて、いつもの自分の服を着ていればよかった!」と、激しく後悔しました。

メグはローリーのそばに歩み寄ると、「よく来てくれたわね。あなたはこのパーティーには来ないものだと思っていたわ」と話しかけました。

「ジョーがね、どうしてもパーティーに行って、君の様子を見てきてほしいって言うから来たんだよ」と、ローリーは言いました。

「……ジョーに、私のことなんて報告するつもり?」と、メグはドキドキしながら尋ねました。

「『あまりにキラキラしすぎていて、どこのお姫様だかさっぱりわからなかったよ』って、伝えるつもりさ」「だって、まるで急に大人っぽくなっちゃって、全然メグらしくないんだもん」

「みんなで私をこんな風におめかしさせたのよ。私も、一度でいいからこういうのをやってみたかったの。ジョーが見たら、きっとびっくりするでしょうね。あなたも、私のこの格好、嫌いかしら?」

「うん、ぼくは嫌だな。わざとらしく、無理に着飾っているのなんて、全然好きじゃないよ」

年下のローリーから言われた言葉にしては、あまりにも図星で鋭かったので、メグはすっかり不機嫌になってしまいました。
「あなたみたいに失礼な人、もう知らないわ!」
メグはそう言い放つと、ローリーの前からぷいっと立ち去りました。そして窓際まで歩いていくと、窮屈なドレスのせいで熱くなった頬を、ひんやりとした夜の風に当てて冷ましました。

メグが大好きなワルツの曲が流れ始めても、ずっと窓際でツンとしたまま立っていると、ローリーがそっと近づいてきて、お行儀よく丁寧に手を差し伸べました。
「さっきは失礼なことを言ってしまって、本当にごめんなさい。

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