」
と、いたずらっぽく、たずねるのでした。
「わかった! いままで、ぼくと、いっしょにいた、このふたりは、にせものです。
それが、きみの魔法の種だったのだ。
」
小林君が、ほおをまっかにして叫びました。
魔法博士のトリックが、わかってきたように、思ったのです。
「ウフフフ……、さすがは、明智探偵の弟子だ。
きみは、頭のはたらきが、すばやいね。
わしは、数十人の部下に、東京じゅうを歩きまわらせて、このふたりをさがしだした。
だが、いくら、にているといっても、ソックリとはいかない。
それで、わしは、このふたりに、とくいの化粧をしてやった。
つまり変装術だね。
ちょっと見たのでは、わからないが、このふたりの顔には、わしの変装術が、ほどこしてある。
そのおかげで、きみたちを、だますことができたんだよ。
」
「じゃあ、ほんとうの井上君とノロちゃんは、ここに閉じこめられていたのですね。
だから、イノウエとノロとほったB・Dバッジを、きみが持っていたんだ。
そうでしょう?」
小林少年が、息をはずませて、いいました。
「そのとおり。
だが、きみはまだ、ほんとうのことを知らない。
井上とノロは、わしが移動映画というもので、神社の森の中へおびきよせた。すると、その森の中に、黒覆面のわしの部下がふたり待ちかまえていて、井上とノロをしばりあげ、自動車にのせて、ここへはこんだのだ。
このわしのすみかは、ひじょうに広くて、入口も、ほうぼうにある。
さっきの地下道ばかりが、入口ではない。
その森の中で、かくとうしているときに、井上がポケットから、銀貨のようなものをつかみだして、地面にばらまいた。
わしはそれを見のがさなかった。
拾ってしらべてみると、話にきいていたB・Dバッジだった。
それならきっと、森へくるまでの地面にも落としてあるだろうとおもったので、あとで部下のものにしらべさせた。
すると、わしのおもったとおりに落ちていた。
それを、みんな拾わせて、ここへ、集めておいたのだ。
」
「だから、井上君とノロちゃんが、ゆくえ不明になったことが、わからなかったのですね。
もしバッジが、もとの地面に落ちていたら、少年探偵団員のだれかが、みつけたはずですからね。
……しかし、きみは、いったい、ぼくのバッジまで取りあげて、それをどうするつもりです。
バッジを種に、なにか、もくろむのじゃありませんか。
」
小林君が、怪人の顔を、にらみつけてたずねました。
「ウフフフ……、えらい! さすがは、小林君だ。
きみはもう、そこまで気がついたのか。
うん、むろん、もくろんでいるよ。
これを種にして、明智探偵を、おびきよせるのだ。
三人の名をほりつけた、このバッジを、道に落としておけば、少年探偵団の子どもが、いつかは、みつける。
そうすれば明智探偵の耳に、それがはいる。
小林君はじめ、井上、ノロの三人が、どこかに、とらわれていることがわかる。
だいじな小林君のことだ。
明智自身が、でかけてくるよ。
そこで、こっちは、うまいトリックを考えておいて、明智をつかまえてしまうんだ。
ウフフフ……、なんと、うまい考えじゃないか。
そうして、日本一の名探偵と、名助手を、とりこにしてしまうんだ。
わしはどろぼうだが、人間を盗むのは、これがはじめてだ。
ウヘヘヘヘ……、わしは、こんなたのしいおもいをしたことは、いままでに、一度もないくらいだよ。
ウヘヘヘ……。
」
黄金怪人は、まるで、気でもくるったように、ぶきみな口を、パクパクさせて、笑いつづけるのでした。
小林少年の知恵
黄金怪人は、やっと、笑いやむと、しばらくだまっていましたが、じぶんの顔をにらみつけている小林君を、見かえして、しずかにたずねました。
「きみには、わしの魔法の種が、すっかりわかったかね?」
「うん、わかっている。
ぼくには、もう、なにもかも、わかっているよ。
」
小林少年は、自信ありげに答えました。
かわいい目が、キラキラ光っています。
「ほう、えらいもんだ。
それじゃ聞くがね。
わしは、なぜ井上とノロを、つかまえたんだろうね。
」
「それは、ふたりのかえだまを、つくるためさ。
」
「なぜ、かえだまを、つくったんだね。
」
「山下さんの蔵の中から、グーテンベルクの聖書を、盗むためさ。
」
「かんしん、かんしん、きみは、そこまで気がついたのか。
で、どうして、あの聖書を盗んだんだね。
」
「あのとき、ぼくと、山下君のおとうさんと、山下君のほかに、四人の少年探偵団員が、がんばっていた。
その四人の中に、にせものの井上君と、ノロちゃんが、まじっていたのだ。
そして、たぶん、にせの井上君が、黄金怪人にばけたんだ。
あの金色の衣装は、おりたためば、小さくなるにちがいない。
にせの井上君は、それを、きたり、ぬいだりして、みんなをごまかしたんだ。
」
「うん、そのとおりだ。
あのときに、つかった金の仮面や、よろいは、ビニールに金のこなをぬったもので、蔵の中のうす暗い電灯だから、ごまかせたんだよ。
にせの井上は、その金の衣装を、二くみ持っていた。
子どもの大きさのと、おとなの大きさのとね。
おとなの衣装には、足にタケウマのような棒がついていて、せいが高くなるんだ。
それを、電灯の消えているまにきかえて、うす暗い蔵のすみに立って、みんなを、おどかしたんだよ。
ぬいだときには小さくたたんで、本棚の大きな本のうしろにかくしておいたのだ。
あのとき、だれも本のうしろなど、さがさなかったからね。
黄金怪人は、煙のように消えうせてしまったとしか、考えられなかったのだよ。
」
「蔵の電灯を、消したり、つけたりしたのは、にせのノロちゃんのほうだね。
それから、電灯が消えているすきに、山下君のおとうさんの手から、聖書の桐の箱をうばいとったのも、にせのノロちゃんだったにちがいない。
」
「そのとおり。
だが、待ちたまえ。
あのときの黄金怪人は、おとなになったり、子どもになったり、ネズミぐらいの小さな姿になったりしたね。
あのときばかりじゃない。そのまえに、庭で山下少年の前にあらわれたときも、見ている前で、だんだん小さくなった。
そして、ネズミぐらいになって、井戸側をのぼって、古井戸の中へ、かくれてしまった。
あれは、どういうわけだね。
」
おそろしい魔法博士の黄金怪人が、まるで、先生が生徒に質問するように、やさしいことばをつかっています。
小林君の知恵に、感心してしまったかたちです。
それに、いくら、かしこくても、この地下室からは逃げだせるものじゃないと、安心していたからです。
この子どもはどのくらい知恵があるか、ためしてみようと、しているのです。
小林君のほうは、そんな、のんきなたちばではありません。
このにくい怪物の魔法の種をあばいて、あいてを、へこませてやろうという気持で、いっぱいでした。
「あの、山下君の庭に、あらわれたときは、もう、うす暗くなった、夕がただった。
だから、やっぱり、うまく動かせたのだ。
大きな木が、たくさん立ちならんでいた。
あのときの怪物、あれは、むろん、きみだよ。
きみばかりじゃない。
子どもの助手がいた。
それも、にせの井上とノロちゃんだったかもしれない。
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