思い切り大きな声を振り絞って、鳴子(鳥を追い払う音)の代わりになってみたら気も晴れるだろうと思いながら、空を仰いで深く息を吸い込みました。
「天晴(あっぱ)れだぞ!」
閣下が髭を撫でて私と一緒に空を仰いだ時、ふと、
「おお、これは素晴らしいぞ――森の彼方を見よ。人の声に恐れを忘れた敵が、再び姿を現したぞ!」
「ござんなれ(見てごらん)!」と叫びました。
なるほど、点のように見えた敵の影は、たちまち翼を広げて、あわや池の真上に差し掛かろうと、遠巻きに大きな輪を描いていました。「もしもお前のその声で、敵を追い払うことができたなら――」
「叔父様、つるべで水を汲む仕事は、どうか私から取り上げてください」
私はすぐにそうお願いしました。
「わかった。その仕事は私が代わろう」
「私が池のふちに姿を見せないときは、たとえどんな時に敵が現れても、決して私を呼び立てないでくださいね」
「二つだな。……よし、それは報酬として約束しよう」
「最後に、もう一つだけお約束をお願いします。黄昏時の警備を私に任せてください。そして、日記は私の自由な時間に書かせてほしいのです……」
「すべて賭けよう」
叔父様は銅像のように、私のそばで腕を組んで立っていました。
――その時、大胆な敵が池の真上まで迫ってきて、まるで人間がまねをするような声で「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」と鳴きました。
「……ッ!」
私は胸いっぱいに空気を吸い込むと、持てる力のすべてを振り絞って叫びました。しかし、なぜか私の声は笛のように細く、かすれてしまいました。
もちろん敵は平気な顔で、少し低い位置に翼の影を落としました。
「……アーツ!」
「カケスの鳴き声に似ているな」
叔父様は腕を組んだまま、つぶやきました。
――三度、四度と私は挑戦しましたが、体は震えるばかりで、声はちっとも届きそうにありませんでした。
「いっそ泣き出したほうが、効果があるかもしれないぞ」
「……アッ!」
突然、敵が身を翻したかと思うと、あっと言う間もなく見事な急降下で水面に飛び込みました。
そして、私が鉄砲の音をまねしようと口を開ける間もなく、敵はすでに中天高く舞い上がっていました。その爪先には、一匹の鯉が捕らえられ、空を泳いでいました。
「おい満里子、どうしたんだ。これくらいの失敗で泣き出すなんて、鵞鳥隊の大隊長らしくもないぞ!」
叔父様が驚いて、優しくなぐさめてくれればくれるほど、私は無性に悲しくなって、叔父様の胸に飛びついたまま、思いきり大声で泣き出してしまいました。
「やれやれ、これだけ大きな声が出るじゃないか。それだけの声が出せるなら、敵に獲物をさらわれることもなかったのになあ!……さっきの賭けは、私の負けにしておこう。泣くな、もう泣くな。満里子、残念だろうが泣くな、大隊長……」
叔父様の脇の下から向こうの空を見ると、獲物をつかんだトビが、勝利の歌を上げるかのように、ハヤブサのような勢いで森の向こうへ飛んでいきました。
五
その日の夕暮れ近く、突然やってきた兄様と、私は池のふちでこんな話を交わしていました。
「今夜こそは、ようやく手紙を書く時間ができたから、兄様と……」
「T様のことか? はっきり言えよ。ハハハハ。」
「そうよ。書こうと思って……」
「T様には、まず何と書くんだ?」
「『とても大きな声でトビを追い払う名人になったわ。神経衰弱なんて一息で吹き飛ばしてあげるから、すぐに遊びに来いよ』――まずはこう書こうかしら」
「そいつは名文句だな。ついでに『鵞鳥の鳴きまねも名人になったから』……と書いたらどうだい?」
「…………」
そういえば、さっき叔父様の胸で泣いてしまった時の私の声は、なんとなく鵞鳥に似ていた気がします。もしかして、叔父様が兄様にそんなことを告げたのではあるまいか? ……ふと、そんな馬鹿馬鹿しいことが心配になって、
「ねえお兄様、私の声って、本当に太くなったりしないわよね?」
えへん、えへん! と咳払いをして尋ねると、
「いや、家ではみんなで『お前がどんな顔をして鳥の世話をしているだろう、きっと鵞鳥みたいな情けない顔をして……』なんて笑っていたんだが、とんでもない。見違えるほど健康そうになって、実にもうハツラツとしているから羨ましくなったのさ。鵞鳥の声になんて決して似ていないから大丈夫だよ!」
兄様は、理由もなく嬉しそうに私の肩を叩いたり、ボールを投げるような格好で水上の鳥たちに餌を投げたりしました。
「来月になると、本当にキツネが出るんですって!」
「そいつは愉快だな。武田も俺も鉄砲には自信があるんだから、いくらでも射止めて、うんとお前の襟巻きを作ってやろうぜ」
「そんな襟巻き、御免だわ――出たとしても、精々一匹くらいのものよ」
「しかし出ると決まれば、一匹で済むはずはあるまいぜ」
兄様と私は、そんなとりとめもない冗談にはしゃぎながら、「いっそ手紙も面倒だから電報にしよう、武田へは――」と決め、腕を組んで歩き出しました。
すると、私の代わりにイタチの番人になった叔父様が、まだあたりは明るいというのに鳥小屋の前に現れて、
「満里子、懐中電灯はどこにあるんだ?」
と声をかけました。
「電灯もピストルも、そこの餌箱の上にありますわ」
「わしは電灯だけで十分なんだよ」
「キツネの番や、つるべの水汲みは、僕ともう一人の男が引き受けますよ、叔父様!」
「もう一人の男って誰だい? しかし、そいつは助かるぞ!」
私は、あの晩の日記のことを思い出して、
「T様っていうのが、その方よ」」と説明しかけましたが、言いそびれてそのまま駆け出しました。
振り返ると、私を追いかけて二羽の鵞鳥がよたよたとついてくるのを、遠くのほうから叔父様が何度も呼び戻していました。
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