「カラスは翼を痛めても、お医者さんに行って治すこともできないだろうし、どうしているんだろう? あんなに雨や風が激しい日には、どこでどうしているんだろう?」
太郎は、あのかわいそうなカラスのことを思わずにはいられませんでした。
彼はもう、そのカラスを永久に見ることはないだろうと思っていました。
だんだんと春めいてきました。吹く風も暖かくなりました。
ある日の夕方、太郎が外で遊んでいると、西の空は赤く色づいていました。
日は静かに沈み、雲の色も木立の影も、まるで何かに酔っているかのようにぼんやりと浮かんでいました。
ちょうどそのとき、カラスの群れが頭の上を飛んでいきました。
太郎がそれを見ると、なんと、いつかの翼を痛めていたカラスが、みんなと一緒に元気よく飛んでいるではありませんか。
それを見て、太郎はどれほど驚き、またうれしく思ったことでしょう。
「あ、あのカラスも、あんなによくなったんだ!」
太郎は手をたたいて喜びました。
「カア、カア」とカラスは鳴いて、西の赤い空の中へ、だんだんと小さくなりながら消えていきました。
この日から、この地上には新しい幸福が生まれたかのように感じられました。
そのときには、木々のつぼみはふくらみ、芽の先は色づいていました。
もう冬はどこかへ逃げていき、春がやってきたのです。
そのころから夕方になると、カラスが東の空から西へと飛んでいくのと同時に、南の空からは北へ向かって、真っ白なカモメの群れが列を作って飛んでいくのを見かけるようになりました。
カモメは、寒い寒い場所を恋しがって旅を続けていたのでした。
一度村の上を北へと過ぎていったカモメは二度と帰ってきませんでしたが、カラスの群れはやはり、次の日もまた、太郎の頭の上を通っていくのでした。
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