初級翻訳・虫喰い算大会 第6話

海野 十三

「先はまだまだ遠いなあ……」と、思わずため息が出そうになるね。
でも、気を取り直して次のステップに進もう!
2段目にある、割る数の十の位の数字は「2」以下でなければならないんだ。
つまり、「2」か「1」か「0」のどれかだね。
なぜかって? もし5段目の左端が「7」か「8」じゃなかったら(これが「6」以下だと6段目の左端が「1」にならないし、逆に「9」だと「0」になってしまうから、そんなのおかしいよね)、割る数の十の位が「2」「1」「0」以外では、5段目の左端が「7」や「8」にならないからなんだ。
ところが、もっとよく考えてみると、「0」なのはやっぱりおかしいので、「2」か「1」のどちらかにしぼられるんだよ。
なぜなら、もし「0」だとしたら、割る数は「10□」ということになるよね。これに答えの万の位の数字である「8」や「9」をかけようものなら、どちらも三桁の数にしかならなくて、3段目や9段目に書いてあるような四桁の数にはならないからなんだ。
次に、答えの百の位の数字は「8」だとわかるんだ。
なぜなら、割る数はさきほど追い詰めたとおり「12□」か「11□」のどちらかだけど、もしここに百の位の数字を「7」と仮定してかけてしまうと「84」や「77」になってしまうんだ。そうすると、6段目の四桁目である「1□□□」からそれを引き算したとき、その残りが8段目の左端の「1」のようにはるか下(二桁も下)まで降りてくるなんてことは、計算上あり得ないからなんだよ。
ここは絶対に「8」でなければ成り立たないんだ!
答えの百の位の数が「8」だと決まったなら、答えの万の位の数と一の位の数は、どちらも「9」でなければならないね。
そのわけは、百の位ですら「8」で三桁になるんだ。
それなのに、万の位も一の位もどちらも四桁になっているということは、これはもう「9」にするしかないからなんだよ。
これで、答えの数字はすべてハッキリとわかったぞ!
つまり、□7□□□という数字は「97809」だと決まったんだ。
さらに、7段目の左端も「9」になるんだよ。
なぜなら、もしここを「8」だとすると、その下に何か数字が余るはずなんだ。でも、実際にはこの下には何も余っていない(ぴったり割り切れている)のだから、「9」にするしかないんだね。
ここまでの計算結果を書き入れてみると、次のようになるよ。

97809
   _________
1□□)□□□□□□□□
 ↑  1□□□
 2 ―――――――――
 又    □□□
 は    □□□
 1    ――――――
      1□□□
       9□□
      ――――――
        1□□□
        1□□□
        ――――
           0

 さあ、もうあと一息だ!
割る数の十の位の数は「2」か「1」のどちらかであると、もうすでに追い詰めてあるよね。
この問題を片づけるのは、比較的カンタンだよ。
これまでの推理の流れから考えると、「1」であるよりも「2」である方が、ずっとありそうだし有力なんだ。
そこで、これを思い切って「2」だと仮定してみよう。
そうすると、割る数は「12□」という形になるね。
そうなると、割る数の一位の数は、「4」か、あるいは「4よりも小さい数」でなければならないことになるんだ。
なぜなら、7段目の計算を見てみると、124×8=992 であって、これがもし「5」以上になると 125×8=1000 となって四桁になってしまうからなんだ。
だけど、7段目は三桁の数でなければならない。だから、割る数の一位の数は「4」、または「4よりも小さい数字」でなければならないんだよ。
ここで「4」だと仮定してみると、割る数は「124」になるね。
これと、さきほど判明した答えの「97809」を使って、実際にこの計算をやってみると、右のようになるんだ。

97809
   _________
124)□□□□□□□□
    1116
   ―――――――――
      □□□
      868
      ――――――
      1□□□
       992
      ――――――
        1□□□
        1116
        ――――
           0

 このあとは、逆に上から数字をたどっていけば、穴の中はすべて数字で埋めることができるんだ。その結果は、どこにも矛盾や不都合がなくて、下のようになるよ。
これが正真正銘の答えだ!
やれやれ、すっごく頭を使って骨が折れたね。

97809
   _________
124)12128316
    1116
   ―――――――――
      968
      868
      ――――――
      1003
       992
      ――――――
        1116
        1116
        ――――
           0

 解き方は、なにもこの方法一筋に限るわけではなくて、もっとスマートな別の方法があってもいいはずさ。みんなもぜひ、自分なりのやり方をよく考えてみてほしいな!
このへんで、例題の解説はひとまずおしまいとしよう。

4 “虫喰い算”大会について

いよいよここから、お待ちかねの「“虫喰い算”大会」を開催するよ!第一会場から第三十会場まである。
一会場につき、いずれも四題ぐらいずつが掲げてある。
じっくりとぶつかって、推理の力により答を出して頂きたい。
空白の頁は、こまかい計算をしたり、またやり直すのに便利なために明けておいた。
一日に一会場以上は進まない方がよろしいと思う。
どんどん通ってしまっては、頭も痛くなるであろうし、珠玉のような虫喰い算の味が十分は味えないと思う。
四問題のうち、初めの二問題か三問題は比較的やさしいが、後に出て来るものは大分むつかしくなっている。
また最初のうちの会場は、わりあい楽であるが、会場が進むにつれて、だんだんむつかしくなって来る。
第二十会場あたりからあとは、相当に骨が折れて頭から湯気を出されることと思う。
その代り十分骨折り甲斐のある虫喰い算の魅力を満喫せられることであろう。
なお、これらの答は、わざとつけてない。
答を繰ってみて、「ははあ、なんだこの□は9か」などとやられては、虫喰い算の妙味はなくなってしまう。
もしやり方に詰ったら、その前の例題を復習して、虫喰い算の解き方のこつを会得せられ、それからもう一度問題と取組んでいただきたい。
第一会場をパスすれば、第一階選士となられる。
かくてどんどん進んで、第三十会場をパスすれば、当然第三十階選士として最高の名誉を獲得せられるわけで、メダルでも出したいところであるが、あいにく手許にないのは遺憾である。
第三十階選士になったからといって、この虫喰い算の書はつまらないものと化したわけではない。
また改めてもう一度第一会場からくりかえしてみられると、また新なる感興を覚えられるであろう。
虫喰い算は、一度や二度解いたから、そのあとはもう興味索然とするような、そんな薄っぺらなものではない。

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