「ほろびのほのお 湧きいでて
つちとひととを つつめども
こはやすらけき くににして
ひかりのひとら みちみてり
ひかりにみてるあめつちは
…………………」
急にその声がどこか別の世界にいってしまったかのように、すっかり聞こえなくなってしまいました。
そしていつの間にか、十力の金剛石は丘いっぱいに降りそそいでいました。
そのすべての花も、葉も、茎も、今はみな目を覚ますほど見違えるように立派に変わっていました。
青い空からは、かすかではかない音楽の響き、光の波、香り高く清らかなにおい、透き通った風の褒め言葉が、丘のすみずみまで降り注ぎました。
なぜなら、スズランの葉は今や本物の、柔らかくうすぼんやりと光る緑色の草になっていたからです。
ウメバチソウは、飾り気のない本物の美しい花びらを持っていました。
そして十力の金剛石は、野バラの赤い実の中の、もっとも神秘的で大切な細胞の一つ一つにまで満ちわたっていったのです。
その十力の金剛石、それこそが「露」でした。
ああ、そして、そして――十力の金剛石は、ただの露ではなかったのでした。青い空、かがやく太陽、丘を吹き抜けていく風、花たちのいい香りのする花びらやしべ、草のしなやかな体、これらすべてをしっかりと乗せて支えている丘や野原、王子たちのビロードの上着や、涙でキラキラとかがやく瞳、そのすべてが、すべてが「十力の金剛石(じゅうりきのこんごうせき)」だったのです。
あの、十力の大宝珠(だいほうじゅ)だったのです。
あの、十力の尊い仏舎利(しゃり)だったのです。
その「十力」とは、いったい誰のことなのでしょうか。
わたしは、やっとその名前を聞いたばかりです。
ふたりの王子様もまた、その名前をやっと耳にしたところでした。
けれども、この若き鷹(たか)のように誇らしく若いふたりが、つつましく草の上にひざまずき、指をきゅっと膝の上で組んでいたのは、いったいどうしてだったのでしょう。
さて、この光の底にある静かな林の向こうから、ふたりを探す家来たちの声が聞こえてきました。
「王子様、王子様。
こちらにおいででございますか。
こちらにおいででございますか。
王子様――!」
ふたりはスッと立ちあがりました。
「おおい、ここだよ!」と、王子様は叫ぼうとしましたが、声がかすれて出ませんでした。
ふたりは、かがやく黒い瞳を青空から林のほうへと向け、しずかに丘を下っていきました。
林の中から家来たちが飛び出してきて、うれしそうに笑いながらこちらへ走ってきました。
王子様も声をあげて駆け出そうとしましたが、一本のサルトリイバラが突然小さな青いトゲを出して、王子様の足をひっかけてしまいました。
王子様はかがみこみ、そっとそれをはずしました。
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