男はさっさと歩いて行き、笛の音はますます高く響き渡ります。子供たちはぞろぞろとその後を追っていきます。
けれど、あぶない! やれあぶないぞ! 目の前には、あの大きなウェーゼル川が流れているのです。市長も議員も、まるで牛のように立ちすくみ、黙り込んでただハラハラと、どうなることかと見ているばかりです。
ところが男は、川岸まで来ると、ふと西を向いて川沿いに歩き出しました。
『だが向こうには大きな山がある。コッペルベルヒというその山は、険しい道だから、いくらなんでも子供たちにはついて来られないだろう』
市長たちは「まずまずこれで安心だ」とホッと息をつきました。
けれど不思議なことが起こりました。子供たちが山のふもとにたどり着いたとき、サッと山が二つに割れたのです。笛吹き男も、踊りながらついてきた子供たちも、ずんずんとその中へなだれ込んでいきました。みんなの姿が隠れると、割れ目はピタリと閉じて、元の山に戻ってしまいました。
ただ一人、足の不自由な子供だけが、みんなの後を追いかけていたものの、山が閉じてしまったので取り残されてしまいました。その子は町へ帰りましたが、いつもなんだか寂しそうでした。
どうしてそんなに元気がないのか、ふさいでいるのかと尋ねると、子供はいつもこう言いました。
「笛吹き男が連れて行った、約束の国へ行けずに残されてしまったんだ。それが悲しくて、情けなくて……。だってこの世では見られない、本当に楽しくて素敵な国なんだもの。そこは綺麗な天国で、花は枯れずに咲き続け、鳥はほがらかに歌を歌う。しかも一年中ずっと良い天気で、ぽかぽかとして春のようだったよ」
町の人たちは、あとに残されて、ひどく哀れな状態でした。どうにかして子供たちを取り戻そうと、みんなで必死に知恵を絞りましたが、影も形も行方は知れず、泣いても悔やんでもどうにもなりません。
これは全く、親たちが約束を破ったことへの見せしめでした。けれど子供たちに罪はありません。だからこそ、楽しい天国へ子供たちだけが行ったのです。
そのことに気づいた親たちは、すっかり心を入れ替えました。笛吹き男の話を石に刻んで後世に残し、罪滅ぼしをしたということです。
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