何かご用でございますか?」
ホモイはできるだけ威勢よく言いました。
「お前は今まで僕をずいぶんいじめたな。これからは僕の家来だぞ!」
キツネは気絶しそうになりながら、頭に手を当てて答えました。
「へい、申し訳ございません。どうかお許しください!」
ホモイはうれしくてワクワクしました。
「特別に許してやろう。お前を少尉にしてやる。よく働くんだぞ」
キツネは喜んで四回ほどくるくると回りました。
「へい、へい! ありがとう存じます。どんなことでもいたします!」「少しとうもろこしでも盗んできましょうか?」
キツネが言いました。
「いや、それは悪いことだ。そんなことをしてはいけないよ」
キツネは頭をかきながら言いました。
「へい、へい。これからは決していたしません。どんな命令でもお待ちしております」
ホモイは言いました。
「そうだ。用があったら呼ぶから、あっちへ行って待っていなさい」
キツネはくるくると回っておじぎをすると、向こうへ行ってしまいました。
ホモイはうれしくてたまりません。野原を行ったり来たりしながら独り言を言ったり、笑ったりして、いろいろ楽しいことを考えているうちに、もうお日様が砕けた鏡のようにカバノキの向こうへ沈んでしまいました。ホモイも急いでおうちに帰りました。
ウサギのお父さんももう帰っていて、その晩はたくさんのごちそうがありました。ホモイはその晩も美しい夢を見ました。
次の日、ホモイはお母さんに言いつけられてザルを持って野原に出ました。スズランの実を集めながら、独り言を言いました。
「ふん、大将がスズランの実を集めるなんておかしいや。誰かに見つかったらきっと笑われるだけだ。キツネが来るといいんだけどなあ」
すると、足の下がなんだかもくもくと動きました。見るとモグラが土を掘って、向こうへ行こうとしています。ホモイは叫びました。
「モグラ、モグラ、モグラもち! お前は僕が偉くなったことを知っているかい?」
モグラが土の中で言いました。
「ホモイさまでいらっしゃいますか。よく存じております」
ホモイは大いばりで言いました。
「そうか。それならいい。僕、お前を軍曹にしてやるよ。そのかわり、少し働いてくれないか?」
モグラはびくびくしながら尋ねました。
「へい、どのようなことでございましょうか」
ホモイがいきなり、
「スズランの実を集めてくれ」と言いました。
モグラは土の中で冷や汗をたらして頭をかきながら、
「さあ、まことに恐れ入りますが、私は明るいところの仕事はまったく苦手でして」と言いました。
ホモイは怒ってしまって、
「そうか。それならいいよ。頼まないから。あとで見ていろよ。ひどい目にあうからな」と叫びました。
モグラは、
「どうかご勘弁を。私は長くお日様を見ると死んでしまいますので」としきりにおわびをします。
ホモイは足をバタバタさせて、
「いいよ。もういいよ。黙っていろ!」と言いました。
その時、向こうのニワトコの陰からリスが五匹、ちょろちょろと出てきました。そしてホモイの前にぴょこぴょこ頭を下げて言いました。
「ホモイさま、どうか私どもにスズランの実をお採らせくださいませ」
ホモイが、
「いいとも。さあやってくれ。お前たちはみんな僕の少将だ」と言うと、
リスたちは「きゃっきゃっ」と喜んで仕事にかかりました。
この時、向こうから仔馬が六匹走って来てホモイの前に止まりました。その中のいちばん大きなのが、
「ホモイさま。私どもにも何か命令をください」と言いました。
ホモイはすっかり喜んで、
「いいとも。お前たちはみんな僕の大佐にする。僕が呼んだら、きっと駆けつけておくれ」と言いました。
仔馬たちも喜んで跳ね上がりました。
モグラが土の中で泣きながら言いました。
「ホモイさま、どうか私にもできるようなことを言いつけてください。きっと立派にやってみせますから」
ホモイはまだ怒っていたので、
「お前なんかいらないよ。今にキツネが来たら、お前たちの仲間をみんなひどい目にあわしてやるからな。見ていろよ」と足踏みをして言いました。
土の中はひっそりとして、声もなくなりました。
それからリスたちは、夕方までにスズランの実をたくさん集めて、大騒ぎをしながらホモイの家へ運びました。
お母さんがその騒ぎにびっくりして外に出て見て、言いました。
「おや、どうしたの、リスさん」
ホモイが横から口を出して、
「お母さん。僕の腕前をごらんよ。まだまだ僕はどんなことだってできるんだから」と言いました。
ウサギのお母さんは返事もせず、黙って考えておりました。
するとちょうどウサギのお父さんが戻って来て、その様子をじっと見てから言いました。
「ホモイ、お前は少し熱があるんじゃないか? モグラをひどくおどしたそうだな。モグラの家では、もうみんな気が狂ったみたいに泣いているよ。それに、こんなにたくさんの実を、一体誰が食べるんだ?」
ホモイは泣き出しました。
リスたちはしばらく気の毒そうに立って見ておりましたが、とうとうこそこそとみんな逃げてしまいました。
ウサギのお父さんがまた言いました。
「お前はもうだめだ。貝の火を見てごらん。きっと曇ってしまっているはずだ」
ウサギのお母さんまでが泣き出して、前掛けで涙をそっとぬぐいながら、あの美しい玉が入ったメノウの箱を戸棚から取り出しました。
ウサギのお父さんは箱を受け取ってフタを開き、驚きました。その珠は、一昨日の晩よりもずっと赤く、もっともっと速いスピードで燃えていました。
みんなは、うっとりとその光に見とれてしまいました。
ウサギのお父さんは何も言わずに珠をホモイに渡すと、そのままご飯を食べ始めました。
ホモイもいつの間にか涙が乾いて、みんなでまた気持ちよく笑いながら、いっしょにご飯を食べて休みました。
*
次の日の朝早く、ホモイはまた野原に出かけました。
今日もとても良いお天気です。
けれども、実を全部とられてしまったスズランは、もう前のように「しゃりん、しゃりん」と葉を鳴らしてはくれませんでした。
向こうの方の青い野原のはずれから、キツネが一生懸命に走ってきて、ホモイの前でピタッと止まりました。
「ホモイさん。昨日、リスにスズランの実を集めさせたそうですね。どうです、今日は私がいいものを見つけてきてあげましょう。それは黄色くて、もくもくしていて……失礼ですがホモイさん、あなたもまだ見たことがないようなやつですよ。それから、昨日モグラに罰を与えるとおっしゃったそうですね。あいつはもともと横着ですから、川の中にでも追い込んでやりましょう」とキツネは言いました。
ホモイは言いました。
「モグラは許してあげておくれ。僕、もう今朝許してやったんだ。……だけど、そのおいしい食べ物は少し持ってきてごらん」
「合点、合点! 十分間だけお待ちください。十分間ですよ!」
そう言うと、キツネはまるで風のように走っていきました。
ホモイはその場で高く叫びました。
「モグラ、モグラ、モグラもち! もうお前を許してあげるよ。だから泣かなくてもいいよ」
土の中は、しんとして静まり返っていました。
やがてキツネがまた向こうから走ってきました。
「さあ、お召し上がりください。
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