あめくん
村山籌子
「シト シト シト シト」
と、小さな音を立てて、あめくんがやってきました。
「スル スル スル」
と自動車が走ってきましたが、あめくんに出会うと、すっかり濡れてしまいました。
「パカ パカ パカ」
とお馬が駆けてきましたが、やっぱりあめくんに出会うと、びっしょりと濡れてしまいました。
「おもしろい、おもしろい」
と、あめくんは大よろこび。こんどは少し大きな音で降りはじめました。
「ビチャ ビチャ ビチャ ビチャ」
すると今度は、男の子が雨がっぱを着て、傘をさしてやってきました。
あめくんは、傘と雨がっぱのせいで、どうしてもその男の子を濡らすことができません。
「ザア ザア ザア」
怒ったあめくんは、力いっぱい降りましたが、男の子は平気な顔で歩いていきます。
「ザア ザア ザア」
あめくんが後をついていくと、男の子はお家の中へ入ってしまいました。
「おかあさん、ひどい雨ですよ」
と、男の子の声が聞こえました。
「ピチャリ ピチャリ ピチャリ」
と、あめくんはガラス窓をたたきました。
雨がっぱを脱いだ男の子と小さな女の子が、ガラス窓のところへやってきて言いました。
「あめくん、こんにちは」
怒っているあめくんは返事をしないで、ただガラス窓をたたきました。
「ピチャリ ピチャリ ピチャリ」
「こんにちは。ご苦労さま。きみはどこからきたの?」
と、男の子が言いました。
「遠い西の方から。ピチャリ ピチャリ」
と、あめくんが答えました。
「ごきげんよう。おやすみなさい」
と、小さな女の子が言いました。
あめくんは機嫌がなおったので、
「おやすみ」
と言って、屋根の上で朝まで、
「シト シト ピチャ ピチャ」
と静かに歌をうたって、朝になると遠い東の方へ行ってしまいました。
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