初級翻訳・あひるさん と 時計 第1話

あひるさん と 時計

なんでもかんでも、まわりの人たちの真似をしたがる、小さなあひるさんがいました。
まだ子どもだったので、しかたがありませんけれど、大きなあひるさんたちが時計を持っているのを見て、自分も欲しくてたまりません。
あひるさんは、お父さんにお願いしました。
「お父さん、時計を買ってください」
お父さんは言いました。
「もっと大きくなったらね」
あひるさんは、すぐに、おばあさんのところへ行きました。
「おばあさん、僕に時計を買ってください」
おばあさんは、あひるさんの顔をよく見てから言いました。
「お前はまだ小さいから、大きくなったら買おうね」
あひるさんは、涙が出てきました。
地団駄(じだんだ)を踏んでくやしがろうと思いましたが、すぐに思い直して、大きなどこでも見かける虫めがねをおばあさんに手渡し、こう言いました。
「おばあさんは目が悪いんだから、これでよく見てよ。僕なんて、とっても大きんだからさ」
おばあさんは、その虫めがねをかけてあひるさんを見直しました。すると、あひるさんはまるで大人のお父さんのように大きく見えました。
おばあさんは「なるほどねえ」と思って、お財布からお金を出して、あひるさんにあげました。
あひるさんはそれを受け取って、時計屋さんへ行きました。
ところが、あひるの時計屋さんの品物は、人間たちが使い古した時計ばかりで、新しい時計なんてひとつも置いてないのです。
それもそのはず、あひるの職人さんたちに、時計のあのややこしいぜんまいや細かい機械が作れると思いますか?
あひるさんは何も分からなかったので、よりによって一番ピカピカ光るものを買いました。
ニッケルでできていて、人間界の値段でいうなら二円五十銭ほどの品物で、振るとガタガタと音がする、とんでもない代物(しろもの)でした。
それでも、あひるさんは大よろこびで、ポケットから時々取り出しては眺めてうっとりしていました。
そんなある日、七面鳥さんから手紙が届きました。
「お天気がいいから旅行に行こうよ。僕たちはまだ子どもだけど、あちこちを旅していろんなことを勉強しなくちゃいけないんだ。あひる君、絶対に遊びに来てね。僕たち二年生はみんな行くんだよ。明日の朝、ぴったり七時に鳥山駅を出発だからね」
あひるさんは鳥ですから、生まれつき旅行が大好きです。その夜はうれしすぎて、ちっとも眠れませんでした。
朝なんて、三時ごろから起きて、自分の時計とにらめっこをしていました。
七時前になったので、飛ぶようにして駅へかけつけました。
ところが、あ、あ、汽車はとうに出発していて、後に残っているのは白い煙ばかりです。
あひるさんは自分の時計を出して、駅の正しい時計と比べてみました。なんと、三十分も遅れていたのです。
「なんて時計なんだ!」とあひるさんは泣きましたが、もうどうしようもありませんでした。

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