初級翻訳・みにくいアヒルの子 第2話

みにくいアヒルの子

きれいで素敵じゃないの。あれはね、わたしたちアヒルがもらうことのできる、いちばん立派な勲章なんだよ! あれをつけているのはね、あの人がいなくならないようにという理由と、動物からも人間からも、すぐにわかるようにというためなんだよ。――さあ、さあ、急いで! 足を内側へ向けるんじゃありませんよ。お行儀のいいアヒルの子は、足をぐっと外側へ開くものなんですよ。そら、お父さんや、お母さんを見てごらん。いいかい、こんなふうにするのよ。さあ、今度は首を曲げて、ガー、と言ってごらん」

そこで子供たちはみんな、言われたとおりにしました。
ほかのアヒルたちがまわりに集まってきて、みんなをじろじろ眺めながら、大きな声で言いました。
「おい、見ろよ。またチビがうんとこさやってきたぞ! おれたちだけじゃ、まだ足りないっていうみたいだ。チェッ、あのアヒルの子は、ありゃあなんてやつだ。あんなのはごめんだぜ」
するとすぐに、一羽のアヒルが飛んできて、その子の首筋にかみつきました。
「ほっといてちょうだい」とお母さんアヒルは言いました。
「この子はなにも悪いことはしていないじゃないの」
「うん。だけどこいつ、あんまり大きくて変てこなもの」とかみついたアヒルが言いました。
「だから、追い払っちゃうんだ」
「かわいい子供さんたちだねえ、お母さん!」と、足に赤い布をつけているおばあさんのアヒルが言いました。
「みんなかわいい子供たちだよ。でも、一羽だけは別だがね。かわいそうに。作り変えることができたらいいのにねえ!」
「そうはまいりませんわ、奥さま!」とお母さんアヒルは言いました。
「この子はかわいらしくはありませんが、でも気だては大変よいのでございます」それに、泳ぐことも、ほかの子供たちと同じようにできます。
いいえ、それどころか、少し上手なくらいでございますわ。
大きくなれば、もう少し見た目もきれいになるでしょうし、時がたてば、体つきも引き締まってくるはずです。
きっと、卵の中にあまりに長くいたせいで、こんな変わった形になってしまったのでしょう」こう言って、お母さんはその子の首筋をつついて、羽をきれいに整えてやりました。
「それに、この子は男の子なんですもの」とお母さんアヒルは言いました。
「ですから、格好が悪いなんてことは、どうでもいいことだと思いますわ。
きっと、立派で強い体になって、元気に生きていってくれるだろうと信じています」
「ほかの子たちは、本当に可愛いね」とおばあさんアヒルは言いました。
「さあ、さあ、みんな。
自分の家にいるようなつもりで、ゆっくりしていっておくれ。
それから、おまえさんたち、ウナギの頭を見つけたら、わたしのところへ持ってきておくれよ。
いいかね」――
こう言われたものですから、みんなは自分の家にいるような、リラックスした気持ちになりました。
けれども、一番最後に卵から出てきた、みにくい格好のアヒルの子だけは、かわいそうに、アヒルの仲間たちばかりか、ニワトリたちからも、かみつかれたり、つつかれたり、ばかにされたりしました。
「こいつ、でかすぎるぞ!」と、みんなが口をそろえて言うのです。
なかでも、シチメンチョウは、生まれつき蹴爪(けづめ)を持っていたので、まるで皇帝のようなつもりで威張っていましたが、それだけに、このアヒルの子を見ると、帆に風をいっぱい受けた船のように、体をぷうっと膨らませて、つかつかと近寄ってきました。
そして、のどをゴロゴロ鳴らしながら、顔を真っ赤にしたのです。
これを見ると、かわいそうなアヒルの子は、もうどうしたらよいのか分からなくなりました。
自分の姿がひどくみにくいせいで、みんなからここまで馬鹿にされるのが、なんとも言えないほど悲しくなりました。
最初の日はこんなふうにして過ぎましたが、それからは、だんだん悪くなるばかりです。
かわいそうなアヒルの子は、みんなに追いかけられました。
兄さんや姉さんたちさえも、優しくしてくれるどころか、かえって意地悪をして、いつもこう言うのでした。
「おい、みっともないやつ。
おまえなんか、ネコにでもつかまってしまえばいいんだ!」
お母さんさえも、「おまえさえ、どこか遠いところへ行ってくれたらねえ!」と言いました。
ほかのアヒルたちにはかみつかれ、ニワトリたちにはつつき回されました。
鳥にエサをやりにくる娘からは、足でけとばされました。
とうとう、アヒルの子は逃げ出して、生け垣を飛び越えました。
すると、やぶの中にいた小鳥たちが、びっくりしてパッと舞い上がりました。
「ああ、これも、ぼくがみっともないからなんだなあ!」と、アヒルの子は思って、ぎゅっと目をつぶりました。
けれども、そのままどんどん先へ走っていきました。
やがて、野ガモの住んでいる、大きな沼地に出ました。
アヒルの子は、ここで一晩寝ることにしました。
だって、ここまできたらもうすっかりくたびれ果てていましたし、それに、悲しくてたまらなかったのですもの。
朝になると、野ガモたちは飛び立って、新しい仲間を見つけました。
「きみは、いったい何者だい?」と、みんなは尋ねました。
アヒルの子は、あっちへもこっちへも、できるだけ丁寧にお辞儀をしました。
「きみはまた、恐ろしくみっともない格好をしているな」と、野ガモたちは言いました。
「でも、そんなことはどうだっていいや。
ぼくたちの家族の者と結婚さえしなけりゃ、それでいいんだ」
かわいそうなアヒルの子は、結婚なんて夢にも思ってみたことがありません! それどころか、ただアシの間に休ませてもらって、沼の水をほんの少し飲ませてもらえれば、それだけで十分だったのです。
アヒルの子は、そこに二日の間いました。
すると、そこへオスのガンが二羽、飛んできました。
このガンは卵から出てまだ日が浅かったので、少し無鉄砲すぎました。
「おい、きみ!」と、ガンは言いました。
「きみはなんて、みっともない格好をしているんだ! だけど、ぼくは、そのみっともないところが気に入ったよ。
どうだい、いっしょに行って、渡り鳥にならないかい? 実は、この近くのもう一つの沼に、きれいな、かわいい女のガンが二、三羽住んでいるんだ。
もちろん、みんなお嬢さんさ。
ガー、ガー、って、上手に会話を楽しむこともできるんだよ。きみがどんなに格好悪くたって、そこへ行けば幸せになれるんだからさ」――

そのとき、「ドーン、ドーン!」と空で鉄砲の音が鳴り響きました。とたんに、二羽のガンはアシの茂みの中へ真っ逆さまに落ちて、命を落としました。沼の水は、血の色で真っ赤に染まりました。

「ドーン、ドーン!」と、またしても鉄砲の音が聞こえます。すると、ガンの群れがアシの中から一斉に飛び立ちました。続いて、また銃声が轟きます。大規模な猟が始まったのです。

猟師たちは沼の周りをぐるりと囲んでいました。いや、中にはもっと近くまでやってきて、アシの上に伸びている木の枝に腰を下ろしている者さえ二、三人いました。青い煙が雲のように薄暗い木々の間をぬけて、遠く水面までたなびいていました。

猟犬たちが沼の中へ、バシャッ、バシャッと飛び込んできました。アシが左右に激しく揺れ動きます。

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