ちっぽけで、みにくい魔物みたいなやつらが寝床のはしにすわって、熱いお湯をおれたちにひっかけてくるんだ。
どうか、ここへ来てそいつらを追っぱらってくれよ!
ぐっすり眠れるようにさ!』ってね。こう言って、深いため息をつくんだよ。
そしてまた、『お礼はよろこんでするよ。
それじゃ、おやすみなさい、オーレさん! お金は窓のところに置いてあるからね』って言うのさ。
でも、わたしは、お金がほしくてそんなことをしているわけじゃないんだよ」と、オーレ・ルゲイエは言いました。
「今夜は、どんなことをするの?」と、ヤルマールはききました。
「そうだな、どうだい、今夜ももう一度、結婚式へ行く気はあるかい? きのうのとは、もちろんちがうやつだけどね。
おまえのねえさんは、ヘルマンっていう、男みたいな顔をした大きな人形を持っているだろう?
あれが、ベルタという名前の人形と結婚することになっているんだよ。
それに、きょうはこの人形の誕生日でもあるから、お祝いの贈り物も、きっとうんとたくさんもらえるはずさ」
「うん、それならぼくもよく知ってるよ!」と、ヤルマールは言いました。
「人形たちに新しい着物がほしくなると、ねえさんはいつも、誕生日のお祝いか結婚式をさせるんだ。
きっと、もう百回ぐらいはやってるよ」
「そうなんだよ。
今夜が、なんと百一回めの結婚式なのさ。
でもね、この百一回目がすんだら、それで人形たちの結婚式はみんなおしまいになってしまうんだ。
だから、今夜のはとくべつすばらしいものになるはずだよ。
さあ、見てごらん!」
そう言われてヤルマールがテーブルの上を見ると、そこには小さな紙の家が立っていて、どの窓にもピカピカと明りがともっていました。
そして、その家の前では、すずの兵隊さんたちがみんな、ピシッと銃をかまえて並んでいました。
花嫁と花婿は床にすわり、テーブルの足によりかかりながら、なんだか物思いにふけっていました。
もちろん、それにはそれだけのちゃんとしたわけがあったのです。
オーレ・ルゲイエはおばあさんの黒いスカートを身につけ、お坊さんの代わりに結婚式をとり行いました。
式が終わると、部屋じゅうの家具という家具がみんなで声をそろえて、鉛筆で作った美しい歌をうたいました。
その歌は、兵隊さんが兵舎に帰るときに吹くラッパのメロディでした。
歌えや、歌え! この喜び、
われら歌わん、ふたりのために!
見よや、見よ! 顔こわばらせ、楽しげに、
中に立つは、われらの革人形!
ばんざい! ばんざい! 革人形!
われら歌わん、声高らかに!
それから、ふたりはたくさんの贈り物をもらいました。
でも、食べ物の贈り物はみんなことわりました。
だってふたりは、おたがいの愛だけで、もうおなかがいっぱいだったのですから。
「ところでぼくたちは、いなかに住むことにしようか、それとも外国へでも旅行しようか?」と、花婿がたずねました。
そして、あちこちたくさん旅行をしているツバメと、五度もヒナをかえしたことのある年よりのメンドリに相談してみました。
するとツバメは、美しくあたたかい国のことについて話してくれました。
そこでは大きなブドウの房が重たそうにたれさがっていて、気候はじつにおだやかで、山々はここではとうてい見られないようなすばらしい色をしているんだよと。
「でもね、そこには、わたしたちのところにあるような、青キャベツはないでしょう?」と、メンドリが言いました。
「わたしは子供たちといっしょに、いなかで一夏をすごしたことがあるんだけれどね。
そこには砂利取り場があって、わたしたちはその中を歩きまわって土をかきまわしたものですよ。
それから、青キャベツの畑にはいることもゆるしてもらえましたよ。
ああ、ほんとに葉っぱが青々としていましたっけ。
あそこよりいいところなんて、わたしにはとても考えられませんわ!」
「だけど、キャベツなんて、どこのだって同じようなものじゃないですか」と、ツバメは言いました。
「おまけにここは、ときどきものすごくひどい天気になるじゃありませんか!」
「そうですね、でもそんなお天気には、みんなもう慣れてしまいましたよ」と、メンドリは言いました。
「でもここは寒くって、氷もはるじゃありませんか!」
「そのほうが、キャベツにとってはいいんですよ」と、メンドリは言いました。
「それに、ここだって暖かくなることだってありますわ」四年前のことですがね、夏が五週間もつづいたんですよ。あのときは、暑くて暑くて、それこそ、息をするのもやっとでしたわ! それからここには、暑い国にいるような、毒をもった動物がいませんよ。どろぼうの心配もありません。この国をどこよりも美しい国だと思わないような人は、わるい人です! そんな人は、この国にいる、ねうちがありません!」
こう言うと、メンドリは泣きだしました。
「わたしだって、旅行をしたことはありますよ。かごにはいって、十二マイル以上も旅をしてきたんですからね。でも旅行なんて、ちっとも楽しいものじゃありませんわ!」
「そうだわ。ニワトリの奥さんのおっしゃとおりよ」と、人形のベルタは言いました。
「あたし、山の旅行なんていやだわ! だって、登ったり、下りたりするだけなんですもの。ねえ、あたしたちも、砂利取り場の近くへ行きましょうよ。そうして、キャベツ畑を散歩しましょうね」
そして、そのとおりになりました。
土曜日
「さあ、お話してね」
ヤルマールは、オーレ・ルゲイエに寝床へ連れていってもらうと、すぐに、こう言いました。
「今夜は、お話しているひまがないんだよ」
オーレはこう言って、見るも美しいこうもりがさを、ヤルマールの上にひろげました。
「まあ、この中国人をごらん」
見ると、こうもりがさは、全体が大きな中国のお皿のようで、それには青い木々や、とがった橋の絵が、かいてありました。その橋の上に、小さな中国人が立っていて、こちらにむかってうなずいていました。
「わたしたちは、あしたの朝までに、世界じゅうをきれいにしておかなければならないんだよ」と、オーレは言いました。
「あしたは日曜日で、神聖な日だからね。わたしは、これから教会の塔へ行って、教会のこびとの妖精が鐘をみがいて、いい音がでるようにしておいたかどうかを見なければならないし、畑へも行って、風が草や木の葉から、ほこりを吹きはらってくれたかどうかも見なければならないんだよ。でも、いちばん大事な仕事は、空の星をみんな下ろして、みがくことだよ。わたしは、それを前掛けに入れて、持ってくるんだがね、その前に、一つ一つの星に、番号をつけておかなければならないのさ。そして、取り出したあとの穴にも、同じ番号をつけなければならないんだよ。星が帰ってきたときに、ちゃんと、もとの場所へもどれるようにね。もしちがった穴へでもはいってしまうと、ちゃんとすわっていられないから、あとからあとからころがり落ちて、流れ星があんまりたくさんできてしまうからね」
「もしもし、ルゲイエさん!」と、そのとき、ヤルマールの寝ている、上のかべにかかっている、古い肖像画が言いました。
「わしはヤルマールの曾祖父です。
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