この国でいちばん大きな青い葉といえば、それはスカンポの葉に決まっています。
その葉を摘んで子供がおなかの上に乗せれば、まるで前掛けのようになりますし、頭の上にのせれば、雨が降ったときには雨傘の代わりにもなります。なにしろ、この葉はものすごく大きいのですから。
スカンポというのは、一本だけで生えていることはありません。一本あるところには、決まっていくつもいくつも生えているものです。その様子は、とてもきれいなものです。そして、この美しい葉は、カタツムリの大好物なのです。
昔、身分の高い人たちがごちそうとして食べていた大きな白いカタツムリは、スカンポの葉を食べては「フン、こいつはうまいぞ」と言ったものでした。なぜなら、カタツムリは本当にそれがおいしいと思っていたからです。カタツムリはスカンポの葉を食べて生きていたので、この葉の種があちこちの畑にまかれたのでした。
さて、そこには古いお屋敷がありました。しかし、今ではもう屋敷の人たちはカタツムリを食べなくなっていました。カタツムリたちはすっかり死に絶えてしまったのです。ところが、スカンポのほうは死に絶えるどころか、増えて増えて、道という道、花壇という花壇にまで広がっていました。もう、どうしようもありません。まるでスカンポの森のようなありさまです。ただ、あちこちにリンゴの木とスモモの木が立っているだけでした。その木でもなかったなら、ここが庭だったと気づくことはとてもできなかったでしょう。まったく、どこもかしこもスカンポばかりなのです。
そこに、ずいぶん年をとったカタツムリが二匹だけ生き残って住んでいました。このカタツムリたちは、自分たちが何歳なのか知りませんでした。けれども、自分たちはもともとはもっと大勢いたことや、遠い国から来た一家の者だったこと、そして自分たちや仲間のためにこのスカンポの森が植えられたことなどは、よく覚えていました。
このカタツムリたちは、森の外へ出たことは一度もありませんでした。でも、外の世界には「お屋敷」というものがあることはちゃんと知っていました。そして、そのお屋敷でみんなが料理されて、まっ黒になって、それから銀のお皿にのせられることもよく知っていました。しかし、その先どうなるのか、その後のことは知りませんでした。それに、料理されて銀のお皿にのせられるということが、いったいどういうことなのか、このカタツムリたちには想像もつかなかったのです。それでも、それはすばらしくて、しかも立派なことに違いない、と思っていました。コガネムシやヒキガエルやミミズに聞いてみても、誰一人として教えてくれる者はいませんでした。もちろん、誰も料理されたり銀のお皿にのせられたりした者はいなかったのですから、無理もないことでした。
年とった白いカタツムリたちは、自分たちが世界でいちばん尊い生き物だということをよく知っていました。なぜって、この森は自分たちのためにあるのですし、またお屋敷にしても、自分たちが料理されて銀のお皿にのせられるためにあるのですからね。
さて、このカタツムリたちは二人きりで、とても幸せに暮らしていました。ただ、子供がいなかったので、小さな普通のカタツムリを連れてきて、自分たちの子供として育てていました。ところが、その子ときたらさっぱり大きくなりません。それもそのはず、普通のカタツムリなんですからね。しかし、二人の年寄り、特に母親のほうは、その子が少しずつ大きくなっていくのがはっきりわかるような気がしていました。それで父親に向かって、「もし見ているだけでこの子の成長がわからないのなら、この子の殻に触ってみてください」と言いました。父親が触ってみると、たしかに母親の言うとおりだ、と思いました。
ある日のこと、ひどい雨が降ってきました。
「まあ、どうだい。スカンポの葉がドンドン、バラバラと、まるで太鼓のようなすごい音を立てているじゃないか!」と、カタツムリのお父さんが言いました。
「雨のしずくも落ちてきますよ!」と、カタツムリのお母さんが言いました。
「まっすぐ茎を伝って流れてきますよ。今にここも濡れてしまいますね。でも、私は嬉しいですよ。こんないい家が私たちにはあるんですし、あの子にもちゃんと自分の家があるんですからね。たしかに私たちは、ほかのどんな生き物よりも恵まれているんですね。」「やっぱり、わたしたちはこの世界の主人なんですよ。生まれたときから、こうして自分の家を持っているんですし、おまけに、スカンポの森まで、わたしたちのために植えられているんですもの。……それはそうと、この森がどこまでつづいていて、森の外にはどんなものがあるか、見てみたいですねえ!」
「森の外には、なんにもありゃしない」と、カタツムリのお父さんは言いました。
「わしたちのところよりいい場所なんて、どこにもあるはずがない。わしには、これ以上望むことはないよ」
「そうですね」と、お母さんは言いました。
「でも、わたしは一度お屋敷へ行ってみたいんです。そうして、お料理されて、銀のお皿にのせてもらいたいと思いますよ。わたしたちのご先祖さまは、みんなそうされたんですって。きっと、なにか特別で素晴らしいことなんですよ」
「お屋敷はもう壊れてしまったかもしれないよ」と、カタツムリのお父さんは言いました。
「さもなきゃ、スカンポの森がその上までしげっていて、中の人たちが外に出られなくなっているのかもな。どっちにしても、あわてることはない。だがおまえは、いつも本当におっそろしくせっかちだよ。だから、あの子までがせっかちになりだしたんだ。あの子はもう三日も、茎をはい上がっていっているじゃないか。あれを見ると、わしは頭がぐらぐらするよ!」
「そんなに、がみがみ言わなくたっていいじゃありませんか」と、カタツムリのお母さんは言いました。
「あの子は、とっても気をつけてはっているんですよ。本当に、あの子はわたしたちの楽しみなんです。ほかに、わたしたち年寄りには、生きていく楽しみなんてないんですからね。だけど、あなた、ぼつぼつあの子にお嫁さんを探してやりませんか? このスカンポの森のずっと奥には、わたしたちの仲間がいるんじゃないでしょうか?」
「黒いカタツムリならいるだろうな」と、年寄りのカタツムリは言いました。
「家のない、黒いカタツムリならな。だが、あの連中は、いやしいくせにうぬぼれが強いんだ。ひとつ、アリさんに頼んでみようじゃないか。あの人たちは、さも忙しそうに、あっちこっちを走り回っているから、きっとあの子にぴったりの嫁さんを知っているだろう」
「一番きれいな人を知っていますよ」と、アリたちが言いました。
「ただ、うまくいくかどうか。なにしろ、その人は女王さまなんですからね!」
「そんなことはかまいませんよ」と、年寄りのカタツムリたちは言いました。
「その人には、家はありますかね?」
「お城がありますよ」と、アリたちは言いました。
「七百も廊下のある、すばらしく立派な、アリのお城ですよ」
「ありがとうございます」と、カタツムリのお母さんは言いました。
「ですけど、うちの息子をアリの塚へやるわけにはいきません。
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