初級翻訳・オシャベリ姫 第4話

かぐつち みどり

中には、何やら話しかけてくるカエルもいました。
「グレレ、グレレ、グレレ、グレレ。ケオコ、ケオコ」
ヒバリの国で懲りていたので、さっきから黙って我慢していたオシャベリ姫でしたが、もう耐えきれなくなって吹き出してしまいました。

「オホホホホ。ああ、可笑しい、可笑しい。なんておかしい言葉なんでしょう!」
オシャベリ姫がこう言うと、カエルたちはビックリしたようで、みんな顔を見合わせました。しかし、やがて前よりも一層激しくオシャベリ姫にしゃべりかけてきました。

「グル、グル、グル。グルイレ、グルイレ、グルイレ」
「クロ、クロ、クロ、クロ。プリイ、プリイ、プリイ。プロロ、プロロ、プロロ」
と口々に言いながら、われもわれもとオシャベリ姫をのぞき込んできます。

「オホホ、ハハハハ。あたしの顔がどうしてそんなに珍しいの? 目玉ばかりキョロキョロさせて」
「ツララロ、ツララロ、ツラララロ、ツラララロ、ツラララロ、ツラララロ」
「ハハハハハハハハ。ホホホホ。あたし、やめてよ、そんなにのぞくの。あら、冷たい! 気味が悪いわ。触っちゃダメよ、汚らしいじゃないの!」
「ダレイケ、ダレイケ、ダレイケ。グレイケロロ、グレイケロロ、グレイケロロ」
「コロロ、グロロ、ガロロ、ウロロ、ゲロロ、ゲロロ、ゲロロ!」

そんなふうに、あとからあとからカエルたちがのぞき込んできます。しまいには上に重なり合って、姫の寝台の上まで飛び上がってきて、われもわれもとしゃべり立てます。
オシャベリ姫は「これはたまらない」とはね起きて、入り口から逃げ出そうとしましたが、看護婦の青ガエルが両側からかじりついて放しません。
その間に窓の方を見ると、窓の外はもう一面、カエルが山のように押し寄せていて、あっちへ押し合い、こっちへへし合い、大変な騒ぎになっています。
おまけに、そのしゃべりようといったらありません。

「グレーレ、グレーレ、グレーレ、グレーレ。グレーチョコ、グレーチョコ。グルーロ、グルーロ、グルーロ。レロロ、レロロ、レロ、レロ、レロ」
「ツララ、ツララ、ツラララロ。クロラ、クロラ、クロロロラ。ゲレロ、ゲレロ、ゲレレレロ。グラ、グラ、グラ、グラ、グラ。ゲラ、ゲラ、ゲラ、ゲラ、ゲラ。ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ」

姫は一生懸命、大きな声で叫びました。
「ちょっと待ってちょうだい! そんなに押すと寝台が壊れてしまうわ。そんなにしゃべると、私の耳が破れてしまうじゃないの!」
しかし、カエルたちはなおも一生懸命のぞき込んでしゃべり続けます。
姫はもう死に物狂いになって、カエルたちの頭を踏みつけて外へ飛び出しましたが、門のところまで来るとまた驚きました。

オシャベリ姫はカエルたちのあまりのうるささに驚いて、病院から飛び出して外へ逃げ出しましたが、表門を出てみると、外は立派なカエルの町でした。
そしてその町は、どこまでもどこまでもカエルで埋め尽くされていて、電車も自動車もカエルで溢れかえり、動けなくなって並んでいます。
そこへオシャベリ姫が飛び出したので、今までよりもさらに大騒ぎになり、
「ガアガアガアガアガア! ワーワーワーワーワー!」
と、まるで大嵐のように騒ぎ出しました。
姫は夢中になってカエルたちの頭を踏みつけながら、町の外へと逃げ出しました。野原であれ、林であれ、田んぼであれ、どこへ行こうとお構いなしに、姫はドンドンドンドンと駆け出しました。するとカエルたちは、あとから押し合いへし合い、どこまでも追いかけてきます。
姫は息が切れ、足が疲れて死にそうなほどでしたが、それでもカエルたちは追うのをやめません。
そうこうするうちに日が暮れて、東の山からまん丸いお月様が顔を出しました。
そのお月様を見て、オシャベリ姫はホッと一息つきました。
日が暮れれば、いくらカエルでももう追いかけてはこないだろうと思いましたが、それは大きな間違いでした。
日が暮れてお月様が出ると、野原は一面、カエルばかりがいるかのように「ガアガアガアガア」と鳴き声が響き渡り、すぐ足元まで追いかけてきそうな勢いです。
「これは大変!」
姫はまたも山の方へ、山の方へと、何度も振り返りながら逃げていきましたが、そのうちに、ある高い崖の上まで来ると、目の下に絵のように美しい都が見えてきました。
その都は、本当に絵に描いたような美しい場所でした。
どの家も白い壁に青い屋根で、その下からは青や黄色の電灯がキラキラと輝いています。
その真ん中には大きな黒い鉄のお城があり、その中から紫色の光がまぶしいほどに放たれていました。
空にはお月様と星が光っていて、その美しいこと……そして、なんと静かなことでしょう。電車の音も自動車の響きも、人間や犬の声さえも、何も聞こえません。
生き物が住んでいるのかどうかも分からないくらいです。
オシャベリ姫はしばらくの間、ぼんやりとその景色に見とれていましたが、
「ああ、こんな静かな所にいたらさぞいいだろう。昼間からオシャベリをするヒバリや、夜中に鳴き回るカエルがいないから、どんなにうるさくなくていいことか」
と思いながらふと足元を見ると、一本の蔦(つた)が垂れ下がっていて、ずっと崖の下の家のそばまで伸びていました。
オシャベリ姫はすぐにその蔦を伝って、下へ降り始めました。
「もうこの国へ来たら、口を利くのはやめよう。この国にはあのヒバリやカエルの口のように、あたしよりもずっとひどいオシャベリがいて、きっと私をしゃべり負かしていじめるに違いないわ。そうして、オシャベリさえしなければ、きっと親切にしてもらえるはずよ」
そう思いながら、オシャベリ姫は蔦にすがって崖を降りていきました。
初めのうちは崖がデコボコしていたので、オシャベリ姫はまるで階段を降りるように蔦にすがって降りていけましたが、だんだん下の方へ行くと崖が急になり、しまいには完全に宙ぶらりんになってしまいました。
姫は怖くなって引き返そうとしましたが、もう戻る力は残っておらず、あまりの恐ろしさに蔦にすがりながら泣き出してしまいました。
その声をかぎつけたのか、はるか崖の下の草原へ大勢の人が出てきて姫の姿を見上げていましたが、崖があまりに高いので、そんな人たちがまるでアリのように小さく見えました。
これを見ると姫は一層恐ろしくなり、手と足で蔦にかじりついてブルブルと震えていました。すると、はるか下の方から、姫のつかまっていた蔦を伝って登ってくるものがありました。
だんだん近づいて見ると、それは黒い服にズボンをはいて、白い靴に赤い覆面をした奇妙な人物でした。その人はひょいと軽そうに姫を抱きかかえると、姫の体に何やら小さな包みの紐のようなものをくくりつけ、いきなり姫の体を投げ落としたのです。
オシャベリ姫は肝を潰して、思わず「アレッ!」と叫びましたが、間もなく「ポカーン」と大きな音がしたかと思うと、姫の頭上で大きな傘(パラシュート)が開き、折からの風に乗って、向こうに見えるお城の方へフワリフワリと飛んでいきました。
姫はまたビックリしましたが、それでも命が助かったのでホッと安心しました。
「まあ、今の人はなんて不思議な人でしょう。初めからそう言ってくれれば、こんなにビックリしはしないのに。

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