初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第24話

ニールスのふしぎな旅

そして二人は、昔、人間がネズミを手なずけるために作ったものに違いない、ということに決めてしまいました。
ところで、この大ガラスはアッカとは仲良しでした。
それでアッカは、フランメアがこういう宝物を持っていることを、前々から大ガラスに聞いていたのでした。
フランメアとバタキーの想像していたことは、本当でした。
確かに、ネズミたちは、笛の音にすっかり心を奪われてしまいました。
ニールスは先頭に立って、お星さまが空に輝いている間じゅう、その笛を吹き続けました。
そして、ネズミたちも、休まずそのあとを追っていきました。
夜が明け始めてもニールスは笛を吹いていました。
お日さまが昇るころにも吹いていました。
その間じゅう、ネズミたちの群れは、ニールスのあとからついていき、ネズミたちは、グリンミンゲ城の大きな穀物部屋から、だんだん遠くへ遠くへと連れ出されていきました。

5 ツルの大舞踏会

三月二十九日 水曜日
スコーネには、立派なお城がたくさんそびえ立っています。
けれども、昔から名高いクッラベルイの山壁に比べられるような、素晴らしい城壁を持っているものは一つもありません。クッラベルイは、決して高く大きな山ではありません。低く、むしろ長く横にのびているような山です。その広いいただきには、森や畑が広がっており、あちこちにはヒースの生い茂る場所もあります。ここは、格別に美しいわけでも、人目を引くような場所でもありません。見たところは、スコーネ地方のほかの高地とまったく同じです。山の峰づたいの道を歩いてきた人は、思わずこうつぶやいてしまうほどです。
「この山は、うわさほどじゃないな。これといって見るところもないじゃないか」

けれども、その道からそれて山のふちまで歩いていき、そこから崖の下を見下ろすと、あまりの景色の良さに、すべてを見終えるのにどれほどの時間がかかるか分からないほどです。なぜなら、クッラベルイはほかの山のように周囲を平地や谷に囲まれているのではなく、海の中へとぐっと突き出ているからです。山のすそには、荒い海の波を防いでくれるような陸地は、これっぽっちもありません。海の波は山壁にまで直接押し寄せ、それを洗い流し、思いのままに形を変えていくのです。こういうわけで、山壁は海と、その友だちである風によって、実にすばらしい飾りをつけてもらっています。

山腹には深く刻まれた険しい谷があり、絶えず風に吹きさらされてツヤの出た黒い岩肌も見えます。水面からまっすぐに突き出た岩の柱もあちこちにあり、入り口の狭い暗い洞窟も顔をのぞかせています。このような崖や岩には一面に雑草が生え、つる草や木の枝が絡みついています。そこには木も生えてはいるのですが、風の力がとても強いため、まるでつる草のように這いつくばり、やっとのことで険しい絶壁にしがみついているのです。カシワの木は横に伸びて地面を這い、その葉は低い天井のように木の上を覆いかぶさっています。背の低いブナの木は、まるで大きな葉のテントのように谷間に立っています。

目の前に広々とした青い海が広がり、頭の上には澄み切った明るい空をいただいているこのすばらしい山壁には、夏の間じゅう、毎日ひっきりなしに見物人が訪れます。また、ここには毎年たくさんの動物たちが集まって、大運動会を開きます。なぜこの土地がそれほどまでに動物たちの心を惹きつけるのか、その理由は誰にも説明できません。けれども、とにかくこれは大昔からの習慣なのです。

運動会が行われるときには、シカやウサギやキツネをはじめ、ありとあらゆる四足の獣たちが、人間に見つからないように前の晩のうちにそっとクッラベルイへやってきます。そして、お日さまが昇る前に、みんなは運動会場へと入ります。もっとも、運動会場というのは、道の左手にあるヒースの生えた荒れ地のことです。そこは山のいちばん端からそれほど遠くはありません。運動会場は四方を丸い丘に囲まれていますから、人間が偶然ここまで迷い込まない限り、動物たちは誰にも見つからないのです。

それに、三月ともなれば、まずここまで入り込んでくるような人はいません。秋の嵐が吹いて以来、ここ数ヶ月というもの、岩のあたりを歩き回ったり、山腹をよじ登ったりする見物人の姿はぱったりと消えているのです。それにまた、この岬の灯台守や、山の畑のおばあさんや、お百姓さんやその家族の人たちは、いつも歩き慣れた道ばかりを通りますから、こんな寂しい荒野にまで入り込んでくるようなことはありません。

さて、獣たちは会場に着くと、さっそく丸い丘の上にそれぞれ場所を占めました。同じ種類のもの同士が一緒にかたまっています。でも、もちろんこういう日には平和がしっかりと守られていて、どんな動物もほかの動物に襲われる心配はありません。ですから、この日ばかりは小さなウサギがキツネたちのいる丘をぶらついても、長い耳を失うようなことはないのです。それでも、動物たちは同じ仲間のものだけでひと固まりになっています。これまた、昔からの習慣なのです。

みんなが席につくと、鳥たちはどこにいるのだろうかと見回しました。ところで、この日はいつも天気が良いのです。なぜなら、ツルたちは天気予報がとても上手でしたから。もしも雨が降りそうだと分かれば、動物たちを呼び集めたりはしないでしょう。ところが、きょうは空も澄み切って遠くまで見渡せるというのに、鳥の姿はどこにも見えません。まったくおかしなことです。お日さまはもう空高く昇っています。きっと、鳥たちはもうここへ向かっているのでしょう。見れば、平野の向こうから、小さな黒い雲がいくつか、ゆっくりと動いてきます。すると、その雲のひとつが、突然エーレ海峡の岸に沿って、クッラベルイのほうへ向かってきました。
雲は運動場の真上まで来ると、ぴたりと止まりました。
すると同時に、その雲全体がさえずり始めました。
まるで、その雲そのものが鳴き声でできているかのようです。
高く上がったり低くなったりしながら、その間もひっきりなしに鳴き続けています。
とうとう、その雲全体が突然ひとつの丘に降り立ちました。
すると、みるみるうちにその丘は、灰色のヒバリや、美しい赤みをおびた灰色のウソや、まだら模様のムクドリや、緑がかった黄色いヤマガラですっかりいっぱいになってしまいました。

すぐまた、もうひとつの雲が平野の向こうからやってきました。
それはあちこちの場所――百姓家や、お城や、町や、農場や、停車場や、漁村や、精糖工場などの上空に立ち寄りました。
そして、立ち寄るたびに、地上から舞い上がるほこりの柱のようなものを吸い込んでいきました。
こうして、その雲はだんだんと大きくなっていきました。
そして最後に、すべてをすっかり引き入れてクッラベルイに向かったときには、もうそれは雲というより、霧のようになっていました。
しかも、その霧があまりにも巨大だったので、ヘーガネースからメルレまでのあいだの地面を、その影ですっかり覆い隠してしまったほどでした。
それが運動場の上に来たときには、お日さまの姿も見えなくなってしまいました。

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