初級翻訳・いたずら小僧日記 第22話

いたずら小僧日記

時々日曜学校にも遊びに来てくださいと言うから、ぼくは次の日曜日に行く約束をした。
今度はピストルなんか持って行くまい。
そのうちに、ぼくがポケットからドロップを出して食べたら、牧師さんが「君はドロップが好きなのかい?」と尋ねてきた。
ぼくはドロップが大好きで、これはお花さんのお手紙を届けたお駄賃で買ったんだと答えた。
すると、いったいどこへ手紙を持って行ったのかと聞いてくるから、家に遊びに来る文法の先生のところへ持って行ったと答えた。
「そうですか、何度も持って行きましたか」
と、今度は回数まで聞いてくる。
よく質問したがる男だ。
いったい牧師というのは教える立場じゃないか。
「ええ、毎日のように持って行きますよ」
と、ぼくは嘘をついてやった。
「それじゃあ、その先生という方は毎晩遊びに来るのですか?」
と、牧師はまだ尋ねている。
「ええ、毎晩来ますとも。
あの人が来るものだから、姉さんは最近教会に来ないんですよ」
と、今度は少し本当のことを言ってやった。
すると牧師は、「ドロップでも買いなさい」と言って、ぼくへ五十銭の銀貨をくれた。
なかなか感心な野郎である。
そして、「これから家に帰って説教の準備をしなければならない。
日曜日には姉さんと一緒に教会に来てくださいね」と言って、青白い顔をして帰っていった。

忠公と六公と清が遊びにやってきた。
あいにく雨が降っていて外へ出られないから、ぼくたちは父親の書斎で五目並べや挟み将棋をしておとなしく遊んだ。
そのうち、清が「財産差し押さえごっこをしよう」と言い出した。
財産差し押さえごっこって一体どんなごっこなのと尋ねたら、ものすごく面白いと言う。
それじゃあやろうということになったが、紙はあるかと聞かれる。
「半紙でもいいかい?」
「半紙で上等だ!」
ぼくはお父さんの机の引き出しを引っ張り出して探したけれど、半紙は見当たらなかった。
すると清が郵便切手を見つけて、
「こっちの方がいいや。半紙だとわざわざ切らなきゃならないから面倒だ」
と言った。
どうするつもりなのだろうと見ていたら、清はお父さんの机と言わず本箱と言わず、額や掛け軸の表具に至るまで、一枚ずつ切手をペタペタと貼りまくってしまった。
「こんなに切手を貼ったら、郵便屋さんが持って行きやしないかな?」
「大丈夫さ。
ポストの中にさえ入れなければ平気だよ」
それもそうだなと思った。
本箱なんか大きすぎて郵便ポストに入るわけがないから安心だ。
けれども、お父さんが帰ってきて怒りはしないかと急に心配になってきた。
「ぼくは嫌だなあ。
お父さんが帰ってきて怒ったら困るよ」
「怒るもんか、びっくりするだけさ。
うちのお父さんなんて、ものすごくびっくりしたぜ。
そして、『もうどうしようもないな』って言ったんだ」
「やっぱり君が切手を貼ったのかい?」
「僕じゃないよ。
どこかの見知らぬ人が来て貼っていったのさ。
それから僕の家はすっかり貧乏になってしまったんだ」
なんだか信用できない話だったけれど、ぼくはお父さんを驚かそうと、わくわくしながら帰りを待ち構えていた。
しかし、お父さんは驚くどころか、真っすぐ烈のごとく怒り出した。
そして「少しもまともな真似はしない!」と言いながら、ぼくは学校カバンでボコボコに叩かれた。
清なんて大嘘つきだ。
あんな奴はいつかきっと泥棒になるに違いない。

明日からサーカス(曲馬)がやってくる。
今日は一日中、その広告を眺めてばかりいた。
サーカスと動物園を合わせたようなもので、いろんな珍しい動物がやってくるのだ。
ぼくもかなりお勉強ができるようになったとみえて、サーカスの広告が半分くらい読めるようになった。
知らない字は友達に聞いたから、今日一日で新しい漢字をどっと覚えた。
学校の教科書なんかやめて、サーカスの広告を読ませればいいのに。
児童の博物学の勉強の一助にもなるから、教師および父兄は子どもたちに一日の休暇を与えるように希望する、と広告に書いてあった。
まさにその通り、本当にいいことを希望している。

算術の時間に先生が、「答えはできましたか」と言ってぼくの石盤を取り上げて見た。
そして、「君には罰点を十点やる」と言った。
なんと、ぼくの石盤にはいつの間にか大きな象の絵が描いてあったのだ。
算術をやっているつもりが、すっかりサーカスのことばかり考えていたらしい。

忠公と一緒にサーカスを見に行った。
あまり早く着きすぎたので、まずは動物たちを見物に回った。
パンにトウガラシを仕込んで猿に食べさせたら、ハクションとくしゃみをして面白かった。
もう少し続けようとしたら、番人がやってきてすごく怒ったから、ぼくたちは象のほうへ移動した。
象という生き物は実に妙なやつだ。
体のわりに目がものすごく小さい。
猿が人間の親類なら、象はクジラの兄弟分といったところだろう。
ぼくは大きなパンを一つ恵んでやった。
もちろん、これにもトウガラシが仕込んである。
おいしそうに食べているから、もう一つあげようと思ってそばに寄ったら、象というのは全く恩を仇で返すから困る。
なんと、いきなりぼくを長い鼻でぐるっと巻きつけて投げ飛ばしたのだ。
幸い、羊がずらりと並んでいる群れの上に落ちたのでケガはせずに済んだが、羊たちはびっくりして尻餅をついたまま固まってしまった。
「ケガをしても知らないからな!」
と番人に鋭く睨みつけられ、さらにサーカスの親方まで飛んできて、こう言った。
「危ない危い、ケガはなかったか?
まったく運のいい小僧だなあ!」「ヨナのようだ」
と、親方は言った。
ヨナっていうのは、旧約聖書でクジラに飲み込まれた人のことだ。
象に投げ飛ばされたわけじゃない。
この親方は聖書の知識があまりないみたいだな。
なんだかかわいそうな人だ。
キリンっていう動物は何であんなに首が長いのかなあ。
あいつに洋服を着せたら、ものすごくハイカラになるだろうな、なんて考えているうちに、忠公がオウムにつっつかれてしまった。
「どうしてそんな危ないことをするんだよ。ケガをしても知らないぞ」
と、ぼくは叱ってやった。
忠公がケガをしたら、すぐにぼくのせいにされてしまうからだ。
サーカスの曲馬はさすがに上手なものだ。
あの馬たちは、どうしてあんなに人間の言うことを聞くのだろう。
相当お稽古をしないと、あの女性みたいに輪の中を上手に通り抜けたりできないだろうなあ。
ちょうどぼくくらいの年齢の子どもが、お父さんの頭の上で逆立ちをしていたっけ。
あれくらいのことなら、ぼくにもきっとできるはずだ。
うちのお父さんも曲馬師になればいいのに。
でも、そんな野心は全くないみたいだから仕方がない。
今日もサーカスを見て、ぼくはついに決心した。
ぼくは曲馬師になるんだ。
家にいてばかりで怒られるより、あんなふうに曲芸をして褒められる方がずっといい。
そこでぼくはこんな計画を立てて、ここからこっそり逃げ出すことにしたのだ。
今夜の二時に、サーカスの人たちが出発する。
どれでもいいから、あの荷車にこっそり乗り込めばいいんだ。
そして、ずいぶん遠くまで行ってから、親方に頼み込んで弟子にしてもらうんだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました