初級翻訳・なめとこ山の熊 第4話

なめとこ山の熊

と思った瞬間、小十郎は「ガーン!」と頭の中で大きな鐘が鳴り響いたような衝撃を受け、まわりの景色が一面まっ青になった。
そして遠くの方で、こんな声を聞いたんだ。
「おお、小十郎、おまえを殺すつもりはなかったんだ……」
もうおれは死んでしまうんだな、と小十郎は思った。
そして、目の前でちらちら、ちらちらと、青い星のような光がそこらいちじゅうに見えた。
「これが死ぬときに見るしるしなんだ。死ぬときに見えるという火なんだな。熊ども、どうかゆるしてくれよ」と小十郎は思った。
それからあとの小十郎の気持ちは、もう私には分からない。
とにかく、それから三日目の晩のことだった。
空にはまるで氷の玉のように冷たく白く輝く月がかかっていた。
雪は青白くあたりを明るく照らし出し、川の水はまるで燐光(りんこう)のようにぼんやりと光っていた。
すばる(プレアデス星団)や三つ星(オリオン座のベルト)が、緑色や橙色(だいだいいろ)にちらちらとまたたき、まるで息をしているかのように見えた。
あの栗の木と白い雪の峰々に囲まれた山の上の平らな場所に、黒くて大きなものたちがたくさん、大きな輪を描くように集まっていた。それぞれが黒い影を落とし、まるで回々教徒(イスラム教徒)が祈りを捧げるときのようにつきっきりで、じっと雪にひれ伏したまま、いつまでも、いつまでも動かなかった。
そして、その雪と月のあかりの中でよく見ると、いちばん高い真ん中のところに、小十郎の死骸(しがい)がまるで半分座っているかのように置かれていたんだ。
気のせいかもしれないけれど、その死んで凍りついてしまった小十郎の顔は、まるで生きているときのように冴(さえ)え冴えとしていて、なんだかかすかに笑っているようにさえ見えたんだよ。
本当に、その大きな黒い熊たちモールは、三つ星が天のまん中に来ても、もっと西の方へ傾いても、まるで化石になったかのようにじっと動かなかったんだ。

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