それからまた街をぐるぐると見回って、お昼ごろに「ばけもの世界裁判長」の屋敷に帰りました。
今日のお昼ごはんは、「わらのオムレツ」でした。
四、ペンネンネンネンネン・ネネムの安心
ばけもの世界裁判長、ペンネンネンネンネン・ネネムの評判は、今やものすごいものになっていました。
この世界が、たった一匹のミジンコから始まって、だんだんと枝が生えたり足ができたりして進化して以来、これほどの名裁判官は初めてだと、みんなが口をそろえて言いました。
シャァロンという、ばけものの金貸しでさえ、「ああ、ネネム様は本当に素晴らしい裁判官だ。伝説のダニー様の再来だ、いや、ダニー様よりも進化している!」と褒めたたえるほどでした。
「ばけもの世界長」からは、毎日一つずつ新しい位(ランク)が送られてきましたし、勲章も届きました。今では、その位の名前を読み上げるだけで二時間もかかり、勲章はネネムの部屋の壁いっぱいに飾られました。
ですから、何かの儀式でネネムがスピーチをする時などは、自分の位を読み上げるのが大変なので、あらかじめ三十個に分けておいて、三十人の部下に一斉にガヤガヤと読み上げてもらうようにしていました。それでも、四分はかかってしまうのでした。
勲章だって同じです。とてもネネムの胸にはつけきれません。そこで、ネネムの立派な礼服の上着には、胸のところから十メートルもの長さの布がずっと続いていて、そこに勲章がズラリと並べられていました。その帯のような布を、三十人の部下たちがゾロゾロと抱えて歩くのでした。
さて、ネネムはこんなに大きな名誉を手に入れました。そのほかにも、皆さんもご存じの通り、フゥフィーボー博士のほかには誰も食べてはいけない「わらのオムレツ」を食べることさえ許されていました。
ですから、誰がどう考えても、これほど幸せなことはないはずでした。けれど実は、ネネムはちっとも楽しくありませんでした。
それは、あのネネムが八歳の、ひどい飢饉(食べ物がない年)の時のことです。お菓子のカゴに入れられて、「おおホイホイ、おおホイホイ」と言いながらさらわれてしまった、妹のマミミのことが、どうしても頭から離れなかったからです。
そこでネネムはある日、テーブルの上の鈴をチリンと鳴らして、部下の検事を一人呼びました。
「ちょっと君に聞きたいことがあるんだが」
「何でございましょうか」
「ひざやかかとの骨がまだ固まっていないような、小さな女の子を働かせる商売といえば、一体どんなものがあるかな?」
検事はしばらく考えてから答えました。
「それは『ばけもの手品』でしょう。手品師がよく、十二、三歳くらいまでの女の子を使って、変身術だと言いながら、犬の形にしたり、ウサギの形にしたり……。まるで、ばけものを『しんこ細工』みたいに伸ばしたり丸めたり、耳をつけたり取ったりしているのをよく見かけます」
「そうか。そんなやつらは、世界中に何人くらいいるんだ?」
「そうですね。一昨年の調べでは、手品を職業にしている者は五十九人でしたが、今はだいぶ減っていると思います」
「なるほど。そんなしんこ細工みたいなことをするのは、この世界がまだナメクジだった頃の古い習慣だ。ちょっと様子を見に行こう。場合によっては、禁止にしなければならないな」
そこでネネムは、部下の検事を連れて、今日も街へ出かけました。
検事の案内で、まっすぐに「手品大一座」がある場所へと向かいました。
手品はちょうど、一番盛り上がっているところでした。
ネネムは検事と一緒に中に入りました。
楽隊がにぎやかに演奏しています。
ギラギラ光る鋼の小手だけをつけた、青と白の二人のばけものが、「電気決闘」という出し物をやっているところでした。剣がカチャンカチャンと鳴るたびに、青い火花がまるでほうきのように飛び散って、二人の顔をものすごく照らしました。見ている人たちは、みんなハラハラドキドキしています。
「なかなか勇ましいね」とネネムは言いました。
すると、ついに一人が「バアッ!」という音とともに、肩から胸、そして腰にかけてスパッと斬られてしまいました。体は真っ二つになって、床にバランチャンと倒れてしまいました。
斬った方は肩をいからせて、三回も刀を高く振り回しました。紫色の激しい火花を散らしながら、舞台の裏へと消えていきました。
ところが、倒れていた真っ二つの体がバタッと一つに戻ったではありませんか。見る見るうちに傷口がすっかりくっついて、そのばけものは「ゲラゲラゲラッ!」と笑って起き上がりました。
そして、ほんの少し頭を下げてお辞儀をしました。
「まだ傷口がちゃんとくっついていないので、いい加減なお辞儀で失礼します」
そう言いながら、またゲラゲラ笑って、このばけものも舞台の裏へ入っていきました。
ボロン、ボロン、ボロロン、と銅鑼(どら)が鳴り響きました。
白い布がかかったテーブルと、椅子が運ばれてきました。
目の周りを真っ黒に塗った若いばけものが、わざと少し口を尖らせて、テーブルの前に座りました。
白いエプロンをつけた給仕のばけものが、直径一メートル二十センチもある真っ白な大皿を、うやうやしく持ってきてテーブルの上に置きました。
「フォークだ!」と椅子に座った若者が、テーブルを叩きつけてどなりました。
「はい! これは失礼いたしました。ただいま、すぐにお持ちします」
給仕はそう言って、六十センチもある大きなフォークを持ってきました。
「ナイフだ!」と若者はまたテーブルを叩いてどなりました。
「はい! これは失礼いたしました。ただいま、すぐにお持ちします」
給仕は幕の後ろへ引っ込んで、今度は長さ六十センチもあるナイフを持ってきました。
ところが、そのナイフをテーブルの上に置くと、すぐに刃がくにゃんと曲がってしまいました。
「だめだ、こんなもの!」
椅子に座った若者は、ナイフを床に投げつけました。ナイフはひらひらと床に落ちて、パッと赤い火を上げて燃えて消えてしまいました。
「はい! これは失礼いたしました。今のはナイフの宣伝でございました。本物の良いやつを持ってまいります」
給仕はそう言いながら奥へ引っ込んでいきました。
すると、ネネムも検事も、会場にいた誰もがびっくりすることが起きました。いつの間にか、どこから現れたのか、とびきり大きな青いばけものが、テーブルの上の皿の上にあぐらをかいて座っていたのです。そして椅子に座った若者を見下ろして、すまし顔をしています。
青いばけものは、静かに観客の方を向きました。目の周りが真っ赤です。
突然、見物客たちがどっと叫びました。
「テン・テンテンテン・テジマア! うまいぞ!」
「ほう、すごいぞ。テジマア!」
テジマアと呼ばれた皿の上の大きなばけものは、また顔をゆっくり回して、椅子に座った若者の方を向きました。
そして二人は、まるで二匹のライオンのように、じっとにらみ合いました。
見物客たちはもう、みんな立ち上がって大騒ぎです。
「テジマア! 負けるなよ! しっかりやれ!」
「しっかりしろ、テジマア! 負けたら食われちゃうぞ!」
そんな大騒ぎのあと、会場はしんと静まり返りました。
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