ネコ ノ オバアサン
村山籌子
たいへん年をとったおばあさんネコが、お昼ごろになって目をさまして、ベッドの上へ起きあがりました。
おばあさんは、西洋ネコでしたから、ナイト・キャップという頭巾(ずきん)をかぶって、ナイト・ガウンという寝巻きをきて、メガネをかけています。
「ああ、ちっとも、落ち着いて眠れなかった。
いまいましい。
なんだか寒くってしかたがないから、この中で、本を読もう。」と、夜通しぐっすり寝こんだのに、まだ寝たいですが、目がさめてしまって眠れないので、本をひろげて読もうとするときに、窓のすぐ外で、パタパタと走りまわる音がしました。
「おや、なんだろ。」と、おばあさんはプンプン怒って、窓の外を見ましたら、近所のミケ子とトラ三が、かけっこをしていました。
「やかましいことばかりして。
わたしが、よく眠れなかったのを知らないのか。
ほんとに、世の中は人のきもちをわからないやつが多くてこまる。」とひとりで、ブツブツ怒りながら、また本を読みはじめました。
おばあさんが一字読むか読まないうちに――おばあさんは、むずかしい字を読むときは一字読むのにとっても時間がかかるのです――窓の外で、はりさけるような大きな音が、きこえました。
そして「そら、球がとんだよ。
とってきて、はやく投げるんだよ――」と、トラ三がなりたてていたので、おばあさんはびっくりしました。
「こりゃいかん。
さっきより、まだやかましくなった。
野球をしてるんだな。
野球をするのに、だまってできないなんて、なんて、ばかな小僧たちだ。」
おばあさんは、ベッドの上で怒っていましたけど、「もうしかたがない。
ここでは眠れない。
朝ごはんでも食べるとしよう。」とプンプン怒って、お台所へおりてゆきましたけど、まだ、したくができていません。
おばあさんは、ますます怒りましたけど、しかたがないので、お座敷の安楽イスに腰をかけましたら、とうとう気持ちがよくなって、まゆをしかめたまま眠りこんでしまいました。
夕方になりました。
「なんて、おもしろかったんだろう。
あしたまた遊ぼうよ。」と、耳がやぶけるような大きな声をして、ミケ子とトラ三が、窓の外を通ってゆきましたら、おばあさんはやっと目をさましました。
おばあさんは腹が立ってしかたがありません。
「野球をするのに、声をださないでするわけにはゆかんもんですかね。」と、あとのひとごとに怒りました。
ネコのおばあさんは、毎日、こんなふうに暮しています。
けれども、おばあさんはよいネコですから、けっして子どもがどんなにやかましくしても、怒鳴りつけたりはいたしません。
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