バビロンの国の人々は、「ベル」という名前の大きな神像(人形の神様)を信じていて、毎日その神像に、大きなお皿に山盛りの上等な小麦粉を12杯分と、40頭のヒツジ、そして6杯分のぶどう酒をお供えしていました。
そして、この国の王様もその神像を深く信じていて、毎日お祈りに行っていました。……でも、ダニエルという賢い男の子は、自分たちの本当の神様を信じていました。
ある日、王様はダニエルに言いました。
「なぜお前は、ベルの神様を敬わないのだ?」
ダニエルは答えました。
「それは、私が人間の手で作った人形を敬わないからです。私は、天と地を作り、すべての生き物を支配している、本当に生きている神様を敬っているのです」
すると王様は言いました。
「お前は、ベルが生きている神様ではないと言うのか? 毎日、あんなにたくさんのごちそうを食べて、お酒を飲んでいるのを知らないのか?」
その時、ダニエルはにっこり笑って言いました。
「王様、だまされてはいけません。あの像は、中身はただの粘土で、外側は金属(しんちゅう)でできているだけですから、食べることも飲むことも絶対にできませんよ」
これを聞いた王様は大怒り! すぐにお坊さんたちを呼び集めて言いました。
「もしお前たちが、これだけたくさんのお金をかけたごちそうを、一体だれが食べているのかを証明できなければ、お前たちをみんな死刑にするぞ! だが、もし本当にベルの神様が食べていると証明できたら、その時はダニエルを死刑にする。あの男は、ベルの神様をバカにするような失礼なことを言ったからな」
ダニエルは王様に言いました。
「おっしゃる通りにいたしましょう」
さて、ベルの神殿に仕えるお坊さんたちは、奥さんや子どもたちを除いて、全部で70人もいました。
王様はダニエルを連れて、ベルの神殿の中へと入っていきました。
すると、お坊さんたちが言いました。
「それでは、私たちは外へ出ます。王様、あなた様がごちそうとお酒を並べて、神殿の扉をぴったりと閉めてください。そして、王様のハンコ(印章)で扉に封をしてください。そして明日、王様が神殿に入ったときに、もしベルの神様がごちそうをすっかりきれいに食べていなければ、私たちは死ぬ覚悟をいたします。……でも、もし食べていれば、私たちをだまそうとしたウソつきのダニエルが死ぬことになります」
お坊さんたちは、ちっとも心配していませんでした。なぜなら、お供え物を置くテーブルの下に、秘密の入り口が作ってあったからです。彼らはいつもそこからこっそり忍び込んで、ごちそうをペロリと平らげていたのでした。
お坊さんたちが外へ出て行くと、王様はベルの像の前においしそうなごちそうを並べました。
そのころダニエルは、こっそり家来たちに「灰」を持ってくるように頼んでおきました。そして、王様だけが見ている前で、その灰を神殿の床いっぱいに、うっすらとまき散らしたのです。
それからみんなは外に出て、扉を閉め、王様のハンコでしっかりと封をしてから、その場を立ち去りました。
さて、夜になると、お坊さんたちはいつものように奥さんや子どもたちを連れてやってきました。そして、秘密の入り口から忍び込み、お供えのごちそうを全部きれいに食べたり飲んだりしてしまいました。
次の日の朝、王様は早くに目を覚まし、ダニエルをお供に連れて神殿へ向かいました。
王様は言いました。
「ダニエルよ、扉の封印は元のままになっているか?」
ダニエルは答えました。
「はい、王様、昨日のままでございます」
ダニエルが扉を開けるとすぐに、王様はテーブルの上を見て、大声で叫びました。
「おお、素晴らしい! ベルの神様よ、あなた様には、何のウソもありませんでした!」
その時、ダニエルは声を上げて笑いました。そして、王様が神殿の中へ入ろうとするのを引き止めて、言いました。
「さあ王様、床の石をよく見てください。この足跡は、いったいだれの足跡でしょうか? よく気をつけて見てください」
王様は言いました。
「おや……? わしの目には、大人の男や、女、それに子どもの足跡がたくさん見えるぞ!」
王様はだまされていたことに気づき、カンカンに怒りました。すぐにお坊さんたちを、その家族と一緒に捕まえさせました。追い詰められたお坊さんたちは、いつも自分たちがこっそり入り込んでごちそうを食べていた、あの秘密の扉を、王様に見せるしかありませんでした。
それゆえに、王様はお坊さんたちを死刑にし、ベルの神像をダニエルに渡しました。ダニエルは、ベルの神像と、その神殿をこなごなに壊してしまいました。
さて、その同じ国に、今度はとても大きな「ドラゴン(龍のような伝説の怪物)」がいました。バビロンの人々はこのドラゴンを、本物の神様として信じていました。
王様はダニエルに言いました。
「お前はこれも『ただの金属の人形だ』と言うつもりか? 見てごらん、これは生きている。食べたり飲んだりもする。これこそ、本当に生きている神様だと言わざるを得ないだろう。だから、この神様を信じるのだ」
その時、ダニエルは王様に言いました。
「私は、私の本当の神様だけを信じます。その方こそが、本当に生きている神様だからです。でも王様、もしお許しをいただけるなら、私はこのドラゴンを、剣も棒も使わずにやっつけてみせましょう」
王様は言いました。
「お前に許可を与えよう」
そこでダニエルは、ベタベタする木のヤニ(樹脂)と、動物のあぶら(脂肪)、そして髪の毛を集めて、それらを一緒にグツグツと煮つめました。そして、それを丸めて、いくつかのかたまりを作りました。
ダニエルがそのかたまりをドラゴンの口に入れると、なんとドラゴンはバラバラに裂けてしまいました。
ダニエルは言いました。
「ご覧ください、これがあなた方の信じていた『神様』の正体ですよ」
これを知ったバビロンの人々は、ものすごく怒りました。そして、王様に対して悪い企てを始め、口々にこう叫びました。
「王様はユダヤ人の仲間になってしまったぞ! ベルの神様を壊し、ドラゴンを殺し、お坊さんたちまで死刑にしてしまったのだ!」そこで、怒った人々は王さまのところへやってきて、こう言いました。
「いますぐダニエルを私たちに引き渡しなさい。そうしなければ、王さまを殺して、王さまのお城を焼き払ってやるぞ!」
王さまは、人々の勢いがとても激しく、どうしようもなかったので、しかたなくダニエルを彼らに渡しました。
人々はダニエルを、ライオンのオリの中へと投げ込みました。
ダニエルはそのオリの中に、まる六日間も閉じ込められました。
そのオリには七頭のライオンがいて、普段は毎日、動物の死骸ふたつとヒツジふ頭がエサとして与えられていました。
しかしこの時は、そのエサをわざと与えないことで、ダニエルをライオンに食い殺させようとしたのです。
そのころ、ユダヤ人の中にハバカクという一人の預言者がいました。彼はスープを作り、容器にパンのかけらを入れると、畑仕事をしている人たちにそれを届けるために、野原へと出かけていきました。
するとそこへ、神さまの使い(天使)が現れて、ハバカクに言いました。
「行きなさい。
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