初級翻訳・ヘンゼルとグレーテル 第4話

グリム ヴィルヘルム・カール

もう何も怖がるものはなくなったので、ふたりは魔女の家の中へとどんどん入っていきました。
家の中は、すみからすみまで真珠や宝石の入った箱でいっぱいでした。
「こりゃあ、森の小砂利なんかよりずっとすごいぞ!」
ヘンゼルはそう言いながら、ポケットに入るだけめいっぱい詰め込みました。
グレーテルも、「あたしも、おうちへのおみやげにするわ!」と言って、前掛けの中にいっぱいに詰め込みました。
「さあ、そろそろここを出発しようよ」とヘンゼルが言いました。
「なにしろ、魔女の森から抜け出さなくちゃならないんだからね」
ふたりが二、三時間ほど歩いていくと、大きな川のところに出ました。
「これじゃあ、とても渡れないや」とヘンゼルは言いました。
「橋もないし、いかだもない、渡る道具が何もないよ」
「ここには渡し舟もないみたいだわ」とグレーテルが言いました。
「でもあそこに、白いカモが1羽泳いでいるわ。きっとお願いすれば、向こう岸へ渡してくださるわよ」
そこでグレーテルは声を張り上げて呼びかけました。

「カモちゃん、カモちゃん、小ガモちゃん、
グレーテルとヘンゼルが来たけれど、
橋もなければいかだもない、
おまえの白いお背中に乗せて、
向こうへ渡してくださいな」

カモはすぐにスーッと泳いできてくれました。
そこで、まずヘンゼルが背中に乗り、小さな妹にも一緒に乗るように言いました。
「ううん、ダメよ」とグレーテルは答えました。
「そんなにふたりも乗ったら、カモちゃんがとても重いでしょう。別々に連れていってもらうわ」
優しいカモは、その通りにしてふたりを別々に運んでくれました。
こうして、ふたりは無事にに向こう岸へと渡ることができたのです。

そこからまたしばらく歩いていくと、だんだんと見覚えのある景色になってきました。
そしてついに、遠くの方にお父さんの小屋が見えてきました。
さあ、ふたりは一目散に駆け出していったのでした。二人はお家の中に勢いよく飛び込んで、お父さんの首にぎゅーっと抱きつきました。
この木こりのお父さんは、子どもたちを森の中に置き去りにしてしまってからというもの、ただの一度も笑顔になれるときがありませんでした。
ちなみに、いじわるなお義母さんは、もう死んでしまっていました。
グレーテルが、前掛けをパッと広げて振りました。
すると、まばゆい真珠や宝石が、お部屋いっぱいにコロコロと転がり出しました。
今度はヘンゼルが、ポケットの中に手を突っ込んで、何度も何度も宝石をつかみ出しては、床の上にバラバラとばらまきました。
これでもう、これまでの心配や苦労は、すっかりきれいに吹き飛んでしまいました。
親子三人は、それからは本当にうれしいことばかりで、いつまでも一緒に仲良く暮らしました。
さあ、わたしのお話もこれでおしまいです。
ほら、あそこに小さなネズミがちょろちょろと走っていますよ。
もしつかまえた人がいたら、そのネズミの毛皮で、自分用の大きなあったかい帽子を作ってみてくださいね。

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