来月、真打として看板を上げたら、俺は高座で本物のラッパを吹いて、この乗合馬車の御者の物真似をしてやろう。
そうして、これほどまでに開化した日本の美しい姿を、せめて俺も自分らしい芸のなかで祝福しよう。
途端に圓太郎は、右手で鞭を打ち鳴らす格好をし、左手をラッパに見立てて口に当てました。
一瞬にして、彼は御者になりきっていました。
やがて「ラッパの圓太郎」と謳われて一世を風靡し、昭和の今日まで「圓太郎馬車」の名を遺すことになったのも、もっともなことでした。
プープープーとラッパの音を口で奏でながら、圓太郎は間もなく群がる人波を押し分けかき分け、
「お婆さん、お婆さん、危ないよ」
と代地のほうへ駆け出していきました。
あとからお八重が、顔を美しく上気させながら、夜霧のなかを同じように駆け出していきました。
初級翻訳・円太郎馬車 第7話
円太郎馬車
コメント