初級翻訳・大根とダイヤモンドの話 第2話

大根とダイヤモンドの話

」と、地主は歩きながら植木屋にたずねました。
「だんなさま、このとおり雲ひとつない上天気でございます。このぶんですと天気がつづくだろうと思います。」と、人なつっこい植木屋は答えました。
そのあくる日は、いよいよその山の中にはいるのです。
力の強い案内人を二人も頼みまして、山奥へと道を分けてはいってゆきました。
歩きつけないけわしい道を登りますときも、地主は目にダイヤモンドの光を見つめていました。
それがために、苦しさをも忘れました。
変わりがちな秋の空は、たちまち雨になりました。
ことに、山の中はもう寒かったのであります。
こんなときも、地主はダイヤモンドの光を目に描いて、苦痛を忘れたのであります。
やっと、植木屋があちらの岩角に光るものを見たという場所までたどりつきました。
ちょうど空はよく晴れて日の光があたりにあふれていました。
それは真夏の時分と違って幾分か弱く、また暑さもひどく感じなかったけれど、深い谷川を隔ててあちらの岩をも日光は照らしていたのであります。
植木屋は、もしやあの光るものがいつのまにかなくなりはしないかと心配でなりませんので、さっそくその方を見ますと、ちかちかとまぶしく光るものがあったのです。
「なるほど、あれはなんだろう?」
「不思議だ。」
「なんだろう。」
みんなはその方を見て、頭をかしげていました。
地主はこれを見ると、高いお金を使ってここまでやってきたかいのあったことを喜びました。
それにしても、あすこへはどうしていったらいいだろう?
いままで黙っていました案内者の一人は、はじめて口を開いて、
「なにけい、光っているあれけい、ありゃ、岩の裂けめから水がわいているのだ。」と、ゆったりとした調子でいいました。
「え、水?」
「水か。」
「水だろうか?」
みんなはあの光るものはほかのなんでもない、水であったとわかって、あっけにとられてしまいました。
中にも、地主と植木屋は光るものがガラスか、ダイヤモンドか、二つよりしか考えつかなかったのでありました。
「そういえば、水にちがいない。」と、みんなはじめて思いました。
岩の鼻から水がわくことは、きわめて自然なことであったからであります。
地主は帰りには不平のいいつづけでした。
植木屋に向かって、
「おまえは商売がらでありながら、岩角から水のわき出ているのがわからないとはどういうことだ。」といいました。
さすがに人なつっこい植木屋も、ちょっとした話がこんなことになるとは思いませんでした。
こういわれても、返事することができなかったのであります。
村に帰ると、その間に百姓は怠らずに働いていました。
地主ははじめて、まじめに働かなければならないと知りました。
そして、こうして精を出したからあのみごとな大根はできたのであろう。地主は、いつの間にか、あの百姓が持ってきてくれた立派な大根のことを思い出していました。
そして、あんなに素晴らしい大根を、植木屋にあげてしまったことを「もったいないことをしたなあ」と後悔したのです。
なぜなら、植木屋がお礼にとくれたシャクナゲの木は、もうすぐに枯れてしまったからです。

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