初級翻訳・山のコドモ 第1話

山のコドモ

ヤマキチは、山の奥に住む木こりの子どもでした。
小さいころから、山の動物や鳥たちと仲よく遊んで育ちました。
ある日、ヤマキチの友達である一羽の大きなタカが、ヤマキチをひろい翼に乗せ、まるで飛行機のように空を飛んで、しばらく高い木の上で休みました。
そのとき、はるか遠くの方に、緑の水が限りなく広くつづいている世界が見えました。
ヤマキチは、生まれて初めてこんなめずらしい景色を見ましたので、ふしぎでたまりません。
タカに、あれはどこかと尋ねました。
あれは海という水の世界なのだと、タカは答えました。
それから、あそこには魚というきれいな泳ぐものがいて、それはそれはおもしろいところなのだと、タカはヤマキチへ教えました。
ヤマキチはその話を聞いて、すぐに海というところへ行きたくてたまらなくなりました。
そして、タカにどうかあそこへ連れて行ってくれと頼みました。
タカもとうとう断りきれず、そのまま翼にヤマキチを乗せ、海をめざして飛んでゆきました。
海の真ん中に、大きな岩がありました。
タカはヤマキチをそこへ下ろし、しばらく空を飛んでから、また様子を見に来る約束をしました。
ヤマキチは、そこらに楽しそうに泳いでいる魚に言いました。
「みなさん、ボクと遊んでください」と。
すると魚たちは、それではここまで泳いで来なさい、とヤマキチに言います。
ヤマキチは困って、ボクは山に育って泳ぎは知らない。
と申しますと、魚たちはさもさもバカにするように笑って、泳ぎもしないで海に来るなんて、きみは大バカさんだと言って相手にしてくれませんので、ヤマキチは今度は波に向かって、ボクを泳がせてくださいと頼みました。
すると波は、山の子供が海に来るなんて生意気だと怒って、ヤマキチを一巻き巻いて岩の上へたたきつけました。
ヤマキチは痛くておいおい泣いていますと、タカが迎えに来ましたので、急いで山へ連れて帰ってもらいました。
山ではヤマキチの仲よしのいろいろの鳥やけものが、ヤマキチの帰りをたいそう喜びまして、歌をうたうやら踊りを踊るやらして歓迎しました。
ヤマキチは海でひどい目にあった話をし、山で育った自分はいつまでも山で君たちの友達で暮らす、と申しますと、鳥やけものたちは大喜びで、今日から山の子供のヤマキチさんを、僕たちの大将さんにしましょうと言って、山のお花を摘みあつめ、ヤマキチの肩や胸にいっぱい飾りつけました。
それが山の太陽にかがやいて、ちょうど勲章のように見えました。

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