初級翻訳・山へ登った毬 第1話

原 民喜

史朗(しろう)くんは、この春からピカピカの一年生になりました。
まだ学校へ行く道をしっかり覚えられないので、お手伝いのお姉さんが一緒に連れて行ってくれます。
お姉さんは、史朗くんの妹をおんぶして歩くのでした。
妹の手には、とてもきれいな毬(まり)が握られています。
その毬は、お姉ちゃんが東京のお土産に買ってきてくれたものでした。
毬には、きれいな桃の花が咲いている山の絵が描かれています。

さて、ある日のことです。先生が「みんな、今日はこれから山へ登りましょう!」と言いました。
子どもたちはそれを聞いて「わーい!」と大喜びしながら、学校の門を元気に出発しました。
山は学校のすぐそばにあったので、すぐに登ることができました。
みんなで草むらに散らばって、思いきり遊びました。
山には桃の花がピンク色に咲いていました。
史朗くんも、妹も、みんなそのあたりで楽しく遊びました。
しばらくして、みんなで山を下りました。
史朗くんはお手伝いのお姉さんに連れられて、お家に帰りました。

お家に帰ってからふと気づくと、妹の大切な毬がなくなっているのでした。
「どうしたんだろう?」「どこにやっちゃったのかしら?」と、家中を大慌てで探しましたが、どこにもありません。

毬は、山へ連れて行ってもらったのが嬉しくて、急に元気になって勝手にはね回り、ころころと転がっていって、そのまま「なんだかこの山は、僕に描かれている絵とそっくりだなあ」なんて言いながら、のんびり寝転がってしまったのでしょうか。

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