とにかく名は塵でも、わが地球にとっては尊いもので、宇宙に落ちている宝と呼んでもいいほどだ。ギンネコ号のような宇宙採取艇は、そういう宇宙塵を拾い集めるのを仕事にしているロケット艇なんだ。これは商売としてもなかなかいい儲けになるし、われわれ地球人にとっては大変な利益をもたらしてくれる。つまり、地球にない資源が、宇宙採取艇のおかげで手に入るわけだからねえ」
「じゃあ、隕石を拾うのですね」
「いや、隕石だけではない。もっといいものがいく種類もある。なかには、まだわれわれ地球人が全然知らない物質にめぐり合うこともある。たとえばカロニウムとかガンマリンなどは、地球にないすごい放射能物質で、ともにラジウムの何百万倍もの放射能を持っているんだ。こんな貴重な物質がどんどん採取できれば、実にありがたいからね。それを使って人類はすごい動力を生み出し、すごいことができるようになる」
「それなら国営かなんかで、うんと宇宙採取艇を出すといいですね」
「うん。だがね、そういう貴重な宇宙塵は、なかなか簡単には手に入らないんだ。何千か何万もの宇宙塵の中に、ひとかけら探し当てられるだけでも大変な幸運なんだからね。宇宙採取艇で乗り出すのは、昔でいうと金鉱探しやダイヤモンド探し以上に、成功する確率が低いんだ。宇宙塵採取屋は『世界一のごろつき連中』だと悪口を言われることもあるが、それはこのように貴重な宇宙塵を見つけ出すことが、とてつもなく難しいからだよ。まあ、そんなところで話はおしまいさ」
帆村荘六の説明は、三根夫をかなり不安にさせたようであった。
三根夫は眉を寄せて言った。
「じゃあ、おじさん、これから僕たちが出会うことになっているギンネコ号も、やっぱり宇宙のごろつきなんですね。すごい連中が乗り込んでいるんですね」
そういう「すごい連中」と、こんな寂しい宇宙で出会うなんて気持ちのいいことではないと、三根夫は思ったのだ。
すると帆村が言った。
「いや、宇宙採取艇の皆が皆、ごろつきだというわけではない。それにギンネコ号なら、たぶんこのおじさんの知っている鴨さんという艇長が乗り込んでいるはずだ。あの人は、決してごろつきではないよ」
それを聞いて三根夫は、やっと安心した。
宇宙のめぐりあい
果てしなく広々とした、暗黒の宇宙。その宇宙の中の一点において、二組の宇宙旅行者が出会った。
救援艇隊では、テッド隊長の命令によって、各艇の外側の照明を美しい七色の虹のように変えた。各艇は輪になって、その真ん中にギンネコ号を迎える隊形をとった。
相手のギンネコ号の方は、そんな派手なことはしなかった。艇首に三つばかりの色のついた灯火をつけ、『われ、貴隊に会うを喜ぶ』という信号を示しただけであった。そして、ひどく型の古い艇身に、救援隊側からのサーチライトを浴びながら、輪形編隊の中へと飛び込んできた。その格好は、なんとなく気まずそうに見えた。
ギンネコ号が一度救援艇の輪の真ん中を通り抜けると、今度は救援隊があざやかに大きく百八十度の大旋回をして、ギンネコ号の後を追った。そしてやがてそれに追いついて、再び前のようにギンネコ号を真ん中にはさみ、救援艇九台がその周りをとり囲んだ。
双方のスピードは、ぐんと低いところに保たれた。こうしてゆっくりと暗黒の宇宙を漂いながら、話をしようというのであった。隊長テッド博士は礼儀正しい人物でしたから、ギンネコ号の艇長に対して無線で丁寧な挨拶を送ったうえで、「失踪した『宇宙の女王』号について、貴艇がご存知の情報を詳しく伺いたい。つきましては、こちらから副隊長のロバート大佐と隊員四名、計五名を貴艇へ派遣することを許可願いたい」と申し送りました。
これに対するギンネコ号からの返事は、ずいぶんと時間がかかりました。
救援隊の若い隊員たちは、ギンネコ号に対して「なぜ早く返事をよこさないのか」と催促の無線を打ちたがりました。一度や二度ではありませんでしたが、テッド隊長は「まあ、まあ、そう相手を急かさないほうがよかろう」と、催促の無線を打たせませんでした。
三十分ほど経ってから、ようやくギンネコ号からの返信が届きました。
「本艇は、有力な資料をほとんど持っていない。
貴隊から使者が来るのは差し支えない。
ただし五名は多すぎるから、三名にしてもらいたい」
この返信が記された受信紙の周りに集まった若い隊員たちは、ギンネコ号の無礼さに憤慨しました。なかには「こちらから送る使者の人数に制限を加えるとはどういうことか」と、文句を言いに行こうと叫ぶ者さえいました。
しかし、これもテッド隊長の一言でようやく静まり、それから三名の使者の人選が発表されました。
それによると、第一は副隊長のロバート大佐、第二にポオ助教授。このポオ助教授は、『宇宙の女王』号の艇長であるサミユルの門下生の一人です。
そして第三には、皆を意外に思わせましたが、帆村記者が選ばれました。
これを聞いた三根夫少年は、帆村荘六の横っ腹を小突きながら、「おじさんはいいなあ。うらやましいよ」と言いましたが、帆村は笑いもせず怒りもせず、無神経な顔つきのまま、首を微動だにさせませんでした。
「それでは、これから三名に出かけてもらおう。何かお土産を持っていってあげるといいだろう。新聞と雑誌、それから果物を数種類用意してくれ」
テッド隊長は細やかな気配りをしました。
一行が出発しました。司令艇の側壁の一部がするすると動き出したかと思うと、それは引き戸のように艇の外郭の中へ隠れ、あとに細長い楕円形の穴がぽっかりと空きました。
すると間もなく、その穴から円板のようなものが飛び出しました。それは周囲から黄色い光を放ち、まるで南京花火のようにくるくると回りながら、闇を縫って飛んでいきました。
これは円板式の軽ロケットで、船でいえばボートにあたるものです。くるくると回っているのは周囲のタービンの羽根のような部分だけで、真ん中の厚みのある部分は回転しません。その中に、この円板軽ロケットの乗組員たちと三名の使者が乗り込んでいました。
パッパッと黄色い光の輪を輝かせながら、円板ロケットは大きな弧を描いたあと、調子よくギンネコ号の後方から近づいていきました。
ギンネコ号は知らん顔をして飛び続けています。しばらくの間、円板ロケットはギンネコ号の下で平行に飛んでいましたが、そのうちに円板ロケットからは「ポン」と引力錨(いかり)が打ち出されました。
それは円板の中央あたりから飛び出したもので、樽のような形をしており、後ろに丸い紐のようなものを引きずっていました。しかしよく見ると、紐ではなく伸び縮みする螺旋状の梯子でした。その先についている大樽のような装置は、艇内から送られる電気力によって、相手のギンネコ号の艇壁にぴったりと吸い付きました。
この引力錨は強力な吸引力を持っていて、艇内で電気を切らない限り、決して相手から離れることはないという、安心できる宇宙用の錨でした。
これでギンネコ号は、側壁の扉を開かないわけにはいかなくなりました。すると円板ロケットの中から三人の人影が現れ、やや横に吹き流された螺旋梯子を上へ登っていきました。そして梯子を登りきると、ギンネコ号の横腹に開いた穴の中へ潜り込んでいきました。
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