初級翻訳・恐竜島 第24話

恐竜島

だんだんと奥へ入っていきましたが、入り口から七、八メートル進んだところで突き当たりになっていました。壁の真ん中には、船の舷窓(げんそう)くらいの穴が一つ開いています。そのあたりは少し高くなっており、壁も垂直に削られていましたが、掘るのが大変だったのか、奥行きの狭い棚のようになっていました。

ケンは一番奥の場所に胡坐(あぐら)をかくと、言いました。
「ここでしばらく形勢を見守ることにしよう。とにかくここへ潜り込んでおとなしくしていれば、恐竜に襲われることはないだろう」

一同もケンの意見に賛成し、ホッと安堵の表情を浮かべました。
この洞穴の中にも、怪獣たちの恐ろしい咆哮(ほうこう)が響いてきます。銃声はもう聞こえません。一体、崖の上では何が起きたのでしょうか。

すべてはモレロの乱暴と、彼と二人の水夫の欲張りな根性に端を発していました。
モレロと二人の水夫はロープにすがって、崖の中段まで下りていました。海中の岩の上でピカピカ光るものに、少しでも近づくためです。

モレロは、その光るものの正体をもう少しはっきりと見極めたいと考えていました。彼は二人の水夫のように、それが黄金色の恐竜の卵だなどとは思っていません。大昔の海賊が持ち込んだ金貨か、黄金製の装飾品か、あるいは武器の類だろうと見当をつけていたのです。
あいにくと望遠鏡を持ってきていなかったため、残念で仕方がありませんでした。そこで崖の中段まで下り、二人の水夫に命じて、小さな岩の欠片をその光るものに向かって力いっぱい投げさせてみたのでした。それがうまく届いて命中すれば、音がするだろうし、また位置が変わったり、あるいは弾き飛ばされたりするはずだ。それによって、ピカピカ光るものが何であるかを、もっと正確に判断することができるはず――と、モレロは彼らしい知恵を働かせたのでした。

フランソアとラルサンは、水夫になって以来初めて命じられたこの仕事を、とにかく始めました。上の崖から落としておいた岩の欠片を足元から拾い上げ、「えいッ」「それッ」と投げ続けたのです。

ところが、モレロが考えたようには、なかなかいきませんでした。うまく命中してくれないのです。そればかりか、とんでもないものに命中してしまいました。眠っていた恐竜の鼻に、岩の欠片がごつんと命中したのです。

さあ、大変。恐竜がぐいと鎌首をもたげると、うなり声をあげて怒り出しました。仲間の恐竜も目を覚まして、びっくり半分、騒ぎ出しました。そこへモレロがピストルをポンポンとぶっ放したものだから、騒ぎはさらに大きくなりました。恐竜は嵐のような息を吐いて、人間どもに襲いかかったのでした。三人は今や最大の危機にさらされたのです。

一方、洞穴の中にいち早く避難した玉太郎にケンとダビット、それから張の四人組の方にも、一大危険が襲いかかっていました。というのは、運の悪いことに、潮がだんだんと満ちてきたのです。四人が閉じこもっている場所は、刻々と狭くなってきました。早い時期に外へ飛び出した方がよかったのかもしれません。

だが、四人はすっかり疲労しきっていた上に、恐竜の咆哮がおさまるとともに心のゆるみが一度に出て、四人とも前後も知らず、深い眠りに落ちていたのです。やがて気がついたときは、身体の一部が海水に浸されており、そして洞穴の入り口は海水のために隙間もなくふさがれていたのでした。

「おい、起きろ、起きろ!」

ケンが真っ先に気がついて、一同を起こしました。ダビットは足をすっかり水浸しにしていました。ケンと玉太郎はそれほど濡れていませんでした。

「まだ潮は上がってくる。どこまで上がってくるか分からないが、まさか天井まで浸すことはあるまい。みんなこっちへ固まろう」

一同は窮屈な格好で、奥へ集まりました。どこまで水は上がってくるのか。もうこの辺で止まるだろうと思いきや、水は勢いをゆるめず、水位を上げてきました。

ケンは、その頃、いやなことに気がつきました。それは後ろの岩壁の穴から、空気が抜けていくということでした。もしこの穴がなかったら、洞穴は壺のようになっていて、潮が入るにつれ空気が圧縮される結果、海水を押しのぼし、ある程度以上は海水を入れずに済んだはずです。ところが、壺の底に穴が開いていると、空気は圧縮されないから、この洞穴はすっかり水浸しになってしまうおそれがあります。

いやなことは、まさにこのことでした。四人が入り込んだ安全な洞穴が、四人にとって溺死の墓穴になろうとしているのです。ああ、これも呪われた運命というべきであろうと、ケンは全身に冷や汗をかきました。

冒険の計画

悪運が強いということがあります。モレロと二人の水夫の場合がそうでした。この三人は恐竜を怒らせてしまい、四頭からの激しい襲撃を受けましたが、危うい瀬戸際をどうにか防ぎ守って、やっとのことで命を拾ったのです。

隙を見て、三人は死にものぐるいの素早さでロープをよじ登り、夢中で地下道を駆け抜け、密林をかき分け、ようやく海岸の基地へたどり着きました。そのとき三人が三人とも、熱い砂の上に、オットセイが叩きつけられたような格好で意識を失い、三十分ばかり死んだようになっていました。先へ逃げ帰っていた実業家マルタンとツルガ博士親子の熱心な看病によって、やがて三人は息を吹き返したのです。

その当座は、彼らも気まずいと見えて、おとなしく神妙にしていましたが、時間が経つに従って元に戻っていきました。悪運に乗るモレロは、翌朝になると早くも次の目論見に手をつけました。彼は二人の水夫を連れて、海岸伝いに右の方へ歩き出したのです。

それに気がついて、マルタンは天幕から飛び出すと、大声で彼らを呼び止めました。そして彼らがどこへ行くのか知らないが、それよりも今日はすぐに恐竜洞へ入って、昨夜はついにかえらなかった玉太郎たちの安否を確かめ、必要なら救助作業をしてもらいたいものだと申し入れたのです。

「まあ、それはあとでいいよ。もっとも、君が早くそれをやりたいというのなら、われわれにかまわず、先へやってくれて差し支えない」

モレロはそう言うと、再びマルタンの方へ振り返ろうともせず、二人の水夫を後ろに従え、砂をざくざくと踏んで行ってしまいました。三人は一体、何をするつもりなのでしょうか。そこをどんどん進んでいくと、読者の皆さんもご存じの通り、石垣でできた小さな桟橋がある。
それを越えたところに、カヌーがひっくり返ったまま放置されていた。
そこを右手へ曲がる。
少しだけ切り開かれた土地があるのだが、今では人間の背丈よりも高く雑草が生い茂っていて、一見しただけでは足を踏み入れる隙間すらない。
三人は、その雑草をかき分け、奥へ奥へと入っていった。
左右に並ぶヤシの木の列を目印にして、その間をずんずんと突き進んでいく。
その道は、わざとそうしたかのように、くねくねと曲がりくねっていた。
外海から見つからないようにするためだろうと思われたが、その道の突き当たりに、この原始の森の世界には似つかわしくない洋風の小屋が建っていた。
それは造船所であった。
いや、あまりにお粗末なものだから、造船小屋と呼んだほうがいいだろう。
戸は開けっ放しになっていた。

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