そのことを帰ったらみんなに知らせてください」
「わたしたちのために、そんな会を開いてくださるのですか」
「あなたがたがその会に出れば、わたしたちの気持ちももっとはっきりわかってくれるでしょう。さあさあ、にこにこ笑って、ここをお引き上げなさい」
大食堂の異風景
その翌日の大歓迎会は、まったくすばらしいものでした。また、とても珍妙なものでもありました。テッド隊長以下、三百名に近い隊員全員が、この町の大宴会場『キング・オブ・スターズ』に招待されたのです。その招待の正式なあいさつは、いつどこから忍び込んだのかわからないまま、姿は見えぬものの声だけのガンマ和尚から、九台の宇宙艇内へ漏れなく伝えられました。
「へえーっ、俺たちを招待するってよ。何を食べさせるのかな。気味が悪いね」
「なあに、その心配はないさ。怪星ガンは大きな世帯らしいから、まさかわれわれの口に合わない彗星料理や星雲ビールなんかを出すことはないと思うよ」
「なんだい、その彗星料理だとか星雲ビールというのは。いったいどんなものか」
「さあ、どんなものか俺も知らないが、お前がそのへんてこなものが出るか心配していると思って、ちょっと言ってみただけさ」
「ははは。何をでたらめを言っているんだ」
一同がなによりも喜んだのは、艇を出て、外を自分の足で歩けるということでした。まったく長い間、狭い艇内にこもってばかりいたので、飽き飽きしていたし、足がなまってしまったような感じだったのです。それが今回の招待によって艇を出て、外をてくてく歩くことができるなんて、こんなにうれしいことはありませんでした。それは、招待日の当日は病人がひとりもいなくなったことからも分かります。
その前には、三根夫少年はみんなから引っ張りだこでした。三根夫が一足早く怪星ガンの町を見てきているので、町の様子について三根夫は詳しく答えることができたからです。
「いろいろなものを売っているんだよ。食べ物や飲み物や服がない人は、ただで買えるんだ。そうでないものは、お金を出さないと買えない。それからね、ガン人はたくさん歩いているらしいんだけど、僕らの目にはまったく見えないんだ。これには面食らうよ」それからガン人たちはぼくらより高等な人間らしいところもあるけれど、地球の上のことをじゅうぶんに知っていないらしい。だから、ぼくの持っていた南京鼠をガン人が見て非常警報をだしたくらいだ」
「へえーッ、あきれたもんだね。うわッはッはッ」
「はやく町へいってみたいなあ。出発はまだかしらん」
出発命令がでて、一同はぞろぞろと艇を出、横にのびた橋を渡り、れいの光る高い塔をおりていった。そして町へはいった。みんなは、小学生の遠足のようにはしゃいでいた。歩くことだけでじゅうぶんうれしいところへもってきて、うつくしい商店のならぶ町を見、ただで手にはいるというおいしそうな果物や菓子をながめ、まったく夢のなかにいる感じだった。
大宴会場キング・オブ・スターズは、すぐ目のまえに高くそびえて、昼間だというのに、七色のうつくしい光りの束でかざられ、テッド博士以下を歓迎するという光りの文字がつづられては消え、消えては綴られた。会場へはいっていくと、たえず頭のうえに案内人の声がして、一同は席につくまで、すこしもまごつくことがなかった。
その大食堂というのが、これまた変っていて国技館のように円形になって卓がならび、そして外側は高く、内側へいくほど低くなっていた。どこで調べたものか、隊員たちの名まえがはっきりと席の上にカードにしるしておいてあった。そこで席についてみるとふしぎなことがわかった。隊員たちは一つの空席をおいてとなり合って席をとるようになっていた。
「みょうなことをしたもんだね。間に一つずつ空席があるじゃないか。そっちへ席をうつして、きみのとなりへすわることにするよ」
そういって隊員のひとりが、じぶんの席をたたいて、友だちのとなりの空席へうつそうとした。すると、とつぜんその空席の椅子がひとりでぎしぎしと鳴り、そして空席のところから若い女の声がとびだした。
「あッ、この席にはあたくしがおりますのよ」
これには面くらって、うしろへさがった。
「ええッ、なんとおっしゃる」
目をさけるほど見はったが、となりの席はやっぱり空席だった。
「そんなにこわい顔をなすっちゃいやですわ。どうぞあなたの席におつきくださいませ」
「はい。しょうちしました。しかしあなたの声はすれどもお姿はさっぱり見えないのですがね」
「そうでございますか。ご不便ですわね。ほほほほ」
「いや、笑いごとではありませんよ」
そのときガンマ和尚の声がひびいた。
「みなさんに申しあげます。みなさんをお招きしたわたしどもの姿が見えませんために、いろいろとおさわがせさせてすみませんでした。それでただいまよりわたしどものつけております衣裳だけを、見えるようにいたしますから、それによってわたしども主人側の市民たちが、どのようにたくさん、そしてどのように熱心にみなさんを歓迎しているか、お察しください」
といったかと思うと、ああらふしぎ、この大食堂の中は一時に百花が咲いたように、美しいとりどりの衣裳が、隊員と隊員の間の空席に現われた。
「おお、これは……」
「どうぞよろしく」
衣裳だけのへんてこなものが、左右へあいさつをした。まったく珍妙な光景だった。
変調|眼鏡
宴会はそれから軽快な奏楽とともにはじまって、でてくる飲みものや食べるものの豪華なことといったら、隊員たちのどぎもをぬくにじゅうぶんであった。隊員たちは、はじめは気味がわるかったが、口にいれたものがおいしかったので、それからあとは飲み、そして食べ大きげんであった。歌を歌うものもあり、ダンスを見せるものもあった。
「もうこのへんで、主人側の美しい顔を見せてくれてもいいじゃないか」
酔っぱらった隊員のひとりが、席に立って腕をふっていた。
「いや、いずれ見ていただく日がきましょう。それまでお待ちください」
「もう待ちきれませんね。衣装だけのお化けと酒もりしているのはやりきれませんからね」
「ごもっともです。しかし、物事には順序というものがあることを、みなさんもごぞんじでしょう」
とガンマ和尚はいった。
「なにが順序だって……」
「とにかくわたしどもの希望しますのは、みなさんは長途のお疲れもあることとて、すべての心配と危惧をすててとうぶんはゆっくりとお好きなものをたべ、お気にいったところを散歩して、健康を回復していただきましょう。そのうえで、わたしたちはさらに新しいことをお話いたすでありましょう。とにかく、みなさんの生命はぜったいに安全なのでありますから、安心していただきます」
「なぜ、わしらを大切に扱ってくれるのかね。あとで請求書がくるんだろう。こわいね」
「あははは。なかなかきびしいおことばです。そうです。」「みなさんが十分に元気になられたら、わたしたちはみなさんに、ぜひ相談に乗っていただきたいことがあるのです。それは何であるか。ただいまは申しません」
「やっぱり、そうだったか。
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