初級翻訳・恐竜島 第28話

恐竜島

彼には別の目的があったのですが、当時の探検団の企画は、南の孤島に住む生物を研究するというものでした。私は理学の中でも動物を専門に研究していたので、喜んで参加いたしました。そしてこの島にやって来たのです」
「セキストン伯が狙っていたのは生物ではなく、この島に隠された海賊の宝だったんじゃないかな?」
ラウダの話の途中で、ケンが口を挟みました。
「その通りです。約八百八十年も昔、スペインの海賊船『ブラック・キッド号』がこの島に財宝を隠したという、確かな証拠があったのです。セキストン伯はそれを知っていました。だからこそこの島に来たのです」
「それで、宝は見つけられたのかい?」
「見つけられませんでした。二、三枚の金貨を拾った程度です。波に砕けた宝箱の破片も手に入れました。ですから、海賊の宝がこの島にあったということは証明されたのです。ですが、それを手に入れる前に引き揚げざるを得ませんでした」
「それは何が原因だったんだ?」
「恐竜です。恐竜の存在に、探検団の連中はすっかり腰を抜かしてしまったのです」
「わかったぞ。探検団は引き揚げた。その船は恐竜に襲われて、乗組員はほとんど死んでしまった。残ったのはセキストン伯ただ一人だけだった……と、伯が僕らに話していたっけ。けれど、もう一人生き残った者がいたんだな。彼は何らかの方法で島にたどり着き、この孤島で救いを待ちながら一人で生活していた。その男というのが、ラウダ君、君なんだね」
「そうです。その通りです」
ダビットの説明に、ラウダは深く、大きくうなずきました。
そして言葉を続けて、「言い落としたところを補うならば……」と言いました。
「うん」
ケンが身を乗り出しました。
「僕、ラウダはあれから五年の間に恐竜の性質を研究し、キッドの船をこの洞窟の中の湖で発見したのです。船の中には宝らしいものはありませんでしたが、その宝は島の洞穴の一部に隠されていること、そしてそこへ行くには恐竜の巣を越えて行かねばならないこと、それらを発見したのです」
「さっき見た船、あれがキッドの船なのかい?」
玉太郎は目を輝かせました。
「そうだ」
ラウダはお湯を一杯飲むと、こう続けました。
「ブラック・キッドは、自分の死期が近づいてきたのを知ると、かねてから探し当てていたこの島へやってきました。この島の入り江の洞穴には、船を丸ごと隠せるだけの広さがあることを知っていたのです。しかも一度入れた船は、岩を崩すことで永久に出られない仕掛けになることも計算済みでした。キッドは船をここへ入れ、入口を岩で塞いだのです」
「その時、恐竜はいなかったのかな?」
「さあ、それはわかりません」「恐らくいなかったのだろう。たとえいたとしても、島の別の場所に住んでいたのかもしれないね」

「うん。それで、キッドはどうしたんだい?」

「キッドは宝を子分たちに運ばせると、その子分を一人残らず殺してしまったんだ。だから、世界中でキッドの宝がどこに隠されているかを知っている者は誰もいないのさ」

「でも、セキストン伯爵はその場所を知っていたんだろう?」

「その通りだ。キッドは宝の隠し場所の秘密を、自分の子孫にこっそりと伝えたに違いない。セキストン伯爵は彼の子孫からその秘密を買い取ったか、あるいは偶然の機会に知ったのだろうね」

「それで探検隊を組織したんだね」

「そうなのだ。僕らは彼に騙されて、安い賃金で雇われてここにやって来たのさ。その結末が、こうして君たちと出会うことになったというわけだ」

「うん、助かってよかったね」

「本当によかったよ。僕は救われたんだ。これでイギリスに帰れる。文明社会に戻れるんだ!」

「その宝がどこにあるか、君は知っているのかい、ラウダ君?」

今まで黙っていた張が、後から声をかけました。

「知っていますよ。けれど、恐竜がそれを守っているんです。僕らには手が出せません」

張はがっかりしたような顔をしました。

「君は少し喜びすぎているよ、ラウダ君」

ケンが口をぎゅうっと結びました。

「君は僕らに会えて帰れると喜んだが、僕らの乗ってきた船も、第一回のセキストン探検隊と同じ運命をたどったんだ」

「えっ、じゃあ、また恐竜にやられたんですか?」

「そうだ。僕らはこの島に取り残されてしまったのさ。君の仲間入りというわけだよ」

「……」

ラウダは手にしていた湯飲みの缶をカラリと落としました。その缶はカラコロリンと音を立て、ラツール記者の方へ転がっていきました。誰もそれを拾う者はいませんでした。また、誰も言葉を発さず、ただ黙り込むばかりでした。

ポチよ、大手柄だ!

一同はラウダの洞穴で十分に休養を取りました。海岸に残っている仲間たちに、自分たちが無事であることを知らせて安心させてやりたいと思いましたが、まずは体の疲れをとることが第一でした。

「おい、ポチ。お前、伝令ができるか?」

玉太郎がポチに言いました。ポチの首輪に手紙をつけて、みんなのところへ使いに行かせれば、仲間たちも安心するはずです。

「玉ちゃん、そいつは無理だよ。いくらポチが名犬だといっても、伝令の役目はできないだろう」

「でもラツールさん、ポチはとっても利口なんです!」

「それだったら、すぐに君が今危険な状況にあることを察して、僕に伝えてくれるはずだ」

玉太郎には、なんとも返事のしようがありませんでした。けれど、やらないよりはやったほうがいいはずです。無駄になったら、その時はその時です。

「おいポチ、お前は僕らの手紙を持って、使いに行ってくれ!」

ポチはいいとも悪いとも感じない様子で、しきりに尾を振っていました。

「ラウダさん、手紙を書きたいんですが、紙と鉛筆はありませんか?」

「紙と鉛筆なら、僕が持っているよ」

ダビットが胸のポケットから手帳を出しました。それには鉛筆がついています。ケンが手帳の紙を一枚抜き取り、そこに玉太郎たちの無事を書き記しました。これを玉太郎の脱いだ靴下に入れると、玉太郎はそれをポチの首に結びつけました。

「ポチ、行ってくれ!」

ポチはワンと吠えました。玉太郎の気持ちが分かったようです。

「行け!」

玉太郎が命令しました。ポチは悲しそうな目で玉太郎を見ましたが、玉太郎の言いたいことを理解したようで、洞穴の中から出ていきました。

「さあ、僕らは一眠りしよう」

ケンの言葉に、一同は洞穴の周りを囲んでいる岩の床に足を伸ばすことにしました。疲れが、彼らをぐっすりと眠らせてくれました。

どれくらい眠ったでしょうか。ワンワンとけたたましく吠えるポチの声に、玉太郎がまず目を覚ましました。

「ポチ、どうしたんだ?」

ポチは尾を振っています。無事に任務を果たしたという誇らしげな顔です。玉太郎はポチの首から靴下をほどきました。やっ、中には別の手紙が入っています。

『一同の無事を知り、喜びでいっぱいです。こちらではツルガ博士とネリ親子、そして私で、諸君の帰りを待っています。セキストン伯爵からの連絡はありません。モレロと二人の水夫、フランソアとラルサンは行方不明です。ともかく、諸君の帰りを我々は待っています。上陸地点から動かないことを約束します。

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